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いつでも元気

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元気スペシャル 日本に原発は要らない 日本環境学会会長・和田武さんに聞く

脱原発・電力確保は両立する

 福島第一原発事故による電力不足で、政府は東京電力管内の利用者にこの夏、一五%の節電を要請。その他の電力会社でも、定期点検を終えた原発の運転再開にストップがかかり、関西電力もすべての利用者に一五%の節電を求めています。
 原発がなければ日本の電力はまかなえないのか。この夏、節電で乗り切ることは可能なのか――日本環境学会会長の和田武さんに話を聞きました。

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和田武さん
日本環境学会会長。元立命館大学教授、工学博士。
専門は環境保全論、資源エネルギー論。主な著書に『脱原発、再生可能エネルギー中心の社会へ』『環境と平和』(以上、あけび書房)、『飛躍するドイツの再生可能エネルギー』(世界思想社)など。

写真= 豆塚猛

 一五%の節電は十分に可能です。まず、こまめに電気を消す。使っていない部屋の照明をつけない。見ていないテレビを消す。家電は待機電源が消費されますから、使わないときは、コンセントからコードを抜く。できる節電はたくさんあります。
 照明では白熱灯を蛍光灯、蛍光灯をLED(ダイオードの一種)照明に換えるだけでも違います。白熱灯からLEDに換えれば、明るさは同じまま消費電力は一〇分の一から八分の一に減らせます。
 炊飯器も、ずっと保温し続けるよりもご飯をとっておき、食べるときに電子レンジにかける方が熱の効率がいいのです。ポットも、昔ながらの電気を使わずに保温する製品が最近売れているようですね。
 夏の室温上昇を抑えるには、窓の外にゴーヤで緑のカーテンをつくったり、よしずを立てる方法も有効です。エアコンを使用せずに扇風機を活用するのもエネルギー消費を減らします。
 エネルギーの効率改善による節電も重要です。私たち消費者ができるものとしては、たとえば建築物の断熱性を高めることも効果があります。窓に遮熱・断熱 フィルムを貼ったり、二重窓にすれば断熱性が高まって冷暖房の効率がよくなり、エアコンの消費電力も抑えられます。
 製品や物を大切に使用するのも、それを製造するエネルギー消費を減らします。買い物袋を持参すれば、ポリ袋とエネルギーの消費を減らします。

「在宅勤務」なども節電効果

 この他にも職場や企業、社会ぐるみでおこなえば、すぐにできる節電があります。たとえば勤務形態を省エネ型にすることです。夏期休暇の延長や休日の分散化などの導入が効果的です。
 IT企業などを中心にいま、家で仕事をする「在宅勤務」も急速に広がっています。通退勤、事務所の空調や照明、エレベーターなどに使うエネルギー消費が抑えられるため、節電につながります。
 コンビニエンスストアも二四時間営業している必要はないし、パチンコ店や歓楽街の華美な照明も減らすべきでしょう。自動販売機もこんなに林立している国は日本ぐらいです。

エネルギー生産の効率改善も

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ドイツは発電量の約17%を再生可能エネルギーでまかなっている。
写真はザクゼン州のアウトバーンから見えた風力発電機
(2011年6月、五味明憲)

 長期的には、エネルギーを生産する「供給する側」の効率改善も必要です。
 非常に有効なのが火力発電所におけるエネルギー効率の改善です。多くの火力発電所では石油・石炭などの燃料を燃やして水を蒸気に変え、その蒸気でタービ ンをまわして発電します。蒸気はその後、熱水となりますが、この熱水を捨てているところが大半です。燃料を燃やして出た熱を一〇〇%とすると、電気となる 熱エネルギーは最大でも四五%程度にすぎません。
 デンマークでは通常の火力発電はせず、発電と同時に発生する熱も活用するコジェネレーション(熱電併給)で熱水を家庭に配管で供給し、暖房に利用してい ます(地域暖房)。全世帯の六〇%の暖房をこの方法でカバーしています。地域暖房に使った水を循環させることで、エネルギーの効率も八〇%程度に改善しま す。国全体の暖房面積は増えていますが、燃料消費は大幅に減らしています。

