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いつでも元気

いつでも元気

特集1 全日本民医連が初の憲法闘争交流集会

草の根で広がる「9条の会」民医連・共同組織で1200以上も
「改憲手続き法」許すな!と多彩に

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「ちいちゃんのかげおくり」を朗読する市原悦子さん

 「“かげおくり”って遊びをちいちゃんに教えてくれたのは、お父さんでした…」
 市原悦子さんの朗読に会場は静まりかえります。お父さんは出征し、空襲でお母さん、お兄ちゃんとはぐれ、ひとりぽっちで息を引きとった女の子のお話「ち いちゃんのかげおくり」(あまんきみこ作)。あちこちから嗚咽がもれました。
 二月八日、全日本民医連は初の「事業所・職場憲法闘争交流集会」を開催しました。改憲をもくろむ政府与党が、五月三日までに国民投票法案を成立させよう というなか、最重要の課題として、憲法を守る大きなとりくみを、と開いたもの。
 学習講演は弁護士の坂本修さん(自由法曹団前団長)。「国民投票法」は改憲手続きの第一歩と、ユーモアを交えて熱く語りました。

 文化企画として、女優の市原悦子さんの朗読、シンガーソングライターのきたがわてつさんの歌とお話。デビュー以来三一年「日本国憲法前文」など、平和と憲法を歌い続ける、きたがわさんの熱い思いに大きな拍手が。
 長瀬文雄事務局長はこういいます。
 「全国の『九条の会』は一月末に六〇二〇に達したそうです。しかし民医連・共同組織の関係だけで、職種ごとや青年、地域、事業所などあわせて一二〇〇あ るんです。六〇二〇のなかに、これ全部はカウントされていないでしょう。ほかの分野でも同じだと思う。ほんとうに草の根でぐんぐん広がっています」
 午後は、各地のとりくみが報告され、学習・交流を深めました。参加者は一五〇人を超え、平和憲法を守り抜くたたかいに全力を尽くそうと確認しました。
写真・五味明憲

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平和への思いを語るきたがわてつさん  

国民投票法

改憲派が勝つための
3つの

坂本修さんの講演から
自由法曹団前団長

有権者の2割の賛成で“壊憲”?!

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イラスト・ 高村忠範

 自公政権は、憲法違反でもやれることは全部やり尽くしてきました。イラクに自衛隊も派兵した。 教育基本法も改悪し、共謀罪もつくろうとしている。しかし流血の戦場で米軍とともに武力行使することはどうしてもできない。私たちが護りぬいてきた非武 装・非戦の平和主義を明記した憲法九条があるからです。
 憲法は、戦争は「悪」だ、どんな矛盾があっても平和のなかで解決していこうといっています。戦争は国民総動員でなくてはできません。そこで彼らは、憲法 九条を抹殺し、「戦争をする国に国民をしばりつける『新憲法』」を数年のうちにつくろうとしています。
 手続き法を制定し、すぐ国会に憲法審査会をつくって、憲法をどう変えるかの審議を始める――これが手続き法の第一の柱です。
 第二の柱は、国民投票法で改憲派が勝つための「カラクリ」をつくることです。彼らは心配でしようがないのです。国民投票法には小選挙区制がない。死票が ない。九条の会は広がり、九条改憲については「反対六、賛成四」、しかも反対が増えてきている。負けたら大変だ、だからどう転んでも改憲派が勝てるカラク リをつくりたい。これが改憲派の本音です。そんな黒い目的でつくられていますから、法案の内容はみなさんが考える以上にひどいものになっています。

低い改憲のハードル

 主なカラクリをお話しましょう。
 第一のカラクリは、五人に一人の賛成でも改憲できるしくみをつくることです。日本国憲法第九六条には、憲法を変えるには国民の過半数の賛成が必要だと書 いてある。過半数といえば、本来は有権者の過半数でしょう。ところが自民党と民主党は総投票数のうち、無効票を除いた有効投票の過半数でいいという。
 仮に総投票数が有権者の四〇%だったとして、うち無効票が総投票数の一〇%あれば、残りは有権者の三六%になりますね。その過半数だと一八%余り、つまり五人に一人の賛成で改憲が成立するのです。
 デンマークでは全有権者の四〇%が賛成しなければ改憲は認められません。ですから総投票数が四〇%なら全員が賛成しなければ改憲できない。総投票数六〇%なら投票した人の七〇%が賛成しないといけません。
 日本弁護士会は憲法を変えるのは国政上の重大問題だから、改憲は有効投票数ではなくて、総投票数の過半数。総投票数が有権者の三分の二以上であることを国民投票の成立要件にしろという立場です。
 ところが法案では、最低投票率の基準もない。これは、改憲反対、賛成はしないという国民を切り捨てるもので、憲法違反だと思います。

