• メールロゴ
  • Xロゴ
  • フェイスブックロゴ
  • 動画ロゴ
  • TikTokロゴ

いつでも元気

いつでも元気

後期高齢者医療制度 STOP! よくも名付けた“長寿医療制度”! 後期高齢者医療制度 全国で怒りの声、沸騰中

genki200_05_01
中野駅前での宣伝行動(健友会、東京医療問題研究所、中野・杉並健康友の会)

 四月から始まったばかりの後期高齢者医療制度ですが、全国で怒りの声がわき起こっています。
 保険料が初めて年金から天引きされた四月一五日、東京・中野駅前でおこなわれた健友会友の会の宣伝にも「手元に残る年金はほとんどない。主人が死んだら 私は生活できない」などの声が次々。八六歳女性は「二カ月で九万七〇〇〇円だった年金が八万五〇〇〇円に。天引きで一万二〇〇〇円も減った」と。
 「区の制度説明会でも非難ごうごうですよ」と話すのは、健友会組織部次長の塚本晴彦さんです。「中野区は四月に入り、ようやく各地域の公民館で制度説明 会を開きました。『制度が始まった後になって説明会とはどういうことだ』『納得いかない。誰が決めたんだ!』などの声でいっぱいです」

保険料は天引き 医療は抑制

 東京都立川市に住む進藤康賢さん(81)は夫婦二人ぐらしで、昨年の国民健康保険料は二人で一五万九六〇〇円でした。後期高齢者医療制度で康賢さんの保 険料は年九万六六〇〇円に。妻(69)は引き続き国保料を払い、その額は推定(七月に確定)で約七万六〇〇〇円になる見込み。夫婦合計で約一七万二六〇〇 円になり、昨年度より一万三〇〇〇円アップ。
 康賢さんの介護保険料は六万三六〇〇円で、医療・介護合わせて一六万二〇〇円の保険料が年金から天引きされます。
 「問題は強制的に天引きにしながら医療は抑制し、療養病床は二三万床も削減しようとしていること。これでは高齢者は正に崖っぷちに追い込まれることになる。高齢者の怒りはここにある」と進藤さんはいいます。

「納得いかない。誰が決めたんだ!」

苦しいいい訳をする政府

 高まるばかりの国民の怒りを前に、始まった日に福田首相は名称変更を指示。しかし「長寿医療制度」と呼び方を変えたものの、制度の中身には指一本ふれず、苦しいいい訳をはじめました。
 「(保険料は)七~八割の人は安くなる」と舛添厚労相。ところが国保より保険料が上がる試算をしめした小池晃議員の追及に舛添氏は「正確なところはわからない」と、自らの説明に根拠がなかったと認めました(四月一七日、参院厚労委)。
 「保険証が本人に届かない」トラブルも。大阪府では一万六〇〇〇件の保険証が届かず返送されました。保険証は小さくて薄く、「これが本当に保険証なの か」との声も。「保険証と気づかず捨てた」などのトラブルもあいつぎ、少なくとも五万八六〇七枚の保険証が再発行されました(四月一一日現在、共同通信調 べ)。二~三月に死亡した人から保険料を天引きするトラブルまで起きています。

年齢差別に不服申し立て

genki200_05_02
保険料を滞納すれば、保険証を取り上げることをわざわざ強調(後期高齢者医療制度の保険証裏面=奈良)

 「政府は準備不足、説明不足だったという。よくもぬけぬけといえるものです」と進藤さん。「本気で反省しているのなら、天引きをやめ、制度そのものを廃止すべきだ」と力を込めます。
 後期高齢者医療制度の中止撤回のとりくみは、党派を超えて広がっています。民主党、共産党、社民党、国民新党は三月の集会に続き、四月一四日、東京・巣鴨で合同の街頭演説会をおこないました。
 全日本民医連は、制度の中止までたたかう方針。七五歳以上を対象に四月~五月で五〇〇〇件のアンケート調査、相談・署名活動にとりくんでいます。
 後期高齢者医療制度への強制加入・保険料決定に対する「不服審査請求」(注)のとりくみも始まりました。石川県では高齢者七〇人が、勝手に「後期高齢 者」と呼ぶことや年齢で差別することは憲法違反であり、本人の承認なしに保険料を天引きするなと抗議。県後期高齢者医療審査会に審査請求書を提出しまし た。
 山形市で四月二〇日、無理心中をはかったと見られる五八歳の息子と八七歳の母親が遺体で発見されました。母親は認知症で介護が必要でした。息子は生前、 「母親の年金から保険料が天引きになり、生活が大変」と周囲にもらしていたそうです。長生きを罰するようなこの制度こそ、長生きさせてはなりません。
文・多田重正記者

