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いつでも元気

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“悔しい死”47例 2009年国民健康保険など死亡事例調査 全日本民医連

 ことしも全日本民医連は“悔しい死”四七例を発表しました。「国民健康保険など死亡事例調査」です。二〇〇九年一月から一二月の 一年間に、全国の民医連加盟事業所で発生した事例を集めました。調査を始めて四回目ですが、その数は年々増加しています。またこの会見の報道をみて「私も 困っている」という相談も複数。「お金がないと医療にかかれない」実態を訴え、その改善を急いで! と民医連は訴えています。

木下直子記者

調査の概要と特徴

■国保短期・資格書と無保険は37人■

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会見する長瀬文雄事務局長(右)と湯浅健夫次長

 国民健康保険料を滞納した人が、その制裁で保険証をとりあげられた、またはそもそも「無保険状 態」の人が、受診をがまんし、手遅れで死亡したという事例は三七人でした。性別は男性が八割と圧倒的に多く、年代では五〇代・六〇代で八割を占めていまし た。職業の状況は多い順から、無職、非正規雇用、自営業。
 きわだっていたのは、来院時に短期証も資格書も持っていない「無保険」の事例の増加です。これまで三割ほどだったものが七割超。「失業後、国保に加入で きなかった」「非正規で雇われたが、会社の保険に入れず」などの事情でした。
genki223_05_02  なお、最年少は三九歳男性。一五歳で養護施設を出ていらい、住み込みの仕事を転々。社会に出て二十数年間、保険証を持てたのは、わずか二カ月。初診時は血 痰が出て歩ける状態ではなく、手術もできないほど進行した肺がんでした。本人は亡くなる前、「保険証がなく病院に行けなかった」「自分のような人はいっぱ いいた」と、語っていたといいます。
 病気の六割以上を占めたのが悪性腫瘍(がん)で二四人。がんなら少なくとも数年の治療期間があっていいものが、初診から死亡まで「数カ月」が多く、中にはたった「三日」という人もいました。

■保険証あっても窓口負担重く10人■

 あわせて、民医連が初めて報告したのが、正規の保険証はあったが、窓口負担が受診の妨げになったと思われる死亡事例です。これは一〇件。失業や不安定雇用などで困窮した人に、三割の窓口負担はあまりにも重いのです。

報道をみて「助けて」と民医連に

 記者会見後、事態がいまも各地で進行中だと痛感することが次々に。報道をみた人から入る相談です。
 静岡県の瀬川正男さん(仮名・61歳)はその一人。報道で民医連を知り、「お金がなくて治療を中断している」と全日本民医連にメールを送ってきました。
 静岡民医連が対応し、事務局の鈴木英治さんが浜松佐藤町診療所の看護師をともない、瀬川さんのアパートに駆けつけました。住み込みの仕事を失い、年明けに親子三人、静岡に移ってきた一家でした。

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正男さんは血圧の薬をようやく手にすることができた
下は正男さんが民医連にあてて送ったSOSのメール

 正男さんは間引きして飲んでいた高血圧の薬が切れ、血圧は上が二四八/下が一一八という状態。 数年前に受けたがんの手術の後遺症もあり、働ける体調ではありません。年金はというと、納入期間が一〇カ月足りず、無年金です。娘さんは心の病でひきこ もっています。息子さんが派遣会社に登録しましたが、なかなか仕事はなく、あっても一日数時間、家族をささえる収入にはなりません。その足で正男さんは診 療所を受診し、治療を再開。同時に生活保護も申請しました。
 「蓄えが尽きて、子どもたちのゲームソフトまで売りました。民医連にメールしたのは、苦しさを吐き出すような気持ちでした。役所に行っても助けてもらえ なかったので、助けに来てくれた上に、こんなに早くて驚きました。子どもたちの足手まといになっては…と、食事を減らしたり、亡くなった妻の所に行くこと も本気で考えていたから」と、正男さん。
 「いまの日本はすべり台のように、アッという間に命の危機に落とされるんですね」相談に乗った鈴木さんの感想です。

 ほかにも、「四人家族で年収は二〇〇万円と少し、国保料の請求が五四万円。一七万円まで払った けれど、いま三カ月の短期証。私は病気で薬が欠かせない。資格書になったらどうしよう」という自営業の女性からの電話。国保死亡事例の記事をみて、新聞社 から民医連の電話番号をきいたのだと話しました。
 また、東京の生活相談会では、ひどい呼吸苦を訴える男性が。建築の仕事をしていましたが長年無保険でした。民医連の病院で診察を待ちながら「保険証がないから、病院に来たことがなかった」と小さな声で。現在、入院加療中です。

高すぎる保険料と窓口負担改善を

 全国の国民健康保険の加入世帯の五軒に一軒が保険料を滞納し、そのペナルティ(制裁)として発行されている短期証は一二〇万九〇〇〇世帯、資格書は三一万一〇〇〇世帯にものぼります。
 国保の保険料の設定は、世帯所得の約五分の一、ひどいところで四分の一にもなっています。国が八四年から国保会計に出す国庫負担を削減してきたことで、加入者一人あたりの負担額は当時の二倍を超えるものに。ただでさえ国保の加入者には低所得者が多いのです。
 民医連は調査の結びに国庫負担を元の四五%に戻すこと、保険証とりあげの中止、国保・社会保険とも、窓口負担を現行の三割から二割に削減することなどを、国に緊急提言しています。

いつでも元気 2010.5 No.223

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