福島の子どもを守れ 医師らが除染ボランティア
福島市は昨年一〇月よりボランティアを募り、市内全域の除染(放射性物質による汚染を減らす)活動をおこなっています。一二月一一日、全日本民医連からも緊急被曝事故対策本部のメンバーら七人がこの除染活動に参加しました。
参加した医師の一人、小西恭司・同本部長(全日本民医連副会長)に聞きました。(編集部)
積算線量計を渡される
土を運ぶ作業をする小西医師(左)ら |
午前九時三〇分に福島市役所東部支所大波出張所の集会所に到着。集会所に入るときに、タオル一本、プラスティック手袋二組、軍手二組、マスク一個を受け取りました。参加登録をすませ、「福島市社会福祉協議会」と書かれた黄色いゼッケンと積算線量計を身につけました。
この日はボランティアとして約六〇人が参加。市長や地区会長からのあいさつのあと、福島市危機管理室の職員から注意事項などの説明がありました。
「集会所周辺は一・五マイクロシーベルト/時と、市内で最も高い値となっています。除染の目標は、各除染場所の空間線量を一マイクロシーベルト/時以下 にすることです。作業中はマスクを外さないこと、休憩時にうがいをすること、積算線量が一ミリシーベルトを超えたら作業を中止してください」
地道な除染作業
急な斜面での地道な草むしり |
さっそく、二十数人で除染対象のお宅に移動して作業を開始。家屋の周辺に、汚染していない土を五センチメートル程の高さでまいて固める作業です。スコップで土を手押し車に入れ、それを運ぶ作業を繰り返しました。
一時間半後、作業前に〇・九一マイクロシーベルト/時だった空間線量が、〇・五八マイクロシーベルト/時に低下しました。
午後は、集会所周辺の土手斜面の草むしりと、枯れ葉の除去作業をしました。使ったスコップや熊手など道具の洗浄をして終了です。
各人の積算線量計を確認すると、一人の医師が四マイクロシーベルトと最も高く、ほかの六人は三マイクロシーベルトとなっていました。
本腰を入れたとりくみが必要
実際に作業を体験してみて、枯れ葉や砂利を除去すれば、程度はさまざまですが、確かに線量が下がるということを確認できました。
一方、のべ七〇〇人ほどが参加したという大波地区の除染活動ですが、地図で見るとほんの一点を除染したに過ぎないということも明らかです。あくまで極端 に線量が高い場所の緊急除染活動なのだという思いを強くしました。
日本の総力をあげて、国際的な知恵と力も借りながら“面としての除染”を大規模に継続的におこなうことが必要です。政府の本腰を入れたとりくみが求められます。
本格的な除染の開始と効果の発現にはある程度の時間がかかるので、今回のようなホットスポット(点在する高濃度汚染地域)の緊急除染も引き続き必要です。
低線量被ばくは未知の領域
除去した枯れ葉の放射線量を測る |
政府は「年間二〇ミリシーベルト被ばくすると仮定した場合の健康リスク」は、「避難によるスト レス、屋外活動を避けることによる運動不足等」によるリスクと同等であると言っています(「低線量被ばくのリスク管理に関するワーキンググループ報告 書」)。この考えによれば、福島市や郡山市はもとより、警戒区域や計画的避難区域でさえたいした健康被害はないとされかねません。
広島・長崎の被ばく者の最新のデータ解析では、一〇ミリシーベルトの被ばくでもがん死のリスクが高まることが指摘されています。そもそも低線量被ばくや 内部被ばくの危険については、専門家にもまだまだわからないことが多いのです。
子どもと妊婦を守るために
最大の焦点は、子どもと妊婦の健康を守ることです。本格的な除染には一定の時間がかかることを考え、福島市や郡山市などの高汚染地域に住む子どもたちへの安全な食品の確保と、組織的な避難のとりくみが必要です。
学校給食の全品チェック、希望する家庭の食品の無料チェック、子どもの長期休暇を利用してのリフレッシュ避難や週末避難、親の避難休暇の保障も含め、現 在の民医連のとりくみを強化する方針が必要です。さらに、子どもが安心して暮らせるように、せめて医療費の窓口負担免除を継続し、思いきり遊べる体育館や プールなどの屋内施設を整備・拡充させるよう要求していくことも大切です。
写真・稲原資治(全日本民医連)
いつでも元気 2012.3 No.245
- 記事関連ワード
- 福祉