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いつでも元気

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特集2 肥満解消のすすめ 動脈硬化を予防しよう

40歳からはじめる有酸素運動

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宮廻英司
島根・松江生協病院

 厚生労働省の08年の統計では、死因の1位が悪性新生物(がん)30・0%、そして心疾患(心 臓の病気)15・9%、脳血管疾患(脳卒中など)11・1%です。このうち2位の心疾患と3位の脳血管疾患を合わせると、全死亡率の30%近くになり、悪 性新生物に匹敵する割合を占めています。心疾患と脳血管疾患の大半は動脈硬化が関係しており、「死因の第2位は動脈硬化」といってもいいすぎではありませ ん。
 動脈硬化は症状がないまま進行することが多く、働き盛りの人が急に心筋梗塞や脳梗塞を発症し、死に至るケースもあります。死を免れても後遺症で苦しむ人も少なくなく、社会的な問題にもなっています。
 動脈硬化の原因としてとくに重要なのは高血圧症、脂質異常症(高脂血症)、糖尿病、喫煙、そして後で述べるメタボリックシンドロームです。
 写真1は、50歳の男性の心臓の血管(左冠動脈)です。血管が詰まって血液が流れなくなっています(心筋梗塞)。男性は健診などで血圧や中性脂肪の異常を指摘され、まさに「メタボリックシンドローム」の状態でしたが受診せず、突然心筋梗塞となって救急外来に運ばれてきたのです。
 すぐに血管の中に管を挿し入れ、冠動脈のつまりを取り除く治療(カテーテル治療)をおこない、大事には至りませんでした(写真2)。いまはそれまで通り仕事をしておられますが、働き盛りですから、重症になっていれば家族への影響も甚大だったでしょう。

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メタボ対策で動脈硬化防ぐ

 動脈硬化の原因として見逃せないのが肥満です。「2008年国民健康・栄養調査」によれば、肥 満者の割合は男性28・6%、女性20・6%。40・50歳代の男性では30%を超え、およそ3人に1人が肥満です。肥満は高血圧症、脂質異常症、糖尿病 など、生活習慣病の原因になります。
 肥満にも「皮下脂肪型肥満」「内臓脂肪型肥満」の2つがあり、内臓の周囲に脂肪がたまる「内臓脂肪型肥満」は、生活習慣病、動脈硬化と深い関係があると いわれています。 メタボリックシンドロームは「内臓脂肪型肥満」が原因で、血圧や血糖値、中性脂肪などが異常を来している状態です。診断基準は図1の通りです。それぞれの異常はごく軽くても、複数の異常が重なることで動脈硬化が促進されます。メタボリックシンドロームに当てはまる人は、糖尿病の発症率が5~9倍に、脳卒中や心筋梗塞の発症率は約3倍にはね上がるともいわれています。
 先ほどの「国民健康・栄養調査」によれば、メタボリックシンドロームの該当者は男性25・3%、女性10・6%です。同じく「予備軍」は、男性21・ 9%、女性8・3%です。男性では実に4割以上がメタボリックシンドローム、またはその予備軍ということになります。
 一般に男性は40歳代から動脈硬化が進んでいきます。40歳過ぎから積極的に肥満・メタボリックシンドローム対策をおこなうことが、動脈硬化の予防につながります。

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有酸素運動で肥満解消

genki220_04_04  内臓脂肪を減らすには、摂取カロリーを少なくするだけでなく、日ごろから体を動かす習慣を身につけることが大切です。運動により消費エネルギーが増え、身 体機能が活性化すると、糖や脂質が消費されやすくなり、内臓脂肪が減少します。血糖値や脂質異常、高血圧症も改善され、生活習慣病の予防・改善につながり ます。体力も向上し、太りにくい体になります。
 なかでもよいといわれるのが「有酸素運動」で、息を止めて一気に走ったり力を入れるような激しい運動を「無酸素運動」というのに対し、有酸素運動は呼吸 をしながら持続的におこなうものです。主なものに、ウオーキング、ジョギング、サイクリング、水中運動、エアロビクスなどがあります。体脂肪をエネルギー 源として使うため、ダイエットにも適しています。それだけでなく、善玉コレステロールを増加させるため、動脈硬化の予防に効果があります。
 脂質を効率よく消費するためには、自分の運動能力の5割程度、軽く汗ばむくらいの運動を長時間(30分以上)おこなうのがよいとされています。すぐに息 切れしてしまう激しい運動では脂肪は燃えません。脂肪を燃やすには少し息がはずむぐらい、会話ができる程度の有酸素運動が適切です。心拍数をあまり上げず に(120~140/分程度)続けられる運動を始めるとよいでしょう。
 できれば毎日、最低でも週3~4回おこなうことが必要です。心拍数は、運動直後に手首などで脈を10秒間数えて6倍するか、市販の心拍計を利用してください。

