くすりの話 149 TPP参加で、どうなる日本の薬
Q:TPPには薬も関係するって本当?
A:本当です。TPP(環太平洋連携協定)は、ずばり“アメリカの基準に日本の基準を合わせる”協定です。アメリカは米や牛肉の輸入自由化など、これまでも貿易自由化を押しつけてきました。このアメリカの主導で、貿易自由化をさらに推し進めるのがTPPです。
しかも、これまでの自由化と決定的に異なるのは、あらゆる商品が対象となる上、貿易の「障壁」をすべて取り払う点です。日本で売られている商品でも「価 格が高い」「安全基準が厳しい」とアメリカが判断すれば、改めるように迫られます。例外はなく、医薬品も当然対象です。
Q:医薬品はどう変わるの?
A:薬価(薬の値段)が上がることが心配されます。昨年12月、全国保険医団体連合会が薬価の国際比較を実施しました。日本でよく使用されている医薬品の薬価は、ヨーロッパと比べると日本の方が高いものの、逆にアメリカと比べると日本の方が安いという結果でした。
このことを考えると、同じ薬でも日本の方が安く売っていることに対して、アメリカからクレームが出ることは必至です。とくに公的医療保険の適用となって いる医薬品は、保険上の価格が定められています。そうなると、薬価を上げざるを得なくなり、今以上に患者さんの窓口負担が増えてしまいます。
また、ジェネリック医薬品といって特許期間の過ぎた薬を他の会社が製造・販売しているものがあります。ジェネリック医薬品は開発費用がかからないため、 安く販売できるという利点がありますが、これをアメリカが認めない可能性があるのです。こうなれば薬価はますます高騰し、まさに「お金の切れ目が薬(命) の切れ目」になってしまいます。
Q:新薬の承認審査期間が早くなると聞いたけど
A:新薬が早く医療の現場で使用できるようになることは、患者さんにとって喜ばしいことです。しかし、新薬の有効性や安全性をきちんと評価できる体制と条件がなければ、新たな「薬害」が生じることになりかねません。
現在、日本の審査期間は海外と比べると長く、その点は改善されるべきだと思います。しかし、体制が不十分なまま安全性を無視し、承認期間を早めることは 無謀ではないでしょうか。日本の薬の審査体制は648人。これに対してアメリカは4911人(2009年度)と約7.5倍もの差があります。
医薬品は人の命にかかわります。他の商品とは異なり、国独自の基準や規制が必要です。野田政権は何としてでもTPPへの参加を強行するつもりのようですが、とんでもないことです。私たちの運動で、かならず日本のTPP参加を阻止しましょう。
いつでも元気 2012.10 No.252
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