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いつでも元気

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(得)けんこう教室/アトピー性皮膚炎/一人ひとりにあった治療法を

中村和子 神奈川・川崎協同病院 皮膚科

 外来で「うちの子はアトピーでしょうか?」とよく聞かれます。アトピー性皮膚炎とは、痒みをともなう特徴的な湿疹が、くり返しあらわれる病気です。
 初診時に明らかに慢性的で特徴的な湿疹がみられる場合は、アトピー性皮膚炎と診断しますが、そうでない場合は、治療しながら経過をみて、湿疹が一時的な ものか、慢性的なものかを見きわめる必要があります。したがって、「すぐにアトピー性皮膚炎と決めつけないで治療しながらようすをみましょう」と、お話し ます。
 アトピー性皮膚炎と考えられ、食物アレルギーが疑わしい場合は、血液検査や皮膚テスト(アレルギーのもとになっていると考えられる物質の液を皮膚にたら し、針で刺して反応をみる)などをおこない、食物アレルギーの有無を調べます。陽性でも、すぐに食物除去(食事制限)するわけではありません。スキンケア や外用薬(ぬり薬)だけでは改善せず、強い症状を繰り返す場合に、食物除去を検討します。
 乳児のアトピー性皮膚炎は、食物アレルギーが原因の場合には、3歳までに約50%、6歳までに約90%の患者さんで軽くなるといわれています。ひたすら 食物除去を続けるのではなく、食物除去が必要かどうか、定期的に確認することが大切です。

体質と環境の両方が原因に

 アトピー性皮膚炎では、「遺伝的な体質」と「環境の影響」が病気の発症に関係すると考えられています(図1)。
 遺伝的な体質には、(1)食物、ダニ、ハウスダスト(家庭内のほこり)、花粉などに対するアレルギーがあること、(2)乾燥肌であることの二つがあげられます。
 乳児期には卵、牛乳、大豆などの食物アレルギーが多く、発育とともにダニ、ハウスダスト、花粉などが多くなり、治りにくい例では真菌(カビ)、米や小麦などの穀物が原因であることもよくあります。
 またアトピー性皮膚炎の患者さんは、皮膚からの水分が奪われやすく、水分を保持する機能も低下しています。そのため皮膚は乾燥肌の状態になっており、これが痒みを強めます。
 また、外からの刺激を受けやすい状態になっています。乾燥肌には保湿剤を使いますが、症状が軽い場合は保湿をしっかりおこなうだけでもアトピー性皮膚炎の症状が改善することもあります。
 環境の影響には、食物、ダニ、花粉などのアレルギー的要因と、乾燥、汗をかく、ひっかくといったものがあげられます。さらに成人の重症例では、人間関係や多忙、社会的ストレスも悪化の原因となります。この場合は、皮膚科と精神科が連携して治療にあたります。

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症状は年齢により異なる

 アトピー性皮膚炎は、年齢によって症状が異なります。
■乳児期 頭部や顔面などに赤い湿疹やかさぶた、ひっかき傷がみられます。体や腕、下肢にも湿疹が広がることも。
■幼小児期 体全体の皮膚が乾燥し、肘や膝の内側、首まわりなどに赤い湿疹やブツブツがみられます。慢性的に湿疹をくりかえすことで、皮膚が厚く硬くなることがしばしばあります。
■成人期 幼小児期と同様に、皮膚の乾燥、肘や膝の内側の湿疹に加え、上半身を中心に慢性湿疹がみられるタイプ、腕や下肢に痒みのある硬いしこりがみられるタイプ、全身が真っ赤になってしまう紅皮症タイプなどがあります。
 全年齢層に共通するのは、湿疹の広がりが基本的には左右対称であることです。

治療法は

 現時点で有効性、安全性が科学的に立証されている薬は、ステロイド外用薬とタクロリムス(プロトピック)軟膏で、アトピー性皮膚炎の炎症を抑えます。
 ステロイド外用薬は、「使いたくない」という人も中にはいらっしゃいます。たしかに、正しい使い方をしないと副作用が出ることもあります。
 局所的な副作用として、ニキビ、皮膚の萎縮、感染症などを発症することがありますが、薬の使用をやめたり、薬の強さを変えたり、適切な治療をおこなったりすることにより改善します。
 また、ステロイド薬を使ったことで皮膚が茶色くなってしまったという患者さんもいますが、これは皮膚の炎症による色素沈着で、ステロイド薬による変化ではありません。
 強いステロイド薬を多量に塗り続けると、内服薬と同様に全身的な副作用(副腎不全、糖尿病など)があらわれることもあるため、定期的に医療機関を受診し、正しい使い方を確認しましょう。
  ステロイド外用薬はチューブから押し出し、人差し指の先から第1関節までのせた量(1FTU=約0.5g)が、成人の手のひら2枚分の広さにぬる適切な量です(図2)。
 タクロリムス軟膏は、ステロイド薬とはちがうしくみで効く薬です。2歳未満の小児、妊婦、授乳中の女性は使えません。顔面や首まわりなど皮膚の吸収が良い場所にとくに効果的です。くわしい使い方や副作用、注意点などについては、かかりつけ医に確認してください。
 これらの薬に加え、保湿剤を上手に使い、痒みが強い場合は抗ヒスタミン作用を持つ薬の内服が効果的です。
 この他、皮膚を清潔に保つことも必要です。洗髪や入浴時は肌をゴシゴシこすらずにやさしく洗いましょう。
 以上が標準的な治療法ですが、アトピー性皮膚炎の悪化因子は一人ひとり違います。人間関係や多忙などがストレスになって、炎症をおこしている個所をひっ かいてしまい、悪化することもあります。患者さんと医師の間に信頼関係を築き、一緒に悪化因子を見つけ、個々にあった治療法をおこなうことが一番大切だと 私たちも考えています。

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イラスト・いわまみどり

いつでも元気2010年2月号