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いつでも元気

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民医連綱領 実践のゲンバを行く!!(9) 原発事故被災地に医療支援 「心のケアチーム」に精神科医らが駆けつける 福島・南相馬市へ全日本民医連

 いのちと健康、人権を守ろうと民医連ががんばるおおもとには、綱領に掲げられた理念があります。綱領の実践を紹介する連載。九回目は、原発事故に揺れる福島県に、全国から駆けつけた民医連精神科チームの活動です。

子どものいる世帯の不安

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全国から折り鶴が寄せられた南相馬市役所。市民の声に対応する職員も被災者

 原発事故がいまだに収束せず、特に小さな子どもがいる世帯の不安が大きくなっています。福島第 一原発北部の南相馬市で、民医連の精神科医や精神保健福祉士(PSW)、看護師らが、五月三〇日から七月一日まで「福島県立医大・心のケアチーム」の一員 として、住民の不安に寄り添いながら精神科医療の一翼を担いました。
 同市は原発から半径二〇キロ圏内の警戒区域をはじめ、市域の八割が避難指示圏に指定されました。市内や近隣の精神病院は事故の影響でいったんすべて閉 鎖。六月下旬に一カ所が再開しましたが、外来のみで入院はできません。精神科診療所も再開は二カ所のみにとどまります。入院患者はすべて転院させたもの の、問題は外来患者です。三月一一日以降、受診が中断していた外来患者は数百人に上るとみられ、薬がなくなり病状が悪化した人も。市の保健師が患者の状態 把握に避難所や自宅を訪問してきましたが、人手が足りません。
 被ばくの不安のせいか、他の地域に比べると県外支援者は少数です。これまでに、長崎チーム(長崎大、長崎県医師会、長崎市医師会)や日本精神保健福祉士 協会が、いち早く継続的な支援にとりくみました。民医連の精神科も継続的で有効な支援をおこなおうと、福島県立医大の要請に応え、全国の力を結集しまし た。
 五月三〇日から第一週の支援を担当した中島昭さん(東京・大泉生協病院、精神科医)は「南相馬市とその周辺の救急医療が危機に瀕しているという、市民病 院の医師の真摯な呼びかけが気になっていました。原発問題で困難な状況に直面している地域の実情を知らなければと思い、支援を決めました」と話します。
 民医連は精神科医一人、PSWらコメディカル二人の三人一組で、一週間交替で支援。精神科医は東京、山口、京都、青森、鳥取から集まりました。市の保健 師や看護師とペアを組み、地域に居住している人の家を回り、健康状態を確認しながら相談窓口の連絡先を伝えました。
 「保健師をはじめ、市職員が今できること、すべきことにきめ細かくとりくんでいました。家族も支え合って困難な状況を乗り越えようとしており、不安とさ まざまな思いの中、私たちに笑顔で応対してくれる姿が印象的でした」と中島医師。

仮設住宅で孤立する高齢者

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市内の畑にはいまだに津波で流された漁船が放置されている。奥に見える建物は南相馬市立真野小学校
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入所者30名が亡くなった介護老人保健施設ヨッシーランド。土砂がかき出された建物内には献花台が置かれている

 東京民医連の三郷市地域包括支援センター早稲田から支援に入った星野巳佐子センター長(看護 師)は、戸別訪問や仮設住宅での健康調査を担当。「家庭菜園が趣味だったうつ病の女性が、原発事故の影響で作れなくなり、閉じこもり気味になっていまし た。仮設住宅では高齢者が孤立化する傾向が強く、ケアが必要です」と指摘します。
 星野さんの実家は、福島第一原発から南にわずか一〇キロの富岡町にあります。両親はいわき市に避難しており、「自分の目が黒いうちに、帰宅できるかわからない」と話しているそうです。
 山口県から来た宇部協立病院の堂本祐三子さん(PSW)は当初、原発近くに行くことに抵抗がありました。「でも、『そこで暮らしている人がいるのに失礼ではないか』と思い直しました」。
 戸別訪問で町中をまわった堂本さん。地元の小中学生は被ばくを避け、原発から三〇キロ圏外にバスで集団登下校しています。「子どもの姿が消えた町の風景は異様でした」と振り返ります。

民医連の支援に感謝

 福島県立医大・心のケアチームは福島県の浜通り(太平洋側の地域)の精神科医療を担っています。浜通りの北部はもともと精神科医療の体制や基盤が乏しいうえ、原発事故の影響で多くの医療機関が閉鎖を余儀なくされました。
 チームを組織した同大の丹羽真一教授は「震災直後は服薬の中断や慣れない避難所暮らしで、病状が悪化する患者が多くいました。震災から時間が経つにつ れ、今度はうつやPTSDの症状が出てきています。中でも幼児を抱えた母親に被ばくの不安が強く、ケアが不可欠です」と指摘します。
 福島県は地震と津波に加え、原発事故と風評被害のただ中にあります。住民の不眠やアルコール依存といったケースも起きており、精神科医療のニーズが高く なっています。チームは民医連のほか、全国の大学病院、精神病院、自治体の支援を受け、公立相馬総合病院に臨時の精神科外来を開設しました。丹羽教授は 「私たちの呼びかけに多くの医療機関が応えてくれました。民医連の支援に感謝します」と話します。
 南相馬市は市職員も被災者で、カウンセリングを受ける人もいます。心のケアチームが拠点にしていた原町保健センターの保健師の中には、警戒区域に自宅が あり、子どもや両親と離れて暮らす人や、避難所から通勤する人もいます。精神的な疲労が蓄積していますが、大変な中でも、自治体職員として住民の健康管理 に力を発揮しています。
 同市健康づくり課の中里祐一課長は「原発事故の影響で、なかなか支援の人たちが市に入りづらい。民医連の支援は非常にありがたい」と言います。精神病院 の閉鎖で、いざという時の入院機能がないことが大きな不安です。「病院を再開するためにも、早く原発事故を収束してほしい」と語気を強めました。
文・新井健治 写真・五味明憲

いつでも元気 2011.8 No.238