(注)「行政不服審査法」に基づき、「処分があったことを知った日の翌日から起算して六〇日以内」におこなうことができます。

姥捨て山制度はボイコットです

青森市医師会
齊藤 勝 会長にきく

 地域の医師たちの間からも後期高齢者医療制度の内容には納得できない、と 「抵抗」が起こっている。制度の撤回署名をはじめたり、後期高齢者制度での診療報酬「後期高齢者診療料」は算定しない、とボイコットを申し合わせるなど、 その内容もただの態度表明にとどまらないのが特徴だ。
 「医療費抑制のために、七五歳以上の高齢者を粗診粗療ですます、うば捨て山政策」と異議を唱え、全国でまっ先に後期高齢者診療料を算定しないよう呼びか けた地域医師会が青森市医師会だ。「後期高齢者医療制度を骨抜きに」「どなたも抜け駆けせぬよう」と、会員あての連絡書面からは、怒りや決意が伝わってく る。同会の齊勝会長にきいた。

やむにやまれぬ気持ちで

genki200_05_03
1970年から青森市内で内科小児科医院を開業。2000年から青森市医師会長、日本医師会代議員 、青森県医師会理事

 七五歳で医療の内容を線引きするなんて、成り立つはずがないんです。呼びかけに踏み切ったのは「ここで日本の国民皆保険制度の崩壊を止めなければ。悪い流れの芽を摘まなければ」と、やむにやまれぬ気持ちからなのです。
 患者さんの負担増も大きいです。青森の年金の平均は月四万円ほど。この額から天引きで高齢者に保険料を強いていいのか。どう生活していけというのか…制 度開始前にはあまりピンときていなかった患者さんたちも傷ついています。
 このたび設けられた七五歳以上の患者さんむけの「後期高齢者診療料」。外来の保険診療で糖尿病や高血圧、などの慢性疾患(注)の患者さんの医学管理や検 査、処置、画像診断などの費用を月六〇〇〇円でひとくくりにしたものです。
 「これには乗らない」というのが私たちの申し合わせです。制度に問題はたくさんあるが、今回はここに集中した方が効果がある、と呼びかけました。

注:糖尿病、甲状腺障害、脂質異常症、高血圧系疾患、不整脈、心不全、脳血管疾患、ぜんそく、気管支拡張症、結核、胃潰瘍、アルコール性慢性膵炎、認知症


「粗診粗療」につながる

 この月六〇〇〇円の医療で収まる高齢者は少ないのです。たとえば心筋梗塞や脳梗塞があるため血液を固まりにくくするお薬が出ている患者さんなどは、毎月血液検査が必要ですが、その検査だけで六〇〇〇円を超えてしまいます。
 ましてや高齢者は急性症状をおこしやすい。それに応じて必要な検査をしても、六〇〇〇円は超えるでしょう。診療報酬にこういう上限を設けることで、七五 歳以上の患者さんの医療が制限される恐れがある。必要な医療や検査が十分できず、医療の質が落ちる、「粗診粗療」の恐れがあるのです。

「一人の医師が管理せよ」の矛盾

 また、この保険料の算定ができるのは、主治医と決めた医師一人だけです。
 しかし、高齢者は多様な病気をもっています。医療も病気別に専門分野があり、一人の主治医が病気を管理するのは難しい。これまでつくられてきた地域の医療連携が崩壊する危険性もあります。
 開業医や勤務医、会員は約四〇〇人いますが、その中で「呼びかけを支持する」という声はいただきましたが、異論や反対は出ていません。

患者さんも医師もたいへんな目に

 診療報酬の引き下げや、リハビリ制限、療養病床の大幅削減の方針など諸制度の改悪で、医師も患者さんも、この間厚労省にはたいへんな目にあってきました。私たちの会員の中にも療養病床のベッド削減の影響を受け、残念ながら倒産してしまった病院があります。
 はじめは聞こえのよい口実を出すが、最後まで責任は持たない。制度の作り手のこんな姿勢に、憤りを感じていますし、この後期高齢者医療制度も、今以上に 悪くされるのは見えています。今回は七五歳以上に狙いが定められましたが、やがてこれを全世代の医療抑制にもつなげようというのは明白。必要な医療は保険 ですべてみる、というしくみが脅かされている時だと思います。
 全国の医師会の集まりなどでも、「いままでどおり、自民党の一党支持を続けていていいのか?」という問題提起をする人も出てきています。
 「長寿医療制度」に呼称を変えるとは、ますます腹立たしいですね。国民が怒るのは制度に問題があるから。なのに肝心の内容には踏み込まず、名前だけ変えるなんて。 文と写真・木下直子記者

地域医師会でひろがる反対表明

genki200_05_04 青森市医師会のように反対を表明している地域の医師会は、開業医団体である全国保団連に寄せられているだけでも30カ所ちかくにのぼり(4月19日現在)、うち県医師会レベルの呼びかけが18府県と目立っている。
 医師会の全国会議で代議員が「長寿どころか、命を縮める制度。日本医師会は後期高齢者医療制度をつぶしにいく覚悟はあるのか」と、執行部を問いただす一幕も。
 写真は茨城県医師会が作ったポスターだ。同医師会は「高齢者の生活は社会がささえなければらない」「このような政策は文化国家政府に許される行為ではな い」と、「断固反対」を表明。会員には診療料の届け出をしないこと、あわせて、医師が診療料の届け出に必要な研修会もおこなわない。制度撤回を求める署名 運動も展開中。
 なお、全日本民医連も算定をみあわせる呼びかけを、加盟事業所におこなっている。

 

いつでも元気 2008.6 No.200