公務員の意思表明を禁止

 第二のカラクリは、改憲反対のために動く人たちを動けなくすることです。はじめ与党案は、公務 員・教育者が「地位を利用して」国民投票運動に参加した場合は逮捕処罰するとしました。憲法について語ったら捕まるのです。「地位を利用して」というの は、いくらでも拡大解釈できるからです。
 さすがにこれには非難が集中したため、罰則規定は修正して削除するといい出しています。しかし、国民投票運動を禁止する規定が盛りこまれています。この 規定を根拠に、自治体の首長が運動に参加した公務員を処分するとしたらどうなるでしょうか。日の丸・君が代強制のために、石原都知事は何をしたか。警察が 捕まえるより威力がある。
 四〇〇万の公務員には憲法九九条「憲法擁護」の義務がある。「私は日本国憲法を守ります」と宣誓書を出して公務員になっています。「子どもを二度と戦場 に送らない」のは一三〇万の教育者のいちばん大事な心でしょう。憲法を殺し、戦争する国にするという改憲案が出たときに、なぜ憲法擁護を語り、運動に参加 してはいけないのですか。法案はこの点でも憲法に反しています。

国民の頭と心を支配する

 第三のカラクリは、国民一人ひとりの頭と心を支配することです。「改憲していいんじゃない」「反対はおかしいよ」と。情報を圧倒的にコントロールするのです。
 最初、与党は無料広告・政見放送の紙面や時間を国会の議席比で配分しようとしましたが、運動の成果でなくなりました。「平等にする」といい出しました。 しかしテレビCMや宣伝政治番組などの有料放送は自由です。「そういえば、そんなCMが…」とわかる量のCM一本を全国で流そうとすると、放送会社に払う お金はいくらかわかりますか? 四億円から五億円です(驚きの声)。
 改憲のPRは政党に限りません。経団連や大企業、そこからお金をもらった改憲団体がやってもいい。広告関係の「九条の会」のある活動家は、「六〇日から 一八〇日」の期間で考えれば「トータルで一〇〇〇億円は軽いでしょう」といいます。財界にとっては憲法を買うのに一〇〇〇億円ならこんな安い買い物はな い。
 与党側は、マスコミの利用については金銭などの条件で差別しないように配慮しなければならないと修正するといっていますが、配慮してどうなるんです。 「差別しません。金額は平等に×億です。あなたが買えないのはメディアの責任ではない」といわれておしまいです。カネの力で、情報がコントロールされるの は、国民の知る権利、言論の自由を奪うもので、これまた憲法違反です。

改憲賛成の弁護士も反対

 こんなインチキな、改憲派にめちゃくちゃ有利なルールで、国民投票をおこなうのは許されません。
 弁護士会には改憲賛成の人もいますが、「ひどすぎる。インチキはダメだ。民主主義に反する」といって、法案制定反対で一致しました。法案の正体を明らかにすれば反対は広がるに違いありません。
 先日、自由法曹団で意見書を持っていったら、ある民主党の秘書はこういいました。「本当に議員に効くのはメールなのです。わが党には自民党にすり寄るな というメールがあちこちから来ています」と。大変親切なアドバイスです(笑い)。
 五月三日までに制定するという企みに反対し、この不公正な法案を許してはならないという世論を大きくしていかなければと強く思います。

守ろう!生かそう!憲法9条、25条
“街に出て目立とう” “おしゃれに、センスよく”

全日本民医連事業所・職場憲法闘争交流集会で報告された各地のとりくみを紹介します。

 

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1月9日、大野あけぼの薬局前に100人が(青森)

