特集1 おかしな政治、東京から変えよう 吉田万三さん(元足立区長 東京民医連副会長)が都知事選に出馬表明
平和を守り暮らしを応援する政治に
吉田万三さん
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四月の東京都知事選挙に、吉田万三さん(元足立区長)が立候補を表明しました。東京民医連副会長で歯科医師。革新無所属の候補が都知事選挙をたたかうのは、三上満さん以来八年ぶり。吉田さんに話を聞きました。 (多田重正記者)
憲法と暮らし優先の2点で
―立候補を決意されたいちばんの動機は何ですか?
吉田 東京から、日本のおかしな政治の流れを変えたいということです。
安倍首相が九月に政権について、まっ先にやったのが教育基本法改悪でした。そして自分の任期中に憲法「改正」をやると強調しています。歴代の首相でもこ んなことを明言した人はいません。海外派兵を自衛隊の本来任務にするという防衛省法も通してしまった。
一方、格差社会とかワーキングプアという言葉が流行語になるくらい、庶民の暮らしは大変になっています。大企業は史上最高の利益をあげているのにね。
こういう、とても危険でおかしな政治の流れを、ホンキで変えないといけないんじゃないの、というのが一番の気持ちですね。いま一番大事なのは、「憲法九 条を守ろう」「暮らしを応援する政治に変えよう」という二点です。この二点で一致できれば、いっしょにやろうと広く呼びかけています。
石原知事、海外出張に2億4千万円も!
最大のぜいたくはあなただ!!
福祉はぜいたくと切り捨てて
―石原知事が都民の税金で豪遊していることが大問題になっていますね。
吉田 石原知事は「何がぜいたくかといえば、まず福祉」といって社会保障を削ってきた。それなのに自分は税金で豪遊ですからね。自分のお金ならともかく、都民の税金でしょ。私は、「最大のぜいたくはあなただ!」といっています。
一回の海外出張で、一〇〇〇万円も二〇〇〇万円も使う。飛行機もホテルもファーストクラス。ガラパゴス諸島にも行ってクルージングまでして、マン島ではレース見物ですよ。
アメリカのワシントンへ行ったときなど、一泊一三万一五〇〇円のホテルに五日間泊まっている。しかも一日は、「オンシーズン」だからと一泊二六万三〇〇 〇円も使っている。夫人も同行して二人で五二万円余です。都の条例では一泊四万二〇〇円までなんですよ。特別秘書も一泊九万七七〇〇円の部屋で、条例(二 万五七〇〇円)の三・八倍も使っている。
―びっくりですよね。
吉田 石原知事の海外出張での無駄遣いは、近県の知事と比べてもきわだっています。近県では条例で決まっている額よりも節約しようとしているんです。
さらに、自分の四男や友人夫妻を重用して「若手芸術家育成」と称して東京ワンダーサイト(TWS)をつくった問題も、都政の私物化ではないかといわれて います。ほかの文化施設予算は軒なみ減らすなかで、TWSだけは五年で八倍に増やしているんですから。
―まさに私物化ですね。都は、お金がないといって福祉を削ってきたのに、ほんとうに腹がたちます。
オリンピック口実に年1000億円ずつ積立?!
公共事業も、暮らし優先に切り替える時代です
仕事を増やし雇用をふやす
吉田 東京には企業の本社が集中しているから、ここ数年で税収が大幅に増えているんですよ。ところが税収が増えると、今度はオリンピックを招致しようといい出し、毎年一〇〇〇億円も積み立てるという。
一〇〇〇億円っていうのはケタはずれです。足立区の人口は六四万人で、年間の一般会計予算が約二〇〇〇億円。国立市は人口が約七万五〇〇〇人で、一般会計の年間予算が二五〇~二六〇億円。
一〇〇〇億円というのは、国立市民が税金を四年間納めなくてもいいぐらいの額です。一〇〇〇億円あれば、有料化したシルバーパスだってすぐ無料に戻せ る。マル福(65~69歳の医療費助成)だって寝たきり手当だって、いっぺんに復活できるのです。
毎年お金を積むというのは、お金があまっていると公言したようなものでしょう。オリンピックをやめれば、都民にまわすお金があるということです。要は、 何だかんだ都合のいい理屈を並べて、大型開発に税金を回したいんです。次つぎと新しい理屈を持ち出してくる。そして都民に回すのはばらまき福祉だという。
福祉と公共事業を対立するもののように誤解している人がいるけど、そんなことはないんですね。不足している都営住宅や福祉施設を建設すれば、地元の業者 の仕事が増えるし、作ったあともそこで働く人の雇用も増える。地域の財産になって、経済もいい方向に回るんです。
これからの時代は、公共事業も暮らし優先に切り替えなきゃいけない時代です。大きなスタジアムをつくっても、イベントが終わったら後は維持費がかかって しょうがないというんじゃダメです。暮らしをよくする政策を進めれば経済もよくなる。自治体の体質改善ですね。
一斉学力テストや学校選択制で 東京都教職員組合は、冊子『学校からの告発-教育基本法改定で学校・子どもはさらに苦しむ』をまとめました。東京都内で実施されている一斉学力テストや学校選択制でどんなことがおきているか、現場の教職員が告発したものです。 成績優秀 一方で心を病む 「学力が高い」と評判で、人気のある中学校では…。親の方が入学させることに熱心で、子どもが希望していない場合もあり、「小学校の友人がみんな通っている地元の中学校へ行きたかった」と泣きながら語る生徒もいる。 「先生、同じ問題だよ」 一斉学力テストによって、「×区の平均を上回れ」と教育委員会も学校も、テスト対策にあくせく。 |
