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いつでも元気

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特集1 憲法を武器に税金の使い方正そう 医療・介護制度の再生プランを準備 全日本民医連 長瀬文雄事務局長に聞く

 貧困と格差が広がり、医療・介護の充実は緊急の課題です。全日本民医連は「医療・介護制度の再生プラン」をつくって憲法を国家 財政に生かす道を提案し、国民に問いかけようと、三月に開かれる民医連総会に向け準備をしています。全日本民医連の長瀬文雄事務局長に聞きました。

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長瀬文雄事務局長

 ―民医連の「医療・介護制度の再建プラン」の中心点は何ですか。
 長瀬
 人間は誰でも人生の中でさまざまなできごとに出会いますね。産まれ、育ち、結婚し、失業や転職、病気になったり高齢にもなる。これらを社会で支えようというのが、憲法の理念です。
 この憲法の理念を武器にして国のお金の使い方を正すというのが「再生プラン」です。医療・介護は「崩壊」ということばが使われるほどたいへんな状況に なっていますが、国のやり方を批判するだけでなく再生案を提示する。かなりふみ込んだ提案をします。ムダは山ほどあるし、税金の使い方・とり方を民主的に 変えるだけで財源は生まれます。
 医療でわかりやすいのは、心臓ペースメーカーです。同じアメリカ製のペースメーカーなのに、アメリカでは八三万円のものを、日本では最大一三三万円の高値で買わされたりしているんです(表1)。アメリカに「高く買ってくれ」といわれて受け入れているのです。
 輸入医療材料、輸入医薬品で日本と外国の格差をなくし、大もうけしている日本の製薬企業の薬価を見直せば、医療費にかかる予算を一兆円は節約できます。
 また、ジェネリック薬品(特許期限切れの薬を他社が製造したもの)を使えば、医療費は節約できます。たとえば高脂血症のメバロチン錠(5mg)という薬 は、一錠六八・九円です。しかしこの薬のジェネリック薬品にはいちばん安いもので二一・四円のものまであり、三分の一以下に安くなるわけです。
 医療保険に占める事業主負担をもっと増やすことも必要です。医療や年金など社会保険料の事業主負担率は、日本は一一・二七%。フランスは三一・九七% で、ドイツだって二一・二五%、日本の二倍です。ドイツ並みの水準に引き上げれば、七〇〇〇億円の財源が生まれます。

 

 

日 本

アメリカ

韓 国

ペース
メーカー

シングル
チャンバ(Ⅱ型)

119~133

83.2

49.4~54.9

 

デュアル
チャンバ(Ⅳ型)

127~147

95.3

64~71.2

PTCA
カテーテル

一般型

15.1~17.2

7.1

10.2~11.9

(注)公正取引委員会:医療機器の流通実態に関する調査報告書(3)と季刊『イザイ』第5号(4)より

 

国民生活を豊かにしてこそ

図1 社会保障給付費の国際比較(対GDP比)
今後「高齢者が増えても社会保障費は増やさない」と厚労省
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図2 広がる格差
大企業や資産家の収入は増え、庶民は減る一方
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 長瀬 大企業はバブルの最盛期の二倍、過去最高の利益を上げています。自民党はこれまで企業が繁栄すれば労働者の賃金も上がるといってきました。しかしこの五年間、大企業の役員報酬、株主配当は上がっているのに、労働者の賃金は下がりつづけています(図2)。だぶついたマネーがホリエモンや村上ファンドを生み、投機に走る傾向を加速させ、経済を不安定にしています。
 大企業の税負担は軽くし、国民には負担、痛みを押しつける。税金のムダ遣いにはほとんど手をつけない。これが小泉内閣以来の構造改革路線の本質です。
 国民の目線で見れば、一人ひとりの生活をより豊かなものにしてこそ、日本の経済も活性化します。医療・介護にお金をまわせば間違いなく雇用も増え、患 者・利用者も助かる。消費も増え、町は潤う。こういう視点が大事だと思います。

予算案を国民の目で見ると

 ―二〇〇八年度の予算案は、どう見たらいいのでしょう。
 長瀬
 わかりやすいのは、社会保障費です。社会保障費の自然増を毎年二二〇〇億円削っている。小泉内閣以来の方針ですが、福田内閣も同じです(図3)
 高齢者が増えているのですから、社会保障費が増えるのは当然で、自然増削減は舛添厚労大臣も「限界に来ている」と認めざるをえない。そこで政府が持ち出 しているのが消費税増税です。福田首相は「〇八年は消費税は上げない」といいますが、逆にいえば「〇九年には消費税を上げたい」といっているようなもので す。

図3 小泉内閣以来の社会保障費の伸びの抑制額
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 予算案を発表した額賀財務大臣も「税制改革への橋渡し」の予算案だといっています。政府が消費税増税をねらっているのは明らかでしょう。「社会保障はもう削れない。消費税を上げないとダメだ」という世論誘導がありありです。
 ごまかしもたくさんあります。たとえばいま医師不足が問題になっています。そこで医療保険から医療機関に支払われる診療報酬を〇・三八%と、ほんの少し 上げる。その財源には、生活保護の母子加算の五〇億円削減が入っているのです。これではうれしくも何ともありません。国民を分断するもので、言語道断で す。

米兵に7000万の豪邸?