自分の言葉で憲法語って
青森

 あおもり健康企画は、薬局だけの法人。二〇〇四年一一月から五つある薬局すべてで、毎月九日は 憲法九条と平和を、二五日は憲法二五条と人権をテーマに、始業前の一五分間を使って薬局前で宣伝しています。現在は薬局の呼びかけにこたえて青森保健生協 の病院・診療所、八戸生協診療所も合流。
 ハンドマイクの原稿も「二〇〇三年のイラク戦争反対の街頭宣伝では私がつくって読んでもらっていたが、今は各自が原稿をつくっている」と報告者の鎌田哲 成さん(あおもり健康企画)。一~二年目の職員にも自分で原稿をつくってもらうようにしました。「原稿を書こうとすると、自分で勉強しなくちゃいけない」 のがポイント。「チラシを配る、プラカードを持つだけでは成長しない」と鎌田さん。今では指名しなくても全員が自然に語れるようになっています。
 「青森は米軍基地や弾道ミサイル探知用のXバンドレーダーもある。県民所得は全国でも低い。これらの状況も踏まえ、憲法と社会保障を守るとりくみを進めたい」

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「憲法9条知っとるけぇ?」とシール投票(石川)
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ピースキャンドル

「9ってなに?」と会話が
石川

 石川からは、城北病院の川合優さんと西村結さんが発言。二〇〇五年八月の原水爆禁止世界大会に 参加したことをきっかけに、民医連内外の青年とその友人たち一〇人でつくった石川青年九条の会「9Peace」の活動を報告しました。月二回の学習会や、 「九条を多くの若者に知ってもらいたい、守る声を広げたい」と街に出る活動にとりくんできました。
 二〇〇五年一二月二四日には三〇人ほどの青年が参加して、「ピースキャンドル」に挑戦。「九条茶」の容器を使ってキャンドルをつくってアピール。行き交 う若者も「何で蕫9﨟なんだろう?」と注目。「そういえば学校で習ったことがある」などと、対話のきっかけになり、一一六筆の署名が集まりました。
 憲法九条をテーマにしたシール投票も。さらに一センチ四方の折り紙を貼って「9」のモザイクを完成させる「ピースモザイク」にも挑戦して、街を行き交う若者や、病院の職員、外来患者にも協力してもらいました。
 西村さんは、「若者は政治に無関心といわれるけど、対話すると戦争は嫌だ、平和がいいと答えてくれる人が多い。憲法のことを考えるきっかけづくりのために、街に出て目立つとりくみをしていこうと思う」と話しました。

患者・入所者とともに
愛知

 愛知・千秋病院九条の会の活動について報告したのは、尾張健友会の前田孝之さん。千秋病院九条の会は、尾張健友会の役員・管理者のイニシアチブで、それまで続けてきた平和サークルの活動を受けついで二〇〇五年五月に誕生しました。
 会員は、職員・患者やケアハウスちあきの入所者など約九〇人。元日本兵から戦争の加害と被害の体験を聞いたり、名古屋経済大学の新美治一教授を招いて国民投票法の学習会をおこなってきました。
 昨年は善光寺の観光とセットで長野・松代大本営と、京都・嵐山の観光をかねて立命館大学国際平和ミュージアムへ行きました。
 平和盆踊りや病院の食堂で九条茶を販売する活動などを地道にとりくんできた会の活動を振り返り「原水爆禁止世界大会や、全日本民医連の辺野古支援連帯行動に参加した青年職員などともがんばっていければ」と。

ダンスにカフェに手品も
京都

 昨年二月結成された、京都民医連第二中央病院エリア九条の会。発足の総会となった「平和な未来をつくるつどい」には三五人が参加しました。青年中心に九条の会ダンスチーム「フェニックス9」も結成。
 このほかにも映画「父と暮せば」「にがい涙の大地から」鑑賞会、若手蕫イケ面﨟弁護士を講師に「自民党新憲法草案批判的研究」の学習会、手作りクッキーの販売などに次々ととりくんできました。
 昨年夏は「サマーPEACEカフェ」に六二人が参加。「コーヒーショップさなえ」「スナックみさお」が開店、医師による手品やバイオリン演奏、カンツォーネなどもあり、美容院でバッチリきめてきた医師も。
 「上からあれをやれ、これをやれと降りてくると人がついてこない。会の事務局員は中堅職員が中心だというところがポイントでは」と報告者の三島桃子さん (京都民医連第二中央病院)。「おしゃれにセンスよくが大事!」とにっこり。

いつでも元気 2007.4 No.186