原発はCO2削減に必要ない

 そして避けて通れないのが、石油・石炭・天然ガス・ウランなどの「再生不能エネルギー」から、太陽光、風力、地熱、バイオマス(生物由来の燃料など)、 水力などの「再生可能エネルギー」への転換です。二酸化炭素などの温室効果ガスの排出量を削減し、地球温暖化を止めるためにも欠かせません。
 日本は温室効果ガス削減を口実に原発を増やしましたが、石炭火力発電も増やした結果、温室効果ガスを増やしています(表1)。 原発を持たないデンマーク、原発を減らしたドイツは再生可能エネルギーを増やし、石炭利用を減らして、温室効果ガスを減らしています。必要なのは原発では なく、再生可能エネルギーの普及を促進する政策です。アイスランドは水力・地熱発電で電力をすべてまかなっています。
 再生可能エネルギー普及の起爆剤となっているのが「電力買取補償制度」で、この制度を導入する国が増えています。
 ドイツでは再生可能エネルギーの発電設備を導入する際、設備投資の八~九割も銀行から借りることができ、その後二〇年間、発電した電力を電力会社が全部 買い取ることが義務づけられています。最初の一〇年間で設備投資分を売電収入で回収でき、その後一〇年間は売電収入だけが入るため、お金持ちではなくても 再生可能エネルギーを導入できます。
 日本政府も今年、ようやく太陽光、風力、水力、地熱、バイオマスによる発電を対象とした再生可能エネルギーを買い取る制度を導入する方針を決めました。 しかし住宅用太陽光発電の買い取り期間は一〇年で、余剰電力だけが対象とされています。誰もが取り組めるよう、発電量のすべてを買い取り、買い取り期間も 二〇年とすべきです。

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豊富な再生可能エネルギー

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ローデネ村の草原太陽光発電パネル
(写真= 和田さん提供)

 「再生可能エネルギーで日本のエネルギーすべてをまかなうのは難しいのでは」と心配する方も多 いでしょう。しかし全土の六八%が森林で海に囲まれ、水も豊かで太陽光も降り注ぐ日本には豊富な再生可能エネルギーがあります。太陽光パネルも建物の屋根 だけでなく、平原、空き地、高速道路の壁面などを活用すればいい。風力発電も陸上だけでなく、欧米でおこなわれているように、海上にも設置する方法もあり ます。
 地熱も、地面を掘ればどこでも一定の温度が得られます。デンマークは火山も温泉もありませんが、一部の地域で地下二・五~三キロまで掘り、そこから七〇度の熱を得て地域暖房に使っています。
 日本の地熱エネルギー資源は世界第三位、二三〇〇万キロワット(原発約二〇基分)の発電が可能と言われています。しかし日本の地熱発電の設備容量は五 三・五万キロワットで世界八位(〇九年)。再生可能エネルギーは「ない」のではなく「活用されていない」だけです。
 再生可能エネルギーは「少しずつ」「どこにでも」あり、一カ所の巨大施設より、小さな施設を無数につくってエネルギーを生産する方が理にかなっており、 「住民所有」に適しています。デンマークは風力発電施設の八〇%が住民所有で、全発電量の二〇%が風力発電です。
 日本でも太陽光発電施設の主な担い手は住民です。一九九四年、宮崎県で日本初の市民共同太陽光発電所が誕生しましたが、二〇〇七年九月時点で、共同太陽 光発電所は全国で一六五基になりました。再生可能エネルギーの市民共同発電所は全体で一八五基、三万人が参加し、総額二〇億円。設置理由は九八%が地球温 暖化防止のためでした。

エネルギーを住民の手に

 再生可能エネルギーの普及は地域経済を活性化させます。ドイツ北端のローデネ村は住民が共同で 会社をつくり、二〇〇六年から二六〇一キロワットの草原太陽光発電所を建設しています。村の世帯数(約一五〇)を超える約八〇〇世帯分の電力を発電。太陽 光発電や太陽熱利用の機器を製造・輸出し、四三〇人の村で約七〇人の雇用を生んでいます。
 再生可能エネルギーは、山村や農漁村など、まさに東日本大震災の被災地となったところに豊富にあるのです。再生可能エネルギー普及は被災地、疲弊した農 漁村・山村の復興にも役立ちます。私の試算では再生可能エネルギーの関連産業発達で、発電分野だけでも二〇二〇年に六〇万人以上の雇用を実現できます。
 日本人もかつて水車、薪などの形で自分たちでエネルギーを得てきました。原発がクリーンエネルギーではないことが明らかになったいま、再生可能エネル ギーの普及を促進する政策の実現を求め、エネルギーを住民の手に取り戻しましょう。

いつでも元気 2011.8 No.238