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いつでも元気

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地球温暖化を止めよう(7) 日本ではいま… 対策 すすまないのはなぜ?

筆者:和田武(わだ・たけし)
1941年和歌山生まれ。立命館大学産業社会学部元教授。専門は環境保全論、再生可能エネルギー論。「自然エネルギー市民の会」代表、自治体の環境アドバ イザーなど。著書に『新・地球環境論』『地球環境問題入門』『市民・地域が進める地球温暖化防止』『飛躍するドイツの再生可能エネルギー』(世界思想社) など多数。

 日本のCO2排出量は世界の約5%、国民1人あたり排出量で世界平均の2倍を超えています。温 室効果ガスの排出量が世界全体の8割を占めている先進国には、積極的に温暖化防止に動く責任があります。今後は、気温上昇が2℃以下になるよう、世界の温 室効果ガス排出量を減らし続けなければなりません。
 京都議定書で日本は「2012年までに90年比で温室効果ガスを6%減らす」と約束しました。しかし、実際は7.8%も増やしています(図2)。世界銀行の調査でも、先進国の中で温暖化対策のすすみ具合が最低だと指摘される始末です。

■「減らす」どころか増えたのは

図2 各国の温室効果ガス排出状況
約束値と比べると
genki204_06_01

 90~2005年、温室効果ガスの中でCO2の排出が11%と最も増えています。石炭火力発電が発電に占める割合が90年から05年で2.5倍に拡大し ている影響が大きいのです。日本は世界一の石炭輸入国。石炭は天然ガスの約2倍のCO2を出す燃料です。電力会社が石炭火力発電を増やすのは、石炭の発電 コストが安くつき、利益が大きいからです。
 一方、政府と電力会社は原子力発電を「CO2を出さないクリーンエネルギー」と呼び、「原子力立国計画」で拡大路線をとっています。しかし、震災後に操 業不能に陥った柏崎の例でもわかるように、危険が大きい上、安定的に電力供給が期待できない発電手段です。また、原発が故障や震災の影響で予定通り動かせ ないために、火力発電所などの運転時間が増え、逆にCO2を増やしています。
 ほかに、家電や自動車などの製品の増加や大型化、建築物の断熱性が低いなどの原因で、家庭や運輸部門でも排出量が増えています。
 一方で、再生可能エネルギー普及は大幅に立ち遅れ、エネルギー効率の改善も最近は停滞しています。

■産業界で70%を排出

図3 日本の分野別CO2排出量
(2005年)
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 日本のCO2の約70%は電力や製鉄など産業分野から出ています。うち100の大規模事業所だけで全排出量の40%を占め、電力会社だけで30%近いことがわかってきました。排出量1位の事業所は中部電力の碧南石炭火力発電所でした。
 国民には省エネが強調されていますね。意識を高めることは大切です。しかし家庭部門のCO2排出量は全体の約20%(図3)。「マイナス6%」は2008~12年の約束で、2050年には60~80%削減の目標が控えています。たとえ家庭部門をゼロにしても、目標を達成できません。
 産業構造を見直し、エネルギー生産を持続可能なものに転換することが、日本が責任を果たす道なのです。

■環境先進国との違いから考えれば

 具体的には、一刻も早く2020年までに30%以上削減する中期目標を持つこと。その上でそ の達成のために、産業部門の削減対策を「自主行動計画」まかせなどにせず、部門や企業別の削減義務目標を割り出すこと。国内での排出権取引制度の創設や化 石燃料への環境税(炭素税)の導入などが必要です。
 洞爺湖サミットを機に、日本が中期目標や排出量取引制度を導入するかと世界は期待していました。しかし、福田ビジョンは中期目標の設定を先送りし、セク ター別積み上げという独自方式を持ち込んだあげく、2020年でも京都議定書の目標以下の削減試算しか出せませんでした。NGOが温暖化防止の足を引っ張 る国に贈る「化石賞」を受賞するわけです。
 再生可能エネルギーの普及が遅れる原因としては、普及目標の低さや普及促進制度がないことがあげられます。原発の財源は電源開発促進税で電気料金に組み込んで徴収しているのに、再生可能エネルギー普及財源は確保されていません。

■グリーンプロデューサーになろう

 「でも環境に良い政府になるまで待ってられないよ」と思う方も多いでしょう。個人で省エネしたり国や自治体によりよい環境政策を求めたりすると同時に、私たちにできることがあります。
 それは、家庭や地域での再生可能エネルギーの普及です。環境先進国では市民のリードで再生可能エネルギー普及を進め、政策も変わりました。小規模で分散型の再生可能エネルギーは、地域に根ざす人たちの所有・運用に適しています。
 日本は自然エネルギーに恵まれています。図4は筆者が試算したエネルギーシナリオです。いまより生活が不便にならず、脱原発をしながら、2050年までにCO2排出量を90年比で80%削減、2100年にはほぼゼロにすることは可能です。
 環境を守る生産者(グリーンプロデューサー)として市民共同発電所づくりに参加した人たちが、国内に約3万人いて、全国約200カ所もの市民共同発電所 を動かしています。太陽光発電設備を設置した家庭は約40万。不利な条件下でも積極的にとりくむ多数の市民がいます。

図4 2050年までにCO2を80%削減するシナリオ
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次は、動き始めた日本の市民 太陽光発電

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ミニ解説

図1 世界のCO2排出量
─国別の割合─

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国民1人あたりのCO2排出量…世界で は、2050年までに温暖化ガス排出量を半減する行動計画が検討されている。現在世界人口換算で1人あたり4トンのところを1~2トンにするという目標。 しかし途上国ではいまでも1人あたり1トンという国がある。一方、日本は1人あたり約10トン、アメリカは約20トンといった具合で大きな格差がある。

排出権取引制度…温 室効果ガスの排出量が、一定の規模を上回る事業所ごとに削減目標を決め、目標を上回って削減した事業所はその分を「削減枠」として売却でき、達成できない 事業所は達成した事業所から「削減枠」を買って未達成分を穴埋めできるという制度。導入したEUなどでは成果をあげている。

日本政府が提案する「セクター(産業部門)別積み上げ」…鋼 鉄1トン製造する場合や石油を1リットル使った場合など単位あたりCO2をどれだけ減らす、という風に産業部門別に相対目標を決め、それらを積み重ねて国 の温室効果ガス削減の総量を決める方式。単位あたりで削減できても生産量やエネルギー消費量が増えれば、CO2総排出量は増えてしまうこともある。実際、 石油分野は90年から06年で単位あたり13%減の自主目標を達成したが、石油の使用量が増えたため、CO2排出量を31%も増加させた。

いつでも元気 2008.10 No.204