くすりの話 139 漢方薬の上手な使い方
Q:漢方薬はどのように使い分けるのですか?
A:漢方薬の最大の特徴は、自分自身の体が本来のバランスを取 り戻すお手伝いをしてくれることだと思います。「足りないものは補い、過剰にあるものは取り除く」「冷えていれば温め、のぼせていれば冷ます」本来の体の あるべき状態に戻すことを目的に、その時の自分の状態にあった漢方薬を選ぶことが大切です。
「風邪をひいたらいつでも葛根湯」「肥満があるから誰でも防風通聖散(ぼうふうつうしょうさん)」という、症状のみで判断して服用するのはよくありません。医師、薬剤師に相談して漢方薬を服用するようにしましょう。
Q:漢方薬はすぐには効かないのですか?
A:「長く飲まないと効果がない」というイメージの強い漢方薬ですが、すぐに効果を発揮するものもあります。
急性の病気に使う麻黄湯(まおうとう)(インフルエンザに使用)・葛根湯(風邪のひきはじめに使用)・芍薬甘草湯(しゃくやくかんぞうとう)(こむらが えりに使用)などがその例です。これらで重要なのは、飲むタイミングを遅らせないことです。時期が過ぎて飲み続けても、十分な効果を発揮しません。
反対に、「疲れやすい」「冷え性」などの体質の改善や、長引く痛みなどに使用する「補中益気湯(ほちゅうえっきとう)」「桂枝加朮附湯(けいしかじゅっ ぶとう)」などは効果が出るまで時間がかかり、飲み続ける必要があります。目安としては、早くて2週間、長くて4週間ほど続けると効果を感じられる場合が 多いようです。
Q:漢方薬に副作用はないのですか?
A:ゼロではありません。どのような生薬(漢方薬の原料)が含まれる漢方薬なのかを知ることで、注意すべき副作用を知ることができます。有名なところでは、多 くの漢方薬に含まれている甘草です。摂りすぎた場合、体内のカリウムが低くなり、血圧上昇やむくみなどの副作用が出ます。甘草を多く飲むほど発生する可能 性が高くなります。漢方薬を数種類飲む場合には、特に注意が必要です。
その他、麻黄を含む漢方で不眠、地黄(じおう)を含む漢方で胃障害、附子(ぶし)や人参を含む漢方で血圧上昇などが起こる場合があります。
Q:副作用を防ぐ方法はありますか?
A:副作用が起こるのは、多くの場合、体質に合っていない漢方薬を選んでいるためです。人参は虚弱体質の方に使われる生薬ですが、これを元気な人が飲むと血圧上昇が起こりやすくなります。
小紫胡湯(しょうさいことう)で間質性肺炎が起こったという報告もありますが、肝炎の治療のため、体質を無視して一律に乱用したことも、副作用の原因のひとつと考えられています。
また、冷えや生理痛などの改善のため、女性に使われることも多い漢方薬ですが、妊娠中に飲んではいけない生薬もあります。市販薬を購入する場合、必ず薬剤師に相談してください。
漢方薬を上手に使うためには、自分にぴったり合ったものを選ぶことが一番大切です。まずは専門医を受診することをおすすめします。
いつでも元気 2011.10 No.240