アフガンで井戸を掘る医師何のため?学び、考えた 中四国の医学生が中村哲氏招き集い 病気の原因なくそうと行動する姿に共感
「アフガンで井戸を掘る医師に学ぶ~そこにあるいのちをどう守るか」と題して、中国四国民医連医系学生のつどいが一〇月二九日、岡山大学で開かれました。アフガニスタンで医療活動をつづける中村哲医師が講演して討論しました。
会場はいっぱい。立ち見が出るほど |
「土木作業員などもしております。掘削機械を運転しておるときが、いちばん幸せです」との話に、会場からどっと笑いが起きます。
ときにユーモアを交えて話す中村医師。一人ひとりの参加者を見詰めるように、おだやかな口調で話します。一九八四年からアフガニスタンで診療をおこな い、いまはペシャワール会医療サービス総院長。二〇〇〇年の大干ばつを機に餓死したり、子どもたちがつぎつぎ下痢で脱水を起こして死んでいくようすを目の 当たりにして、井戸を掘り、用水路をひく工事をおこなうことを決意したといいます。
「きれいな水が飲めて、食べ物が食べられるようになれば、ほとんどの病気はなくなるはずだ。山のように抗生物質を持っていても、根本的には解決しない」
こうして始まった工事で、乾燥してひび割れた土地が、豊かに小麦が実る土地に。そのスライドが映し出されると、会場からは驚きの声が上がりました。
「まさかこんなに来るとは」
「正しい情報を得るって?」 |
「まさかこんなに来てくれるとは思っていなかった」と話すのは、つどいの事務局をつとめた岡山大学医学部三年の佐藤航さん。一〇〇人ぐらいかな、と思っ てふたを開けてみると、三七〇人! 一般の人の姿もありました。「高校生も来てくれて、進路を考える上で参考になるといってくれてうれしかった」といいま す。
会場がしんとなったのは、中村医師の次のことばでした。「日本は拉致問題で大騒ぎしている。でも、北朝鮮がやった何百倍もの人たちをかつて日本に連れてきたことは忘れている」
また「アメリカがアフガンを空爆したとき、日本でも軍事評論家という人がテレビに出て、ピンポイントで空爆できるとまことしやかにいっていた。でも、一 〇〇〇メートル上から誰がテロリストか、わかるはずがない」と話し、「大人の情報をうのみにするな」と参加者に語りかけました。
正しいと思える行動を
灌漑用の井戸で水浴びをする子どもたち(ペシャワール会提供) |
講演の後、「正しい情報を得るって、どうしたらいいのか」「みんなはどうしていこうと思う?」と班討論。
「ふだんは大学で医学的な技術や知識を詰め込んでいる感じ」と話すのは、つどい実行委員をつとめた島根大学医学部四年生の象谷ひとみさん。中村医師の、 患者のために何が必要か考え、実践に移す行動力に驚いたといいます。
「病気の原因が何なのかを突き詰めて考えて行動している。蕫水があれば九割の病気がなくなる﨟と考え、専門ではないのに井戸や用水路をつくる。蕫人が元 気になる、これも医療の一環だ﨟という言葉に感動した」と話してくれました。
実行委員長の岡山大学医学部四年、松繁治さんも「世界のなかで、アメリカの軍事化に付き従うのではなく、正しい情報を得て、正しいと思う行動をとる自主性を持ちたい」と。
力にものをいわせる風潮が強まり、情報がはんらんする一方で正しい情報をメディアが伝えないことの多い今日。多くの学生が自分の目や耳、頭で物事をたしかめ、行動できるようになろうと話し合う姿に、頼もしさを感じました。
文・多田重正記者/写 真・ 若橋一三
いつでも元気 2007.1 No.183
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