くすりの話 144 薬とアルコール
Q:薬をアルコールで飲んでもいいですか
A:薬は、水で服用することを前提としてつくられています。基本的には水やお湯で飲んでください。アルコールやコーヒー、牛乳、グレープフルーツジュースなどで薬を飲むと、薬の効果に影響をあたえる場合があるからです。
薬やアルコールに限らず、口から摂取した物は基本的に胃で溶け、腸で血液に吸収されます。薬も、その多くが腸で血液の中に入り、肝臓に運ばれて分解されます。そして、ふたたび血流に乗って体内へ運ばれ、薬の効果を発揮します。
しかし、アルコールと薬をいっしょに飲むと、肝臓はアルコールの分解を優先的におこなうため、薬の分解に時間がかかります。そのため、薬の効果が強くなったり、弱くなったりして薬の副作用が出ることがあります。
また、薬を飲むときに水の量が少なすぎると、薬が食道にくっついて残ってしまうことがあります。コップ1杯程度の水で飲むといいでしょう。
Q:どんな副作用がありますか
A:アルコールと薬は相性が悪い場合があります。例えば、降圧剤(血圧を下げる薬)を服用している場合、アルコールにも血管を広げる作用があるため、血圧が下がりすぎてしまい、めまいや立ちくらみなどの症状が出ることがあります。
糖尿病の薬を服用している場合は、アルコールの作用と薬の血糖降下作用の相乗効果によって、低血糖状態(強い空腹、冷や汗、ふらつき、意識消失)になることがあります。
また、そもそもアルコールはカロリーが高いので、糖尿病の方がアルコールを摂取する際には注意が必要です。
睡眠導入剤や精神安定剤を服用している場合は、アルコールの脳の働きを抑制する作用によって、薬の効果が強く出てしまうので、強い眠気や転倒などの原因になります。
そのほかにも、ワーファリンなどの抗凝固剤(血液が固まって血管がつまるのを防ぐ)を服用している場合は、アルコールの影響で薬の分解が遅れてしまい、 薬の効果が強く出てしまいます。そのため、ケガなどをして出血した際に血が止まらなくなる原因になります。
Q:お酒を飲まないと眠れません
A:たしかにアルコールには睡眠導入効果があります。
しかし、アルコールには利尿作用や脳の働きをおさえる効果があり、意識の低下した状態をつくりだすものなので、質の良い睡眠が得られるわけではありません。
寝つきの悪い方は、アルコールに頼るのではなく、部屋を暗くするなどして質の良い睡眠が得られるように工夫したり、医師に相談したりすることをおすすめします。
いつでも元気 2012.5 No.247