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いつでも元気

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特集1 医療・介護再生へあきらめない運動を 国民生活の実態から出発して 全日本民医連が再生プラン案でシンポジウム

“たたかうシンポジウム”全国に広げよう

 医療・介護崩壊の危機が叫ばれる今日、幅広い人びとと共同し打開の道を探ろう・全日本民医連はことし三月、定期総会で「医療・介護制度再生プラン案」を発表。国のあり方も問う提言をおこない、各界での議論を呼びかけています。
 再生プラン案をもとに、七月一九日、全日本民医連が都内で開催したシンポジウムでは、医療現場の実態や社会保障の財源論、医療界と国民の団結の重要性な どについて語られました。民医連職員のほか共同組織、マスコミ関係者、会社員や学生などもふくめ、全国から予定を超える四七二人が参加。会場は座る席がな くなるほどあふれ返りました。

救急病院まで一二〇キロも

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4人がシンポジストとして発言。左から本田宏さん、権丈善一さん、浦野広明さん、堀毛清史さん(7月19日、都内)

 全日本民医連副会長の堀毛清史さん(北海道勤労者医療協会理事長)は、北海道が直面している医療崩壊の現状について発言。地域から救急受け入れ病院がなくなり、一二〇キロ以上も走らなければ救急病院がない地域があいついで生まれている(図1)と語り、「一二〇キロといえば、東京駅から小田原駅まで」と衝撃的な事実をしめしました。
 済生会栗橋病院の副院長・本田宏さんは「後期高齢者医療制度が導入されたのは、財政赤字がどんどん増え『世界一になった』とされたから。しかし赤字の責 任は、医療にも福祉にも教育にもない。誤った情報に惑わされず、公共事業の無駄を削って社会保障にまわすべき」と主張。

図1 次つぎ消える救急受け入れ病院
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 「どうしても公共事業というなら、医療を公共事業と考え、医療業界で働くようにしたらいい。ダム、道路工事に従事していた人を、医療で働くように変えれ ばいいんです。医学部定員を増やしても医師はすぐには増えないから、助ける人を増やせばいい。雇用促進、地域活性化にも貢献できます」
 本田さんは社会保険料負担についても「無職者に自殺が増えている。国民負担を増やすなら慎重にしなければ。日本では所得が一〇億円を超えても、国民保険 料の負担は六〇万円が上限」と話し、負担できる人が応分の負担をすべきだと主張しました。

すべて税金は平和的生存権の保障に

 「社会保障は生存権の保障であり、根拠は憲法二五条。医療は国民の最低生活を保障する国の義務。どんなに財政上苦しくても国は優先的にこの義務を遂行しなければならない」と話したのは、税理士で立正大学法学部教授の浦野広明さんです。
 「すべての税金は憲法がめざす方向、平和的生存権の保障に使うべき。消費税を福祉目的税にするという考え方自体がおかしい」

表1 消費税をもらっているトヨタ自動車(概算、2006年分)
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 浦野さんは大企業や資産家などを優遇する不公正税制を正す必要性を強調。トヨタなど多国籍企業は消費税を払わず、国からお金を受け取っているからくりも告発(表1)。「仮に消費税が一〇%になれば、トヨタは消費税を払うどころか、逆に約六〇〇〇億円を受け取ることになる」と、消費税増税論に隠されたねらいを突きました。
 さらに消費税は「貧困を生む税金」とも指摘。
「大企業は消費税を減らすため、人件費を外注している。『外注費』は『仕入れ』に算入するので消費税の課税対象から差し引ける。そのため、子会社をつくって人材派遣に切り替えています」
 その子会社も資本金が一〇〇〇万円未満なら二年間は消費税がかからないため、「二年ごとに子会社をつくってはつぶしている」と告発しました。

力合わせて“医療ルネッサンス”を

「消費税増は生死にかかわる」

図2 社会保険料率の国際比較(勤労者)
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 消費税について堀毛さんは、現場の医師の立場から「税金の重さは耐え難い状態になっています。この現実から、税のことを考える必要がある。消費税増税は何としても反対です」と。
 石油高騰で暖房も使わず、湯たんぽでしのごうとして低温やけどになった患者が増えていること、真冬の釧路で暖をとるために流木を拾っている人もいたこと を紹介、「こういう人たちは、消費税が一%上がるだけでも生き死ににかかわる」と強調しました。
 フロアから、細田悟医師(東京)が発言。医療材料や薬剤などの物品購入には消費税がかかるが、医療費は「非課税」のため患者に転嫁できず、医療機関・介護施設の経営を圧迫していると訴えました。
 「大田病院では年間一〇〇〇万円の黒字になるか赤字になるかで必死にやっているが、一億五〇〇〇万円~二億円が消費税の負担になっている。たとえ『福祉 目的税』だとしても消費税が一〇%になれば、多くの医療機関・介護施設はすぐにつぶれます」
 医療機関や介護施設には消費税を負担させない「完全非課税」の実現を、と訴えました。

表2 G7+スウェーデンと日本の患者負担の概要
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歳出カットのねらいは

 シンポジウムには政府の諮問機関「社会保障国民会議」の権丈善一さん(慶応大学商学部教授)も招かれ、注目されました。
 権丈さんは公的医療費を増やす必要があるとの立場を表明し、主財源として社会保険料の引き上げを主張しました。また「消費税には逆進性(所得が低いほ ど、所得に占める負担割合が重くなる)があるが、入ってきた消費税を全部社会保障に使えば、低所得者にとってプラスになる。消費税を社会保障に使うならい いという考え方もある」と述べました。
 また、小泉首相(当時)が二年前、経済財政諮問会議で「歳出削減をやればやるほど国民や野党からやめてほしいという声が出てくる。増税してもいいから必 要な施策をやってくれという声がでるまで、歳出を徹底的にカットしなければならない」と述べたことを紹介すると、会場には驚きが広がりました。

医療ルネッサンスを

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再生プラン案パンフご希望の方は全日本民医連(03-5842-6451)か各県民医連まで

 終わりに堀毛さんは、「日本中の医者が医師になった初心に立ち返り、日本の医療をどうしたらいいのか考えてほしい。単なる再生ではなく、いまの日本の医 療界がもっている悪しき伝統や弱点も克服していきたい。これは医療ルネッサンス。その第一歩がきょう踏み出された」と。
 「刺激的だった」「なぜ再生プランが『案』なのかわかった」「さまざまな立場の話が聞けて、興味深かった」などの感想が寄せられたシンポジウムになりました。
 全日本民医連事務局長の長瀬文雄さんは「内輪だけで気勢をあげるのではなく、開かれたシンポジウムになったのでは」と語りました。
 「自由な議論ができ、問題提起もしてもらいました。権丈先生にも『近年まれに見る感じのよいものだった』といっていただいています。今後もさまざまな立 場の人から意見や協力をもらい、再生プランを練っていきたい」と長瀬さん。
 議論のようすを伝えた介護業界紙「シルバー新報」(八月八日付)は、「(権丈氏に)手加減なく叩かれた民医連だが、表情はスッキリしたもの。『医療は、 必要度に応じて配分すべきという立場は共通』と権丈氏に今後も協力を求めた」と。
 「私たちのシンポジウムはたたかうシンポジウム。こういう集まりを医師会ほか、広範な人を招いて全国各地で起こす運動ができれば、社会は変わる。“絶対あきらめない”運動が大切です」と長瀬さんは力を込めました。
文・多田重正記者/写真・酒井猛

いつでも元気 2008.10 No.204