元気ネットワーク 男子厨房に入るべし! 京都・乙訓医療生協
共同組織の活動は地域の健康づくり・仲間づくりの要となっています。
乙訓医療生協(京都府向日市)で一四年間続く「男の料理サークル」を取材しました。 (文・武田力記者)
声をかけあいながら下ごしらえ |
七月一四日午後五時、五〇代から七〇代の一八人の男性が医誠会診療所の二階に集いました。おそろいのエプロンに身を包み、調理師の甲元友子さんの説明に耳を傾けます。
この日のメイン食材は旬のなす。なすの田舎煮、ラタトゥイユ(野菜煮込み)のほか、にらの豚肉巻き焼き、ジャーマンポテトサラダ、卵豆腐という豪華なメニューです。
何を担当するか各自が立候補して決め、すんなりと五グループにわかれました。「手をケガしてしまって…」という男性には、リーダー役を務める勝本弘志さ んが「ほなあんたは“味見”担当で」とユーモアたっぷり。配布されたレシピを見ながら下ごしらえが始まると、厨房はたちまちにぎやかに活気づきました。
釣った魚をさばきたい
“意外”に豪華なメニュー |
「サークル」は毎月一回、金曜日または土曜日の夕方に開かれます。会員は三四人で、毎回二〇人ほどが集います。
参加したきっかけはさまざまです。「妻に先立たれて、料理をしなくてはならなくなった」方から、「釣りが趣味で、自分で釣ってきた魚ぐらい自分でさばき たい」という方まで。なかには「いらち(せっかち)やから、妻が作るのを待っていられなくて。酒のつまみぐらい自分で作りたい」という方もいます。
一方、「自宅でも料理をしますか?」との問いに「する」と答えた方は四割ほど。「しない」と答えた六割の方々は、家事を取り仕切る台所の“先輩”に対して、どうやら遠慮があるようです。
「それでも継続して参加していたら、料理をしなければならなくなったときの素地になるでしょう」と勝本さん。「包丁を持つ手が危なっかしかった人も、だんだん慣れてきて確実にレベルアップしています」と話します。
アクシデントも笑いに
にこやかな笑顔が印象的な講師役の甲元さんは、「サークル」設立時からのおつきあい。「最初は四~五人だったのですが、いまでは会場が狭いくらい集まってくださって。うれしい悲鳴です」と語ります。
「メニューを考える際に工夫することは?」との問いに、「以前作ったことがあるものはなるべく避けます。旬の食材や地元産の食材を使ってダイナミック に。あとはお酒のつまみになるものかな」と、表情をゆるませました。
調理開始から二時間後、盛り付けられた料理がテーブルに並び始めたところでアクシデントが。肉巻きのつけだれを味見した先生が「辛いっ! これレシピ通り作りました?」と声をかけます。
それに対して、「豆板醤“適量”って書いてましたよ」との返答が。“適量”は調理する人によって違うので要注意です。先生が破顔一笑するのを見て、周囲がまた明るい笑いに包まれました。
「実はお酒と雑談が楽しみ」
一番うれしい瞬間!? |
何はともあれ無事に料理が完成し、みんなで「かんぱ~い!」。食べながらビールを飲み、家庭で料理を作ってみたことや、次回以降どんなメニューを作りたいかを話しあいます。
「『トマトはどんな料理でも邪魔しない』と聞いたので、この前カレーに入れてみたらおいしかったよ」「八月は特別に飲み会をメインに企画してみようか」 などにぎやか。「実はお酒と雑談を楽しみに来ている」方が多いというのもうなずけます。
取材に同行した豆塚カメラマンも料理好き。いっしょに料理を味わいながら、釣りと料理の話題に花が咲きました。
「このあいだ鯛飯を炊いたんですが、身だけほぐしても旨味が出なくて。骨を入れたほうが断然おいしいんですね」と豆塚カメラマンが言うと、「それがコツやな」とすぐに合いの手が。
愉快な仲間たちとの笑いの絶えない時間。参加者をひきつける一番の魅力がわかった気がしました。 写真・豆塚 猛
いつでも元気 2012.9 No.251