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いつでも元気

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後期高齢者医療制度 廃止は“待ったなし”の願いです

 民主党中心の新政権は、後期高齢者医療制度をしばらく継続すると表明、二〇一〇年度の概算要求にも、制度廃止は盛り込まれていま せん。ちょっと待って! 国民のいのちを年齢で差別する姥捨て山制度には「廃止に少し時間がかかる」では片づけられない問題が。その中のひとつが保険料滞 納者への制裁です。有効期限の短い「短期証」の発行が始まって、現在その数二万八〇〇〇人超(表)。

短期証発行、全国で2万8000人超

4人に発行されていた和歌山生協病院で

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10月末で切れる保険証
「保険証ないと困る」とAさん

 後期高齢者医療制度には、いくつもの問題が指摘されています。その中のひとつが、保険料滞納者への制裁として保険証をとりあげる、としていること。一年以上の滞納者には正規の保険証は出さず、短期証や資格書に切り替える、というものです。
 「後期の短期証を発行されていた患者さんがなぁ、うちの病院で四人もいてたんよ!」こんな連絡をくれた和歌山へ。保険証とりあげなどの制裁の対象は、あ くまでも悪質な滞納者とされていますが、四人の事情はどうだったのか。同県民医連の久保田泰造事務局長に同行しました。

無年金、生活費は2万円

 一人目・八八歳のAさん。訪問すると、電気もテレビもつけず、夫の仏壇のある部屋で、ぽつんと座っておられました。無年金の一人暮らしです。「働いてたんやけど、満州からの引き揚げ者の一家には年金のかけ金が捻出できなくて」と。
 無年金の方から保険料の年金天引きはできません。請求書は届いていましたが、短期証に気づいた久保田さんが連絡するまで、本人は気づいていませんでした。
 「ヘンな制度になったもんやな。保険証がなかったら困るワ」と、Aさん。後期高齢者医療制度がはじまるまでは扶養家族として息子さんの保険に入っていた ため、保険料負担はゼロでした。とにかく去年の保険料月々四〇〇円を納めました。住居や水・光熱費以外の生活費を息子がくれる二万円でまかなっている家計 には、それも大きな出費です。
genki218_06_02 食費に通院費、介護保険料まで二万円からやりくりを? と私たちが心配すると、「いよいよ困ったら、紀ノ川までは歩ける。ザブンと飛び込めばいい」。
 実はAさん、久保田さんが最初に連絡した時に寝込んでいました。往診に走った医師が状態をみて入院をすすめても、応じませんでした。「最近、何のために生きてるんかな、と思う」。まさに長生きを喜べない心境に陥っていました。

すぐさま生活相談へ

 二人目はBさん。七五歳の誕生日がきて、前期高齢者の妻と別保険になりました。年額四〇万円の年金の妻に五万円の国保料、Bさん本人には一〇万円の保険 料が。しかし年金を担保にした借金があり、支払いはおろか、生活にも困っていることが判明。借金の年利は法律の範囲を超えるものでした。すぐさま久保田さ んは地域にあるクレジット・サラ金被害の救援組織に連絡を入れ、生活を建て直す相談をはじめました。
 三人目。特養施設から通院中のCさん。施設を訪問し「Cさんの保険が短期証なので」と話すと、施設職員は入居者のファイルに綴った保険証のコピーを確認 し、目を丸くしました。「ホンマやわ。月末で期限切れ。七五歳になる方の保険の切り替えには注意してたんですが…」。自営業だったCさんも、無年金でし た。
 四人目。七九歳のDさん。和歌山生協病院に入院中でした。世帯は息子さんと孫の三人。入院費は払える、とのことでしたが、ご本人は無年金でした。
 「なんや、取材か生活相談か、区別がつかん」と、久保田さん。「悪質な人はいないのに、無保険状態になるところやった」

「悪質」いなかった

 四人のうち、三人が無年金、一人は急いで生活相談が必要な世帯でした。
 後期高齢者医療保険の保険料の徴収は、年金からの天引きが原則で始まりましたが、天引きではなく自分で納付する「特別徴収」の人もいます。それが年金の 月額が一万五〇〇〇円に満たない人や、無年金の人たち(注・年金天引きは批判を浴び、加入者が納付方法を選択できるようになった)。
 「高齢で制度の理解が難しい上、もともと生活に困っている可能性の高い人たちから保険証をとりあげるしくみなんですよ。こんな制度はアカン」久保田さんが語気を強めました。
 厚労省がこのほど明らかにした短期証の発行数は、全国で二万八〇〇〇件を超えています。

 一〇月二六日、厚生労働省は全都道府県にあて資格書の発行(保険証とりあげ)には、厳格を期すよう通知を出しました。「悪質な人に限る」という念押しです。
 しかし、保険料滞納者数は少なくとも一七万人(二七都府県五八七自治体のアンケート。〇八年九月時点 全国保険医団体連合会調べ)。悪質かどうかの見極 めを自治体ができるのか? 「制度の理解ができずに滞納していた方が『悪質』とみなされ、無保険状態になっていた」(愛媛民医連)という事例も報告されて います。

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10月15日1万人の年金者が全国で「すぐ廃止を」と行動した(日比谷)

 どんなに年金が少なくても、無年金でも、すべての高齢者に保険料を課し、その結果、払いきれない貧しい人の医療を奪う危険性のある制度はやはり「姥捨て保険」です。
 「保険料の値上げを抑えるだとか、資格書発行を慎重にするよう通知するなど、政府は手だてをはじめていますが、これは最悪の事態を回避しようとしている だけ。後期高齢者医療制度がいかに高齢者のいのちや人権を無視した悪法かを認めておきながら、廃止を先延ばしにすべきではない」全日本民医連の湯浅健夫事 務局次長は、この間の政府の対応にこうコメントしています。

世論つくった私たちが――

廃止、見届けよう

 八月三〇日、総選挙・開票速報のテレビ番組。フラッシュを浴びながら「後期高齢者医療制度を廃止したい」と、当選の抱負を語った民主党議員がいました。 国会の過半数を「後期高齢者医療制度廃止」を掲げた議員が占めた…ここまで動かしてきた、と私たちの力を感じた瞬間でした。
 神戸市の読者から、こんな便りが届いています。「おじいさん、民主党政府になったから、後期高齢者医療の署名はもうしなくてよいんだよ! といってくれる人がいるが、廃止になるまで続ける」
 そう、この悪法に対し誰よりも早くたたかいののろしをあげてきた、民医連の雑誌として『元気』も引き続き訴えます。
後期高齢者医療制度廃止は待ったなし!
文と写真・木下直子記者

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いつでも元気 2009.12 No.218