生活に運動取り入れて

 下の図は「内臓脂肪減少シート」です。メタボリックシンド ロームの運動指導に使っています。たとえば腹囲90センチ、体重70キロの男性が、目標の腹囲を85センチにしたとします。「じっくりコース」だと1カ月 あたり1センチ減らしていく目標になるので、5カ月かかります。目標達成までに減らさなければならないエネルギー量は3万5000キロカロリーです。1日 当たりになおせば、減らすエネルギーの量は、約233キロカロリーとなりますね。その233キロカロリーを食事と運動にふり分けます。
 表は運動で消費するエネルギー量を示したものです。70キロの男性が20分自転車にのるとエネルギー消費量は75キロカロリーになります。毎日40分の 自転車に乗るようにした場合、75キロカロリー×2=150キロカロリー消費します。目標達成のためには食事であと83キロカロリー(ご飯茶碗半分)減ら せばよい計算になります。
 しかし実際に運動を指導しても、「忙しくてできない」「時間がとれない」となかなか進まないことが多く、働き盛りの世代はとくにその傾向があります。
 忙しくて運動の時間がとれない場合は、(1)車を徒歩や自転車に切り替える、(2)動きやすい靴を履き、いつでも歩けるようにしておく、(3)エレベー ター、エスカレーターを使わない、(4)万歩計を使う、(5)電車やバスでできるだけ座らない、(6)家事も運動だと思って積極的におこなうなど、運動を 日常生活に取り入れる工夫と努力が必要です。

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体験者の話

2ヵ月で体重5キロ減 内臓脂肪も正常に

加藤 篤(島根・ふれあい診療所)

 私は当初、身長160・7センチ、体重60キロ、肥満の目安となるBMI(体重キロ÷〈身長メートル×身長メートル〉が23・2でした。BMIは標準値で、自分でも「太っている」とは思っていませんでした。
 ところが、お腹をCTで撮影すると「内臓脂肪面積152・2平方センチメートル」。メタボリックシンドロームと診断される100平方センチメートルを大幅に超過! たいへんショッキングな結果が出てしまいました。
 宮廻医師にはこういわれました。
 「内臓脂肪蓄積に加えて、血糖値も110。完全にメタボリックシンドローム一歩手前です。このままだと糖尿病や動脈硬化になりますよ」
 医師のアドバイスを受けながら、腹囲を87・3センチ(08年10月現在)から2カ月後に85センチにするという目標を立てました。宮廻医師によれば、 「目標達成には1日あたり350キロカロリーを減らす必要がある」とのことでした。

自転車通勤に切り替えて

 まず、食生活をふり返りました。私は毎日夕食をしっかり食べた後、さらに寝る前にビールを大び ん1本程度飲む習慣が。つまみも欠かさず、スナック菓子や、バターピーナッツやせんべい、魚肉ソーセージなど、毎日品を替えながら「おつまみ」を。医師は 「寝酒をまずやめてください」と。しかしそれはとてもできないので断り、かわりに次の2つの計画を実践することにしました。
 1つ目は、通勤時の自動車をやめ、自転車通勤に。1日往復で14キロカロリーを合計約60分かけて通勤。これで180キロカロリー消費できるとのことでした。
 2つ目は、寝酒のつまみを減らすこと。夕食のおかずから1品をつまみにまわし、スナック菓子などはいっさい口にしない。これで残り170キロカロリーが消費できるといわれました。

間食もやめて

 こうしてダイエットは始まりましたが、2~3週間はやせた印象はなし。しかし1カ月経ったころ、「あれ? やせた?」といわれるように。
 朝と昼はいままで通りの食事量でしたが、夕飯はご飯を半分に減らし、おかずも献立によっては半分に減らしました。くわえて間食をいっさいやめたため、日中は空腹感がつきまといました。
 寝酒のつまみはお手軽なことから枝豆一品に。冷凍の枝豆を約一三〇グラム計って、それ以上食べないようにしました。夕食を減らしているので、ビールはおいしく感じました。

成功の要因は

 2カ月経って、再検査。のようにダイエットは成功。夕食は量を戻しましたが、以前の8割で満腹に。少し小食になったかもしれません。
 工夫した点をいくつか。ダイエット中は何度も空腹感に襲われます。そんなときはとにかくシュガーレスガムをかみ、気を紛らわしました。どうしても食べたいと思ったら、少量皿に盛って食べ、残りは目の届かないところに避ける。または朝、好きなだけ食べる。
 晩酌をやめなかったことも成功の大きな要因でした。ダイエットのためにすべての楽しみをたっていたら成功しなかったと思います。
 また、周囲にダイエットを宣言していたので、励ましの言葉にも支えられました。
 太っているという意識がなくても、私のように想像以上に内臓脂肪が蓄積されている人もいるかもしれません。ぜひ一度、内臓脂肪のCT検査を受けることをおすすめします。

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いつでも元気 2010.2 No.220