“いじめなくす”というなら
―教育基本法でも、東京は改悪先どりでしたね。
吉田 東京では「日の丸・君が代」の強制が、かつてなく広がっています。入学式や卒業式などで、生徒が起立しないと先生を処分する。子どもの心をどれだけ傷つけるか。こうした強制が今後、全国に広がらないかと心配です。
しかし東京地裁で「日の丸・君が代」強制は違憲だという判決がでました。政府は教育への介入を強めようと教育基本法を改悪したわけだけど、「教育の自 由」「内心の自由」は、憲法で保障された権利です。憲法をよりどころに、父母や先生と手を結んで、押し返していかなくては。
―一斉学力テストと成績の公表というのも、東京のいくつかの区ではすでにやられていて、問題が出ていますね。
吉田 足立区では小・中学校で都と区の学力テストの結果で予算配分を決める計画を持ち出しましたが、区民の批判が強くあわてて一部手直ししました。
安倍さんは全国一斉学力テストをおこない、成績を公表して結果で予算を配分するなんていっていますが、そもそも学校の予算に差をつけるというのはバカげ た話です。本当は必要なら、どの学校にも予算を出せばいいのです。
介護保険だってそうです。介護度をこまかく分けて、どの介護度になるか判定することにエネルギーを使っている。そんなことよりサービスにエネルギーを注いだ方がよほど利用者に喜ばれますよ。
―いじめも大問題ですが。
吉田 大人が大人をいじめる世の中ですからね。子どもにだけいじめをなくせというのはおかしいですよね。子どもは大人のことをよくみていますから。
大人のいじめをなくす方がよほど教育効果があると思います。お年寄りが大事にされる、若い人たちが将来の展望をもって働ける。そういう社会にしてこそ、子どものいじめもなくなるのではないですか。
イスとりゲームにのせられず ともに手をつないで
“イス”増やすのが政治の役割
―石原知事の数々の暴言も、知事のいうこととは思えないことばかりです。
吉田 障害者に「人格はあるのか」とか、「あんな憲法は認めない」とか。最近では、文部科学省にいじめを苦にした自殺予告の手紙が届きましたが、石原知事は「甘えてる。いじめられたらやり返せ」といいましたね。
彼は小説家という割に、弱い人や苦しむ人に対する想像力がありませんね。日本が侵略戦争で苦しめた中国などアジアの人々を平気で差別する。彼は「やられ るのは自分が弱いからだ」ともいいます。彼は逆の立場になったらどうしようと考えられないのでしょうか。
―ひどい暴言にもかかわらず当選する。なぜでしょうね。
吉田 彼の暴言をおもしろがったり、許す人がい るからです。「従来の政治家は体面にこだわってきたが、彼はそうではない。本音で話す政治家だ」と受けとる人もいる。石原氏はニートを穀潰しといいます が、「俺も腹の底ではそう思ってたけど、よくぞいってくれた」と思う人もいるのです。
なぜそう思う人がいるのかというと、背景には庶民の生活苦があると思います。ヨーロッパでも極右が台頭しているでしょ。庶民は、苦しい生活を何とかした いと思っている。そこに「移民が来るから安い労働力に企業がとびついて、仕事がなくなるんだ」といわれると「移民は出て行け」となりやすい。
政治の責任から目をそらされて、庶民同士が足を引っ張りあう。
いまの日本も似ていると思います。安倍首相は失業対策で「再チャレンジ」といいますが、あれはイスとりゲームです。少ないイスをみんなで奪い合う。隙あ らば座っている人を蹴落として自分が座らなければ、と。石原知事もファイティングスピリットが足りないから蹴落とされるんだ、もっと強くなれというわけで す。
政治の役割は、イスを増やすことです。雇用を増やす。福祉の基盤をしっかりつくる。みんなが安心して暮らせれば、いがみあうことはない。その条件をつく るのが政治の役割なのに、子どものときから競争、競争で、イスとりゲームの練習をさせている。「自分だけは助かろう」という風潮を、政治がつくっている。 毎日のニュース、暗くなることばかりでしょう。戦争でもないのに、こんなに人が殺されたり自殺したりしてる社会って、やっぱりおかしいよね。こういう政治 の流れをグッと東京から変えなくては。
都民のたたかいあってこそ
―昨年は、民医連の「看護師増やして」の請願が初めて衆参両院で採択されたり、障害者自立支援法でも、障害者の方たちが自ら立ち上がって大きな運動にして、見直しをせまったり、国民の側ももうじっとしていられないというところだと思います。
吉田 そうですね。革新都政(一九六七年~七九年)が倒れた後、なぜ庶民のくらしが切り捨てられてきたか。それは住民のたたかいが十分育っていなかったからともいえます。
足立区長をした経験からも、私が都知事になれば都政は変わるとはっきりいえます。でも都民のなかに手をつなぎあい、いっしょにたたかう運動が根づいてこそ、都政は本当に変わります。
都知事選や県知事選は、いっせい地方選挙で一番最初におこなわれる選挙です。参議院選挙も、憲法改悪をストップさせる大事な選挙です。ですから私は全国 の先頭に立って、一番バッターのつもりでがんばります。全国でもそれぞれの地域で大いに力を合わせよう、がんばろうといいたいですね。
写真・会田法行
いつでも元気 2007.2 No.184