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いつでも元気

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特集2 健康診断でわかること 早期発見・早期治療のための大切な機会に

“要再検査”は必ず受診を

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菅原美鈴
東京・南葛勤医協 芝病院健診センター(保健師)

健診を受ける前に

 「健康診断だからといって、受ける前だけお酒をやめたり運動しても仕方がない。いつも通りの生 活をして受けるよ」そう言いながら健康診断前日も飲酒をしているのは、私の夫です…。確かに一理ありますが、だからと言って「せめて前日は飲まない方がい いでしょ」と突っ込みたくなります。
 健康診断(以下、健診)の血液検査で、中性脂肪などが非常に高い値が出て、ご本人に急いで結果を連絡すると「前夜は飲み会で、朝までお酒を飲んでいました」と、悪びれる様子もなくおっしゃる方がいるので、驚きます。
 また、頭痛や体調不良などの症状が半年以上も続いているのに、「健診の予定があるから、それまで待っていた」という方が少なからずいるのも、困ったことです。
 健診の場で調子が悪いことをおっしゃっても、健診は特定の病気を発見するためにおこなうものではないため、不調の原因がすぐわかるわけではありません。
 気になる症状がある方は、症状にあわせた特定の検査が必要になることがあるため、早めに受診して必要な検査や治療を受けるようにしましょう。

健診でわかることは

 健診を受けて結果をもらった時、あなたが一番気になる項目はどれですか?
 食べすぎ、飲みすぎ、運動不足。日ごろから気にしているけれど、なかなか改めることができない生活習慣の結果がどのように反映されているのか、再度確認をしてください。
 この記事では、健診後の相談や、保健指導でふれることの多い血液検査の項目と、日常生活の注意点についてお話ししたいと思います。
 個々の症状や健診結果により違いはありますが、参考になればと思います。

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■肝機能検査
(GOT・GPT・γGTP)

 これは、主に肝臓の働きを見る検査です。ふだんから飲酒量の多い方や、休肝日もなくこの数値が基準よりも高い方は、お酒を飲みすぎている可能性が高いということです。

自覚症状が出にくい肝臓

 保健指導の際、肝機能の数値が高い方に「どのくらいお酒を飲まれていますか?」と聞いて「普通だと思います」と平然と答える方に、実際飲んでいる量を詳細に聞くと、毎日ビールを1~2リットル以上飲んでいる、との答えがかえってきたことがあります。
 本人としては、それが毎日の飲酒量であり、二日酔いにもならないため、感覚としては「飲みすぎている」という認識はないようでした。「適量」とご自身が 二日酔いにならない「限度量」とは違うということを説明し、「自分は飲みすぎていて飲酒量を減らさなければならない」ということを認識していただきまし た。
 肝臓は「沈黙の臓器」とも呼ばれ、障害があってもなかなか症状は出にくい臓器です。
 肝臓の機能を調べる肝機能検査の値が正常の3~4倍であっても自覚症状がない人もいますので、まずは、自分の肝臓が基準値内で「頑張れている」のか、異 常値で「もう頑張れないよ」と信号を出しているのかをきちんと確認して、いたわってあげてください。

お酒の1日の適量は 

 お酒の1日の適量は、ビールなら中瓶1本、日本酒なら1合、焼酎なら1杯、ワインならグラス2杯程度です。そして、あくまでも飲むなら1種類だけです。
 複数の種類を飲む場合は、当然これより少なくなります。
 今までたくさん飲まれていた方が、いきなり適量まで減らすのは難しいかもしれませんが、まずはお酒の量を減らしてみる、飲まない日を決めるなど、できることからとりくんでください。

■脂質検査
(総コレステロール・中性脂肪・善玉コレステロール・悪玉コレステロール)

 「肉類が好き」「寝る前にご飯やおやつを食べる」「間食が多い」など、食生活の偏りや食べすぎの方は、この数値が高いかもしれません。
 健診時に採った血は試験管に入れます。その試験管を1~2時間放置しておくと、血清(上部の透明な部分)と血球(下部の赤い部分)に分離します。そのなかで時々、乳糜(にゅうび)血清を見かけることがあります。
 乳糜血清とは、本来透明である血清部分が白く混濁している状態のものです(写真)。白くなっているものは、脂が浮いているような状態で、これを調べると ほとんどの場合、中性脂肪800~2000mg/dlくらいの値が出ます。ちなみに写真の右側は中性脂肪1560mg/dlでした。

