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いつでも元気

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特集1 原発利益共同体を斬る いまこそ再生可能エネルギー普及を 衆議院議員・吉井英勝さんに聞く

 三月一一日の東日本大震災により発生した東京電力・福島第一原子力発電所発事故。東電は事故発生から二カ月経った五月半ば、ようやく運転中だった一~三号機すべてで燃料棒が溶け落ちていた(メルトダウン)事実を公表しました。
 なぜ国・東電は情報を隠すのか。早くから原発事故の危険性を指摘してきた衆議院議員・吉井英勝さんに聞きました。(編集部)

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吉井英勝さん
衆議院議員(日本共産党)。1942 年京都府生まれ。京都大学工学部原子工学科卒業。衆議院議員7期目。主著に『原発抜き・地域再生の温暖化対策へ』(新日本出版社)
写真=五味明憲

 ―国・東電は事故の情報を出すのがあまりにも遅い。なぜでしょうか。
 ひとつは、事故現場が放射能で汚染されていて、容易に近づけず、全容がつかめていないということがあります。しかしそれだけではなく、明らかに情報を隠 しています。いまだに各所に設けている地震計の数値すら公表されておらず、各原発と関連施設が地震でどれだけ損傷したかすら、ほとんど公表していません。
 この間、「ニューヨークタイムズ」(アメリカ)や「フィナンシャルタイムズ」(イギリス)、フランス国営放送など、海外メディアの取材を受けましたが、 決まって聞かれるのがこの点です。欧米では情報公開が当然ですから、日本政府や東電の「秘密主義」が不思議なのでしょう。
 秘密主義の背景には「原発利益共同体」の存在があります。電力会社はもちろん、原子炉メーカー、製鉄会社、ゼネコンなど、原発で利益を受ける人たちがい る。その利権に官僚や国会議員も関わっていますから、原発事故の情報を出そうとしないのです。

壮大な利権構造

 ―利権はどうからんでいるのですか。
 日本では東京なら東京電力、大阪なら関西電力のように、その地域の電力供給を特定の電力会社が独占(=地域独占)しています。私たちが他の電力会社から電力を買いたいと思っても買えません。
 さらに電力会社の利益を保障する「総括原価方式」というしくみがあります。たとえば原発なら、一基つくるのに三千億から五千億円。核燃料費、ランニング コスト、原発を廃炉にする費用などもかかる。これらはすべて発電コストとして電気料金に入れていいし、電力会社の利潤もふくめていいというしくみになって いるのです。原発にどんなに費用がかかっても電気料金を上げればいいのですから、電力会社のふところは痛みません。
 原発をつくる原子炉メーカーも決まっています。東京電力など東日本の原発は「沸騰水型」で、東芝と日立。西日本は「加圧水型」で、三菱重工。原発の建設 は巨大事業ですから原子炉メーカーにとってもおいしい仕事です。定期点検、部品交換なども請け負いますから、定期的に利益が保障されます。国が特定の企業 に発注すれば「談合」ですが、東電は民間企業ですから罰せられないわけです。

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国ぐるみで原発安全神話ふりまく

 それだけではありません。原発をつくる際は建物の建設や敷地整備などの工事があり、これを請け負うのは鹿島建設、大林組など大手ゼネコンです。原発はほとんど鉄とコンクリートのかたまりですから、製鉄会社やセメント会社ももうかる。
 工事期間は約一〇年の長期になりますから、資金調達を大銀行が引き受けます。電力会社は地域独占と総括原価方式で絶対につぶれませんから、不良債権は生まれないし、金利もきちんと入ります。これが「原発利益共同体」の実態です。
 その「原発利益共同体」から今度は政党・政治家に政治献金がまわります。民主党などは、電力総連という労使一体型の労働組合から金ももらえば選挙もやってもらっています。
 こうしたしくみに支えられた政党・政治家が官僚に原発推進の制度・しくみをつくらせて、予算も確保させるのです。
 官僚が言われた通りに働くのはなぜでしょう。東京電力への官僚の天下りが問題になりました。金をもらったら汚職になりますが、将来の天下りは禁じられていないからです。私はこれを「汚職の先物取引」と呼んでいます。
 こうした構造ができあがっていますから、「原発は危ない」という話がいちばん困ります。だからこれまでどんな事故・トラブルが起きても、「日本の原発は 世界一安全」「二重、三重に防護策を講じている」と国や電力会社は言い続けてきた。これが原発の「安全神話」です。いかにこれが危険だったか、今回の事故 ではっきりしたのではないでしょうか。
 こうしたことを国も電力会社も一体となってやってきた、と説明すると、海外メディアのみなさんは「東電や『原発利益共同体』はまるで旧ソ連ではないのか」と本当にびっくりされますよ。

原発交付金で畳1枚10万円の公民館

 さらに原発をつくるときは、国が立地自治体に交付金を出すのです。たとえば原発ができたら、一 〇年間は原発立地交付金が入り、 そのお金で豪華な「箱物」がつくられます。たとえば、東電・柏崎刈羽原発のある新潟県刈羽村は「ラピカ」という公民館を 建てました。総額六二億円(うち五七億円が原発交付金)の工事費をかけ、畳一枚に一〇万円もかけたんですよ。
 ―畳一枚に一〇万円もですか?
 しかし施設をつくったらつくったで、その施設の維持費がかかり、結局、自治体の一般会計を圧迫していきます。交付金を頼るしかなくなって「もう一基、原 発をつくってもらおうか」という話に追い込まれるのです。原発が一カ所に集中しているのはそのためです。自治体が「原発麻薬中毒患者」にさせられてしまう のです。
 もちろん、住民が悪いわけではありません。原発依存の地域経済と自治体財政に追い込んできた、政・官・財癒着の「原発利益共同体」が生み出した問題です。

