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いつでも元気

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地球温暖化を止めよう(4) 低炭素社会に向かう 世界をリード───ドイツ

■ブッシュ大統領を“一喝”

筆者:和田武(わだ・たけし)
 1941年和歌山生まれ。立命館大学産業社会学部元教授。専門は環境保全論、再生可能エネルギー論。「自然エネルギー市民の会」代表、自治体の環境アド バイザーなど。著書に『新・地球環境論』『地球環境問題入門』『市民・地域が進める地球温暖化防止』『飛躍するドイツの再生可能エネルギー』(世界思想社 6月刊)など多数。

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 世界の温暖化対策を語るとき、ドイツ抜きでははじまりません。最近、ブッシュ大統領が発表した 温室効果ガス削減の中期計画(2025年まで排出量を増やし続けるという驚くべき内容)に対し、ドイツの環境大臣は「ネアンデルタール人の演説だ」と、す ぐさま批判していました。「温暖化防止の努力を強める世界の流れに背を向ける中身だ。時代錯誤もはなはだしい」という強い抗議です。
 アメリカの大統領にここまで堂々と発言できるのもドイツ政府が国をあげて、低炭素社会に変わろうと努力している自負があるからだと思います。

■エネルギー戦略で大きな進歩

 ドイツは排出するCO2の量を05年時点で18・7%も減らしています(90年比)。EUが京都議定書で求められた削減量は8%で、EU内のドイツの割り当てはマイナス21%です。この勢いなら達成はほぼ間違いありません。
 この成果は、政府のエネルギー戦略にあります。CO2の削減目標を中・長期のスパンで掲げました。2020年までに40%、50年までに80%減らす(90年比)。そしてその実現のための施策をうちたてています。
 まず環境税。化石燃料と電力消費に課税します。税収の使い方がユニークで、社会保険料の引き下げと再生可能エネルギー普及への助成にあてています。
そして、風力や太陽光、バイオマスなどの再生可能エネルギーの積極的な導入です。2030年までに電気の45%を、再生可能エネルギー発電で賄えるようめざしています()。

ドイツがめざす持続可能な
エネルギーシナリオ

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ドイツの自然エネルギー発電量ののび
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 推進の起爆剤は「再生可能エネルギー法」(00年施行、04年改正)です。自然エネルギーで発電した電力を電力会社が20年間固定価格で買い取り、発電の必要経費を補償するしくみです。デンマークの経験と同じく、損さえしなければ、環境のために行動する人が増えます。
こうした法整備で市民主導での大規模な太陽光発電所、風力発電所も次々生まれ、関連産業も成長しています。
  結果、水力をのぞいた自然エネルギー発電量は06年には90年比で3.5倍と急上昇。再生可能エネルギーの普及により削減できたCO2は1億㌧を超えまし た。なお、電力消費量に占める再生可能エネルギーの発電量の割合が07年に14%を超え「2010年までに12.5%」と設定していた目標を早期達成した ことも最新の政府発表で明らかになりました。
加えて注目すべきは、原発をCO2削減の手段にしていないこと。段階的に廃止する方針で、90年に27基あった原発を現在17基に減らし、2020年頃に 全廃予定。原発に頼らなくてもCO2を減らせて、電力供給も十分できているのです(日本は40基から55基に増やしたが、CO2を減らすどころか増やし た)。多くのドイツ人が、温暖化と原発事故という2つの危険を回避できる施策を歓迎しています。


■自然エネルギーで再生した寒村

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草原太陽光発電。緯度が高く太陽光の弱いドイツで懸命の努力が

 再生可能エネルギーへのとりくみが、雇用を生みだし、冷えこんだ地域をよみがえらせている例も少なくありません。関連産業で創出した雇用は23万人。
 たとえばドイツ北西端にある71戸・185人の小さな村。旧東ドイツやポーランドの難民が多く移住してきた干拓地です。小麦や菜種、羊牧などの農業が主 流ですが、強風で寒さも厳しく、離農する人もある、まさに「寒村」でした。
 それがいま、74基の風力発電機が設置され、年間4.3万戸分(平均家庭で換算)の発電量にあたる電力を供給するまでに。電力を売って得る年間収入は農 業収入と匹敵するまでになりました。風力発電に積極的に参加する若者たちが増え、農業の後継者難も解消しました。村の財政も発電所からの税金で改善され て、風力発電に参加していない村民にも、住民サービスの充実という恩恵がゆくようになりました。
 市民発電所で地域が変わりました。ほかにも、太陽光やバイオマスなど、その地域の特性を生かしながら、たくさんの努力がつづけられています。
 空き地や牧草地にズラリと太陽光発電、丘に並ぶ風車…この風景から温暖化対策に懸命にとりくむドイツの人たちの姿がみえて、私は感動さえ覚えます。

■「不可避の課題」を「チャンス」に

 07年9月、ドイツのメルケル首相が日本で講演しました。温暖化が一刻の猶予もならない事態にあるとふれながら、EUは20年までに20%削減をめざす と語りました。そして「CO2排出を抑える技術はある。ほかのプレーヤー(国)もいっしょにとりくめば30%減も可能、日本もがんばろう。これは課題だが チャンスでもある」とよびかけました。
 ドイツでの実践は、今が社会のよりよい発展のための大きなチャンスだと教えてくれています。日本も学ばなければ!
次回は、「環境と平和の深い関係」

ミニ解説

京都議定書…1997年、地球温暖化防止京 都会議(COP3)で議決。CO2排出量が平均以上の国には、温室効果ガスを2008年から2012年まで、90年の排出量を基準に何%減らすかの具体的 な目標が課せられた。日本の義務はマイナス6%だが現状は+6.9%。アメリカは議定書から離脱し+16%、カナダは+25%と大幅に増やし、07年に 「不可能」を宣言。EUは2%減(05年データ)

再生可能エネルギー(自然エネルギー)…限 りある化石燃料や原子力に対し、太陽や地球が生み出すエネルギーの総称。太陽光・熱、水力や風力、バイオマス、地熱、波力、雪氷冷熱などを利用したCO2 を出さないエネルギーで枯渇しない。太陽が地球に与えるエネルギー量だけでも世界のエネルギー利用量に匹敵するほど資源は豊富だ。

再生可能エネルギー法…自然エネルギー発電 電力を固定価格で長期間(ほとんどが20年間)電力会社が買い取ることで、発電設備所有者の総経費が十分賄えるようにした法律。これで、市民を含む多様な 主体が自然エネルギー発電を導入できることに。買い取り財源は電気料金に約3%上乗せして捻出。なお日本では、電力料金の2%弱が主に原発推進用の電源開 発促進税として徴収されている。

ドイツの再生可能エネルギーの現状…07年発電量は前年比で13%増えて2220億㌔㍗時になり、電力消費量に占める割合が14.2%に達した。2000年の6%から倍以上の伸び。

一次エネルギー…資源としてのエネルギーを 指す。石油や石炭、天然ガス、原子力、水・風力、太陽、地熱など。この一次エネルギーを変換・加工して得る電気や灯油、ガソリン、都市ガスなどの二次エネ ルギーを、家庭や工場などで使うことが「最終エネルギー消費」。なお、二次エネルギー生産や最終エネルギー消費の際、環境中に放散するなどでロスが多い。 そこを減らせば、使うエネルギーは減らさず一次エネルギーを減らすことも可能。

いつでも元気 2008.7 No.201