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いつでも元気

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後期高齢者医療制度 後期高齢者医療制度 10月から入院患者追い出しが加速 衆議院で廃止法案の審議を必ず

ウソ・手直し繰り返す政府

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国民のたたかいが、政府を追いつめている(5月14日、国会・議員会館前。撮影=五味明憲)

 悪評高い後期高齢者医療制度ですが、政府は「制度の根幹は間違っていない」といい張っていま す。六月二八日には「長寿医療制度について、改めてご説明させて下さい」と題した全面広告を主要全国紙すべてに掲載。二億円以上のお金を使っています。七 月には同じタイトルで問答集(Q&A)を厚生労働省のホームページ上で公開しました。
 厚労省は「今までと同じように、また今まで以上に多様な種類の医療が受けられます」「長寿医療制度と医療費の適正化は、つながっていない」といいきります。しかしこれは、明らかなウソです。

脳卒中、認知症の障害者が

 ことし一〇月から、高齢者追い出しの制度が本格的に始まります。それが「後期高齢者特定入院基本料」。一般病棟や障害者病棟などで七五歳以上の患者の入 院日数が九〇日を超えると、病院の収入が減らされます。手厚い治療やケアの必要な患者(注)、寝たきりの重度障害者などが対象。四月から始まっていました が、「脳卒中」「認知症」の重度障害者は対象からはずされていました。それがこの一〇月から「特定入院基本料」の対象にされます。
 この「特定入院基本料」のとりわけひどい点は、必要な医療をしてもほとんど病院の収入にならない「定額制」だという点。「特定入院基本料が適用されれ ば、七四歳以下の人と比べて病院の収入はどの病院でも半分以下になるでしょう」と話す、全日本民医連・長瀬文雄事務局長。
 「脳卒中や認知症で寝たきりなどの重い障害を持った入院患者さんはたくさんいます。かなりの数の高齢者が病院から追い出され、行き場がなくなるのではないでしょうか。とんでもないことです」
 問題は他にも。一般病棟では一九日、二一日など入院の平均在院日数を短く保たなければ病院の一般病棟全体の収入が減るしくみがありますが、九〇日を超え た入院患者は平均日数の計算対象から除いてよいことになっています。ところが「特定入院基本料」の対象患者は計算にふくめることに。病院経営を追い込むこ とで高齢者を病院から追い出そうという露骨な手法です。これが年齢差別でなくて何なのか、この点こそ政府には「ご説明」いただきたい。制度と「医療費の適 正化」はしっかりと「つながって」います。

国民の力で「風」を起こそう

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後期高齢者医療制度の不服審査請求書を集団提出後、報道陣の質問にこたえる参加者(5月31日、北海道=提供・北海道民医連新聞)。7月10日現在、不服審査請求は全国で3300人を超えた

 六月に閉会した国会では、参議院で制度の廃止を求める法案が四野党(民主・共産・社民・国民新党)合同で提出され、可決されました。ところが衆議院に法案がまわったとたん、共産党以外の野党が審議を拒否してしまいました。
 この事態をどう見たらよいのか。長瀬さんは「たとえるなら、審議を拒否している野党は『グライダー』なのです」と。
 「『風』が吹かなくなると、落っこちてしまう。ですから、私たち国民の力で、『風』をもっと吹かせることが重要です」
 もともとすべての野党が制度反対をつらぬいてきたわけではありません。二〇〇〇年一一月の健康保険法改悪の際、高齢者医療を他の医療保険制度と分けるこ とを含む付帯決議に、民主・社民は賛成。両党は二〇〇六年にも後期高齢者医療制度の採決では反対する一方、制度の準備内容をふくむ付帯決議に賛成しまし た。
 しかし昨年七月の参議院選挙の結果が状況を変えました。大敗した与党はもちろん、議席の過半数をしめた野党も、自分たちを後押しした「生活を何とかしてほしい」という世論や制度反対の運動を無視できなくなったのです。
 ところが国会終了後、「制度廃止は無責任だ」という与党の「批判」に、「『制度廃止』を声高に叫ぶだけの野党も無責任のそしりを免れません」と自ら述べる野党議員も出ています。「こうした野党を正すとりくみが求められています」と長瀬さん。
 秋の国会へ向け、全日本民医連は廃止法案を衆議院で審議・採択するよう求める署名(一点署名)にとりくんでいます。

たたかいの“アツい”夏に

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廃止法案の衆議院での審議・採択を求める「一点署名」

 政府がウソや手直しを繰り返すのは、国民の批判をかわしきれずに追いつめられていることの証でもあります。
 四月には、衆議院山口二区補選で与党が敗北。六月にも沖縄県議会議員選挙で一六年ぶりに野党が議席の過半数を占め、七月には県議会で後期高齢者医療制度反対の決議が採択されました。
 この夏を「夏休み」でなく、たたかいのアツい夏に。廃止法案の衆議院での審議、制度の廃止を求めて、たたかいの輪を広げるときです。 文・多田重正記者

【追記】「九〇日超の診療報酬減額」について大きな批判を受け、与党は八月五日、一部見直しの方針を出した。

(注)多発性硬化症・重症筋無力症・パーキンソン病などの難病、絶対安静が必要、重篤な副作用の恐れがあるがん治療中、重度の意識障害、人工呼吸器を使用、頻繁に喀痰吸引が必要、リハビリ(一八〇日が上限)を実施、など。

 

いつでも元気 2008.9 No.203