計画停電は必要ない

 ―原発事故は計画停電という形でも関東一帯を不安に陥れました。夏も大幅な節電が呼びかけられていますが。
 「計画停電」は必要ありません。二〇〇二年、東京電力が記録を改ざんして原発のトラブルを隠していたことが発覚し、柏崎刈羽原発も含む一七基の原発がすべて止まったことがありました。翌年の夏にはまだ一二基の原発が停止していましたが、停電は実施されませんでした。
 そもそも国は、電力会社に地域独占を認めるかわりに、電気供給義務を課しています。計画停電は、この義務に違反していますから、とんでもないことです。
 ほかにも電力不足への対応策はあります。東電の休ませている発電所を動かす。大型の事務所ビルなどは、自前で電力を確保してもらえばいいのです。たとえ ば六本木ヒルズのような大きな事務所ビルは、自家発電装置を持っています。その発電装置を活用してもらう。さらに、需給調整契約といって、電力を多く使う 大企業とは、電気料金を割り引くかわりに、いざという時には電力の供給制限に応じる契約をあらかじめ結んでいますから、これを活用すればいいのです。
 それでも足りなければ、電気事業法二七条を発動して、大口需要者にだけ総量規制をかける方法があります。大口需要者というのは大型オフィスビルや工場などです。削減目標を出させて達成させる。そうすれば家庭や医療機関、教育・福祉施設などには問題は起きません。
 もちろん街中でもネオンサインの消灯や、その他の必要ない電力を使わないようにするなど、自主的な節電意識を高めることも力になるでしょう。

東電の「公的管理」で被害補償を

 ―福島原発の周辺住民や農漁業などへの補償も大きな課題です。賠償費を電気料金に上乗せする案も浮上しています。
 原発被害者への補償は東電に一〇〇%やらせるべきです。税金や電気料金を値上げするなど、もってのほかです。東電の五兆円ともいわれる内部留保を、まずはき出させなければ。
 しかし民間企業の東電に補償させるといっても、限界があります。そこでカギになるのが、経営陣はもちろん、これまで利益を得てきた株主や大銀行にも責任をとってもらった上で、東電を一時的に国有化することを含めて、公的に管理することです。
 公的管理となれば、国が直接、基礎データをつかみ、それに基づいて、原発事故収束のために必要な措置をとることができます。いまは東電任せで国はデータ すらつかんでいないから、事故の対策もすすまないのです。国が直接乗り出せるようにすれば、事故収束の面でも、補償の面でも道筋が見えてきます。

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原発をつくらないことが最大の安全

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4月26日、東京電力本社前(東京都千代田区)にかけつけた農民たち。農作物をつくるよろこびと生活の糧を返せと抗議(写真=多田重正記者)

 ―浜岡原発が一時的に止められましたが、原発は他にもあります。日本に原発を建てても安全な場所はあるのですか。
 実は原子力安全・保安院が、今年一月一日時点の防災科学技術研究所のデータをもとに、「国内で今後三〇年間にマグニチュード六以上の地震が発生する確 率」を原発ごとに試算したデータがあるのです。それによれば、福島第一原発が地震に見舞われる確率は〇・〇%でした。
 ところが地震が起き、原発事故につながった。地震列島と言われる日本に、安全なところなどないのです。
 そもそも、地震多発地帯に原発をつくらないことが大原則です。アメリカは原発大国ですが、地震多発帯の西側には原発はほとんどなく、中部から東部の活断層のないところにつくられています。地震地帯に原発があるのは日本だけです。

再生可能エネルギーの普及急げ

 ―やはり再生可能エネルギーへの転換が必要なのですね。
 日本は地震列島ですから、再生可能エネルギーを早期に普及させ、その普及に応じて原発からの撤退をすすめたり、社会全体の省資源・低エネルギー化をすすめなければいけないことが、今回の原発事故で明らかになったといえます。
 当面、原発の総点検をすぐにおこなうことが必要です。たとえばマグニチュード九を基準にして、地震・津波に耐えられる構造か、事故を防ぐシステムはどうなっているか、老朽した個所はないかなど点検すべきでしょう。
 そして今後のエネルギーをどうするかについては、「構造改革」で疲弊した地域経済の再生も視野に入れて考えなくてはいけません。再生可能エネルギーの普及をはかりながら、それが地域を活性化させ、雇用を生み、地域経済を豊かにするものへと結びつけることが大事です。
 たとえば風力発電の部品製造を地元の中小企業にまわすこと、太陽光発電でも、発電装置を民家の屋根に設置すれば、工事や定期点検・修理などのメンテナンスは地域の工務店・電気屋さんの仕事になりますね。定期点検をふくめて、まちの中小企業の仕事が生まれます。
 こうして「地産地消」の再生可能エネルギーを普及させることが、地球温暖化対策としても有効ではないでしょうか。

いつでも元気 2011.7 No.237