脂質異常も自覚症状なし

 芝病院健診センターでは、乳糜血清の検体があった場合、採血を担当した看護師から保健師に連絡をしてもらうようにしています。連絡があれば、その検体をカメラで撮影して、検査結果といっしょに写真をお見せして、ご本人に説明しています。
 中性脂肪の基準値は149mg/dlまでなのに、1000mg/dlや2000mg/dlなど基準値の数十倍の数値を長年放置している方も多いのが現状 です。「どうすればご本人に問題を認識して生活を改善していただくことができるだろうか」と悩んだ末、ご本人にドロドロになっている血を見ていただくこと を思いたって数年。実際に写真を見せるとかなり効果的で、今まで放置していた人もきちんと再検査や治療を受けてくれるようになりました。
 中性脂肪が高い方に実際の食生活を聞いてみると、お肉が大好きで週に2日は焼肉を食べていたり、コンビニやファーストフードなどの簡単なものばかり食べ ていて栄養の偏りが多いなど、食生活の乱れが顕著な方が多くいます。
 本来、血液中に脂質が多くても自覚症状はほとんどありませんが、動脈硬化は少しずつ進行します。ところが、たとえ血管の壁に脂質がたまっていても、「こ のごろ血液の流れが悪いな」などと感じることはまずありません。胸の痛みなどの自覚症状が出てきたころには、心筋梗塞や脳梗塞を起こしかけていたり、実際 に起こしたときというのが多いのです。
 症状がなくても安心せず、ぜひ食事や運動など、生活習慣の見直しにとりくんでください。

■糖尿病の検査(血糖値・HbA1c)

 血糖値とは、血液中のブドウ糖の濃度のことです。また、HbA1cとは、採血時から過去1~2 カ月間の平均血糖値を反映するものです。このHbA1cは食事の影響も受けないため、いつでも検査ができます。したがって、常日頃から摂生せずに健診前だ け食事を控えても、この数値をみれば日頃の不摂生がバレてしまうという「優れもの」です。

糖分が多いドリンク類

 「缶コーヒーやコーラなどを1日数本飲んでいる」「野菜不足を補うつもりで市販の野菜ジュース を飲んでいる」「牛乳は嫌いだからその代わりにヨーグルトドリンクを飲んでいる」という方もいらっしゃるのではないでしょうか。右の図にもある通り、たと え体に良いものであったとしても、日常的に飲んでいれば糖分のとりすぎで逆効果になることもあります。
 糖尿病は自覚症状も乏しく、喉の渇きや倦怠感などの症状があっても、それだけでは糖尿病とは気づきにくいものです。ただ、悪化すると失明や手のしびれな どの神経障害や、腎機能障害で週数回も透析に通院しなくてはならなくなるなど、大変な事態を引き起こします。逆に、自覚症状が出る前に早期に発見し、食生 活等を見直せば、改善できる可能性が大いにあります。

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健診後の保健指導で

 2008年度からはじまった「特定健診・特定保健指導」で、初めて保健指導が義務化され、継続的に受診者に対して保健指導をする機会がもてるようになりました。
 先日、私が担当している特定保健指導対象者(男性)が、夫婦で面談をされました。
 初回から3か月後の面談でしたが、本人や奥さんの表情も明るかったのがとても印象的でした。奥さんは、「夫は頑固で、なかなか忠告を聞いてくれず、お酒 の量も減らなかった。今は本人も努力して、お酒が今までの半分以下になっている。最近、夫婦いっしょに一時間以上散歩するようになったら、夫だけが痩せ て。悔しいわ」と笑いながら話してくれました。
 実際、約3か月で体重はマイナス5キロ、腹位はマイナス7センチ、HbA1cは8→6・5%に減っていました。本人も、みんなから評価してもらえること が嬉しくて、何より小学生のお孫さんから「おじいちゃんがもう少し痩せたら、一緒に歩いてあげる」と言われ、それを励みに頑張っているようでした。
 いくら改善したいと思っていても実行しなければ意味がありません。健診も、その後の保健指導も、本人にしてみればきっかけです。本人が健康のことを考え て生活改善にとりくむ“やる気になるスイッチ”をどのように押すことができるか、それが私たち医療従事者の大きな課題といえます。この男性は保健指導を きっかけに“スイッチ”が入り、家族や周りの方の支えで健康状態を改善することができたのです。

保健師から見た健診の重要性

 健診は、痛い採血もあるし、苦手なバリウムも飲まなければならない。結果によっては、好きなお酒やケーキ等をやめろと言われてしまうかも。「だったら受けないほうがいいな」と思う人もいるかもしれませんが、そこはひとつプラスに考えてみませんか?
 以前、健診の受診者からこんな電話をもらいました。
 健診時の検便検査で血便が発見され、健診結果で“要精密検査”(さらに詳しい検査を受けて下さいとの意味)となっていたが、自分は「痔があるから」と放 置していた。その後の健診結果も、3年連続で血便のために要精密検査となり、その度に保健師さんから「きちんと精密検査を受けて下さい」と言われていたの にそのままで、“要精密検査”の結果が出て3年たってやっと精密検査を受けた時には大腸がんとなり、現在は人工肛門をつけているとのこと。「あの時、きち んと検査を受けていれば…」と後悔されていました。
 健診は、異常の早期発見・早期治療のための大切な機会です。会社に言われて強制的に受けるという人もいるでしょう。健診を受けるきっかけは人それぞれで すが、せっかく受けるのですから、その結果で“要再検査”“要精密検査”となったら、必ず受診することが大切です。
 結果をよく確認して内容を理解し、必要に応じて受診しましょう。

いつでも元気 2011.5 No.235