くすりの話 121 「胃腸薬」について(下)
腸は小腸と大腸からなります。小腸は約5メートルもあり、食物の栄養素を消化・吸収しながら大腸に送ります。大腸は約1~1.5メートルで、おもに水分を吸収し、便を形成して排泄します。今回は、腸の病気に用いる薬についてのお話です。
Q:腸の病気にはどんなものが?
A:大腸には100~120種類の腸内細菌がいて、その数は約100兆個。おもに「善玉菌」と「悪玉菌」があり、増殖と死滅を繰り返しバランスをとりながら健 康を保っています。腸は暴飲暴食やストレスなどの影響を受けやすく、腸内のバランスが崩れて悪玉菌が増えると、病気を引き起こします。
腸の具合が悪くなると、痛み、吐き気、下痢、便秘、腹部の膨満感、ガスの発生などの症状が現れます。食べすぎや飲みすぎなどが原因の場合は比較的早く治りますが、食あたりやウイルス(細菌)性胃腸炎などは回復までやや日数がかかります。
さらに症状が長引くときは、次のような慢性疾患の可能性もあります。
炎症性の疾患としては潰瘍性大腸炎、クローン病が考えられ、下痢や腹痛が続くものの、検査でとくに異常が見られない場合は過敏性腸症候群が考えられま す。原因はさまざまですが、いずれも若い世代に多く、ストレスがかかわっているといわれています。前者は、自己免疫性疾患(免疫のはたらきがおかしくな り、正常な組織を攻撃してしまう)であり、治りにくく、消化器専門医による診断や治療が必要です。
Q:便秘で困っているのですが、どうすれば?
A:薬の服用以外に、生活習慣や食生活の改善も必要です。薬は 便秘のタイプによって整腸剤、センノサイド、酸化マグネシウムなどを服用し、排便を促したり便をやわらかくします。便秘だからといって、下剤や浣腸を乱用 してはいけません。逆に便意が失われ、便秘がひどくなるからです。
Q:薬を使うときの注意点は?
A:腹痛や下痢、便秘などに「市販薬」を用いる場合もあると思 います。暴飲暴食や冷え、食あたりによる下痢や腹痛の場合、通常は食事の制限や、短期間の胃腸薬を服用することでおさまります。ただし、急性の下痢症の場 合、下痢には体の毒素を排出する働きがあるため、みだりに下痢止め薬を用いるのは好ましくありません。
ビフィズス菌などが含まれている整腸剤は、急な効果は見られませんが、腸内の善玉菌を増やすなどの働きで、腸内環境を整えます。
慢性的な便秘に使う下剤以外の薬は、あくまでも一時的な服用に限りましょう。症状が改善しなかったり、悪化する場合は、早めの受診をおすすめします。
いつでも元気 2010.2 No.220