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いつでも元気

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緊急連載 消費税増税に「待った!」 民・自・公が衆議院で強行採決

genki250_04_01 消費税増税が国民の大多数の反対を押し切って、強行されようとしています。六月二六日、消費税増税法案(現行の五%を一四年四月に八%、一五年一〇月に一〇%)が民主・自民・公明などの賛成多数で衆議院を通過。
 増税が直撃する現場からは、早くも悲鳴と怨嗟の声があがっています。現場の声に耳を傾け、あらためて消費税増税に「待った!」をかける緊急連載。第一回 目は、医療の現場からです。

 「増税されたら、とてもじゃないが経営的に耐えきれない」と怒りをあらわにするのは、医療法人財団健和会(東京)の千坂和彦専務理事。
 患者さんが支払う医療費の窓口負担(一~三割)には消費税はかかりませんが、医療機関が購入する医薬品や医療材料、医療機器などには消費税がかかりま す。医療保険から支出される医療費の残り九~七割にも消費税分は上乗せされないため、患者さんにも医療保険にも転嫁できない消費税分の負担が、すべて医療 機関にかぶさってきます(損税)。ただでさえ苦しい医療機関の経営にとって、消費税増税はまさに“死活問題”です。
 健和会の昨年度の消費税負担は二億二〇〇〇万円あまり。病院の建設などにかかった過去の繰り延べ分を含めると、二億八〇〇〇万円にものぼります。全体で みると、「消費税を負担した分が、実質的な赤字になっている」と千坂さん。「この負担が倍になればとてもやっていけません」と噴ります。
 損税について、厚労省は「診療報酬(医療保険で定められた医療行為の対価)で手当てしている」と説明しています。確かに消費税三%導入時(八九年)に 〇・七六%、五%への増税時(九七年)に〇・七七%が診療報酬に上乗せされました。しかし、「その後マイナス改定が連続して約八%も診療報酬は下がってい ます。上乗せされた項目自体なくなっているものもある。上乗せ分なんてすでに消えている」と千坂さんは指摘します。

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増税で利益台無し

 消費税増税が医療機関の経営にあたえる深刻な打撃は、全日本民医連の二〇一〇年度経営実態調査でも明らかです。民医連に加盟する一五九法人の消費税負担 額は約六七億円。消費税が二倍になって損税が二倍(一三四億円)になると、同調査時の経常利益一二九億円がすべて税負担に消えてしまう計算です。
 全国自治体病院協議会の調査でも、一病院あたりの消費税負担は平均一・二億円(二〇一〇年度)。医療機関全体の消費税負担が二三三〇億円にのぼるという日本医師会の試算もあります。
 現在でも民間病院の二八%、診療所の三一%が赤字です。消費税増税は医療機関の経営をさらに苦しめることは確実で、全国各地で病院の倒産が相次ぐ事態も懸念されています。
 国会審議でこの問題を指摘された政府は、「検証の場を設置し、診療報酬の中で対応を考える」(小宮山洋子厚労相)と答えただけで、具体的な解決策は何も 示しませんでした。

医療機関の経営も国民の健康も破壊

せめて還付すべき

 「赤字を圧縮するため、経営努力で何とかする」と言っても限界があります。人件費の節減は安全・安心の切り下げに直結してしまう上、病院などでは医師数や看護師数など人員配置の基準が定められているからです。
 一方で、製品を外国で売り上げる企業には、「輸出先で消費税を転嫁できないから」という理由で、仕入れにかかった消費税が還付されています。輸出戻し税 と呼ばれるこの制度で還付されている額は、輸出大企業を中心に約二兆円()。これらの企業との公平性の観点からも、医療機関に負担させる損税には道理がありません。
 全日本民医連は、損税について「消費税法の対象外(不課税)にして、医療機関が負担した消費税分を税務署から還付させるべき」と主張しています。この制 度なら医療機関だけでなく、患者さんも負担をかぶらずにすみます。

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力をあわせて増税阻止!

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増税に抗議する人たち(6月23日、都内で。写真・前沢淑子)

 「今でも『お金がないから』と受診をがまんしたり、薬の量や回数を減らしたりしている患者さん が多くいらっしゃいます。国民生活をさらに困窮に陥れて医療から遠ざけるという点からも、消費税増税は健康といのちの破壊に直結する」と千坂さんは危機感 を募らせます。「国民健康保険料を滞納し、保険証を取り上げられてしまう世帯もますます増えるでしょう。今まで以上に医療にかかりにくくなり、手遅れにな る患者さんが増えることも心配です。共同組織はもちろん、地域の幅広い方々といっしょに反対の声をあげて、なんとしても消費税増税の実施を阻止しましょ う」と力を込めました。
文・武田力記者

 

いつでも元気 2012.8 No.250