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いつでも元気

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(得)けんこう教室 ヒブワクチンの公的接種を 細菌性髄膜炎から子どもを守ろう

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武内 一
細菌性髄膜炎から子どもたちを守る会 副代表
大阪・耳原総合病院小児科

 1月号で細菌性髄膜炎についてご紹介し、「ヒブワクチンの1日も早い導入を」と書きました。その直後、今年1月下旬にヒブワクチンが承認され、公的接種を求める運動も節目を迎えました。

 ワクチンで防げる感染症「細菌性(化膿性)髄膜炎」は、髄膜という脳や脊髄をお おっている膜の内側に細菌が入りこんで炎症をおこす病気です。脳をつつむ大切な場所におこる感染症なので、治療が遅れると知的な障害や手足のまひなどの後 遺症が残ったり、重症になるといのちにもかかわるとてもコワイ病気です。 
 この細菌性髄膜炎の原因になる細菌の代表が、「Hib(ヒブ)」と「肺炎球菌」です。年間1000人近い子どもたちが細菌性髄膜炎に感染していると推定 されていますが、接種すればこの病気にかからないですむワクチンがあるのです。でも日本では、まだ接種できません。
 世界では常識となっているこのワクチン接種を早く日本でもできるようにしてほしい、それもお金の心配をしないですむ定期接種で!…という患者家族の願い から「細菌性髄膜炎から子どもたちを守る会」が昨年発足。今年4月16日には、約6万筆の署名をもって厚労省へ請願に行ってきました。
 請願事項は3点、(1)すでに承認済みのヒブワクチンを1日も早く導入する、(2)現在治験中の肺炎球菌7価ワクチンを1日も早く承認し導入する、 (3)2つのワクチンを予防接種法で「定期接種」に位置づける、です。
 請願の当日はNHK夜9時の全国ニュースでも取り上げられました。会の代表の田中美紀さんと息子の世生くんにスポットが当てられ、「髄膜炎から子どもた ちを守るため、親たちが立ち上がった!」と大きく紹介されました。多くの方々が、髄膜炎を予防できるワクチンの存在を知る、初めてのテレビ報道でした。

発生総数も不明の厚労省

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4月16日、6万筆の署名をもって厚労省に入る(左から)田中代表、武内医師ら

 厚労省では5人の課長補佐、係長、予防接種専門官が応対しました。
 請願の(1)に関しては、「メーカーへ供給を急ぐなど、少しでも早められるようにとは思っている」との返事でした。(2)の肺炎球菌ワクチンについて は、「現在、臨床治験データを集めている段階。ヒブワクチンほど時間がかからないように努力したい」と。(3)の定期接種については、「他のワクチン同 様、専門家と相談しワクチンの効果を確認する必要がある。データが明らかになった時点で、導入が検討できるようになるが、その時期は未定」との回答でし た。
 また、今後ヒブワクチンの任意接種(希望者に接種)が始まった場合、各自治体それぞれの判断で費用負担を検討することは構わないとのことでした。細菌性 髄膜炎の発生数は、「感染症新法」で定められた一部の医療機関の報告では、年間250~300件とのこと。それは全国で何件の発生に相当するのか? と尋 ねたところ、残念ながら回答はありませんでした。
 厚労省の担当者からは、きちんと話を聞く姿勢は感じられましたが、回答は具体性に乏しいものがほとんどでした。

日本で導入が遅れているのは
 日本は医療では先進的な国だと思っていたのに、ワクチンの導入では著しく遅れをとっている、この現実をどのように理解したらいいのでしょうか。5つあげてみたいと思います。
 (1)ヒブなどの細菌性髄膜炎の発生総数を把握するシステムがない、(2)その結果、 ヒブ髄膜炎がどのくらい発生しているかわからず、病気の理解が進まないまま今日に至っている、(3)医薬品の許認可業務にたずさわる国の外郭団体に、ワク チン専門家が極端に少ない、(4)海外のワクチン事情の変化に対応せず、国産以外のワクチン導入に消極的であった、(5)政府は、ワクチンの副作用による 被害者に対して被害の立証を求め裁判で争い、またマスコミもワクチンの副作用の面をことさら大きく取り上げたため、社会全体にワクチンへの不信感がある、 です。
 わたしは、大切な子どもたちを髄膜炎から守るワクチン導入の機運が、これまで盛り上がってこなかったことが本当に残念でなりません。欧米では15年以上 前から、特にヒブワクチンは定期接種が実現していたからです。日本ではその間数千人がヒブ髄膜炎を発症し、亡くなった子どもたちは数百人と推定されます。

公的接種で地域を守る
 ヒブワクチン接種にいくらかかるか?まだはっきりとはわかっていませんが、卸値が5000円程度と予想されています。ワクチンメーカーの値下げ努力を期 待しますが、三種混合(DPT)予防接種と同じように任意接種で最初3回、追加1回の形でおこなうと、手技料などが加わり1回あたり7~8000円かか り、全体の費用が3万円前後になるかもしれません。個人で負担するにはかなり重いといえます。
 しかし、これらワクチンには、個人をヒブや肺炎球菌から守るだけではなく、保育所など地域にヒブや肺炎球菌が広がることを抑制するという大きな効果もあ ります。結果として不必要な抗菌薬の使用を抑え、薬が効かない耐性菌の増加も抑えられることが、海外で報告されています。すでにヒブワクチンは100カ国 以上で、肺炎球菌ワクチンも77カ国で承認されています。
 髄膜炎から子どもたちを守るワクチンを公費で定期接種に組み込んでほしい。いま私たち「守る会」も引きつづき国に働きかけています。

皆さんの声を「守る会」へ
 「細菌性髄膜炎から子どもたちを守る会」では、署名を届ける請願を終えて、今後の活動は皆さんからの声も聞きながらすすめていこうと思います。当事者の 声を伝える展示会や医療従事者の集まる学会で当事者の声を届ける取り組みなどを計画しています。
 ぜひ、会のホームページをあけてみてください。そして皆さんの声を「守る会」までお寄せください。

いつでも元気 2007.7 No.189