 ―ムダ遣いはどうなっていますか。
 長瀬
 軍事費ではアメリカへの「思いやり予算」を続けます。七八年から始まったものですが、出さないといけない法的根拠はありません。日本が勝手に「思いやり」で駐日米軍に出しています。
 実はこの「思いやり予算」の約束の期限が、ことし三月で切れます。それなのに、今回の予算案に入っているのです。
 駐日米軍のグアムへの移転費用も、最終的に日本が七〇〇〇億円も出すことが決まっています。そして米兵一世帯あたり七〇〇〇万円もする住宅をつくる。米兵に豪邸をつくってどうするのか。しかも全部日本の国民の税金です。
 公共事業を減らしたといっていますが、減らすのは特別養護老人ホームの建設や老朽化した学校の補修など、生活に密着した公共事業です。こういう公共事業は〇二年度と比べて三割もカットし、ムダな大型開発は続けています。
 道路特定財源も一般財源にせず、全部道路開発で使い切る。道路特定財源に使ってきたガソリン税の暫定税率もこの三月で期限が切れますが、福田内閣はつづ けようとしています。この暫定税率をやめるとガソリンが一リットルあたり約一五〇円から約一二五円になるといわれています。

正義のたたかいが社会を動かす

4分の1が生活保護基準以下

図4 在日米軍再編にはお金を出し生活保護
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 長瀬 一方、国内で広がっている貧困には何ら具体策がありません。「ネットカフェ難民」が問題になっていますが、米兵の豪邸よりも日本国民に住宅を保障しろ、といいたい。
いま派遣労働者は痛めつけられています。たとえばこんな広告もあります。
 「無料お試しキャンペーン実施中! 一週間無料、一カ月三五%OFF、三カ月一五%OFF」
 健康食品の宣伝かと思うでしょう。ところが人材派遣会社の広告なのです。
 ―まるで労働者をモノ扱いですね。
長瀬 人間の尊厳を尊重する意思が、かけらも感じられません。
 いま、働いていても生活保護基準以下の収入にしかならない人たちが六五〇万世帯もあります。全世帯では約四世帯に一世帯が生活保護、または生活保護基準以下です。
 ところが低い方を引き上げるのではなく、生活保護の老齢加算を削った。老齢加算削減でたとえば月九万円で暮らしていた高齢者が、七万円で暮らさなければ いけなくなりました。この影響を民医連のソーシャルワーカー委員会が調査しましたが、一年間に服を一枚も買っていない人が四割もいました。下着すら買え ず、ゴムがゆるんでも直せない、縄やヒモでしばっている人もいました。冠婚葬祭にまったく行かないという人が半数以上もいました。驚くべき結果です。
 新日本婦人の会の調査によれば、母子世帯の過半数が年収二〇〇万円以下。ダブルワークをしている人が一二%いるそうです。昼間働いて、子どもを寝かしつ けて、夜も働きに出る。こういう世帯から国は児童扶養手当まで削減しようとしています。
 貧困に陥ったとき、はい上がる手だてが何もない。日本のセーフティーネットは、一度落ちたらはい上がれない「底抜け」状態になりつつあります。

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表3 無駄な軍事費(例)

「思いやり予算」 2083億円(08年度)
在日米兵の住居、ボーリング場、プールまで建設。水光熱費も負担
「ミサイル防衛」システム 1714億円(08年度)
アメリカの先制攻撃戦略に協力。これまでの経費と合計で7347億円に
在日米軍再編経費 522億円(08年度)
総額は3兆円になる見込み
イージス艦 1隻1000億円~1400億円
これまでに5隻(6隻目は2008年3月完成予定)購入。対ソ連戦を想定したものだったが、1隻目の完成時(93年)にはソ連が崩壊していた。それでも購入は止めない

 

心ひとつに手をつないで

 ―貧困と格差の解消は、急務ですね。
 長瀬
 心をひとつに手をつなぎ、たたかえば社会を変えられる。ここに確信を持ってたたかうことが大事です。
 二〇〇八年は希望の年にしなければなりません。薬害肝炎訴訟では原告団が粘り強くたたかいました。三五〇万人といわれる全被害者を救済せよ、国・企業の 責任を明確にして謝罪してほしいと正面から訴え、たたかいぬきました。人間の尊厳をかけた正義のたたかいが国民の心をゆさぶり、救済法を確立させました。
 ことし一月一三日にも、医療崩壊を解決しようと勤務医たちが立ち上がり、「全国医師連盟」の設立準備委員会総決起集会を開きました。新しい動きです。
 私たちもがんばりどきです。民医連や共同組織も、何のために存在しているのか常に意識する必要があると思います。
 地域の役に立ち、困難な人たちに寄り添い、どう力を発揮するか。孤独死を防ぐ見守りや相談活動など社会的連帯で苦難を乗り越える活動とともに、憲法の理念が生かされる政治を実現するためがんばりたいと思います。
聞き手・多田重正記者

いつでも元気 2008.3 No.197