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いつでも元気

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元気スペシャル 看護師の心つたえる「ナース☆ワゴン」 患者さんが元気になるのが喜び 北海道・勤医協中央病院

 勤医協中央病院(札幌市東区)の看護部では看護部通信を発行しています。その名も「ナース・ワゴン」。

看護師確保に役立てたいと

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「ナース・ワゴン」1号  
中央病院ホームページ http://www.kin-ikyo-chuo.jp

 第一号は〇六年八月二五日付で、以来ほぼ毎週カラー版で発行、病院内の各職場に配布されています。一番の特徴は、インターネットで全国どこからでも、外国からでもアクセスできることです。
 「いま、看護師不足が本当に深刻で、私たちも必死で看護師確保に努めています。少しでも多くのみなさんに、看護部門ではどんな看護活動をしているかを 知ってもらって、うちの病院で働きたいという看護師をみつけたい。そんな気持ちからナース・ワゴンの発行を始めました」と加地尋美総師長。「ほんとにがん ばっているんですよ、みんな。患者さんの笑顔が見たくて、さまざまな工夫、努力をしています」といいます。
 「看護師自身にも、自分たちのとりくみを見直して、元気を出してほしいのです。あ、私たち、がんばってるじゃない、って思うと、ちょっとでもゆとりが出 るでしょう」と通信を作っている須田倫子副総師長。「“ワゴン”は“乗り合い”といった意味で、看護の活動ばかりでなく、各職種や、患者・地域のみなさん との共同の医療活動を紹介したいと思っています。自分たちもぜひ、“ナース・ワゴン”に登場させて、と他の職場からも声がかかります」と語ります。
 
急性期病棟
せん妄とたたかうFさんを支え

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「看護師の喜びは、何といっても患者さんが元気になること」と牧口直子さん

 ナース・ワゴンで、「看護師の喜びは患者さんが元気になること」と語っていた牧口直子さん。3・西病棟(消化器外科)の主任です。中央病院などの病棟を 経験した後、診療所に勤務。〇五年四月に五年ぶりに病院に戻り、あらためてこの間の医療改悪を実感したといいます。
 「3・西は、在院日数が一〇日くらいの急性期病棟です。以前と比べて入院の日数が半分くらいに短くなり、患者さんの入れ替わりが激しくなりました。医療 も高度化して、看護師の仕事も複雑になりました。手術後の患者さんが多いし、高齢者も多い。合併症も重症化しているなかで、看護師も患者さんも絶えず緊張 を強いられています」
 そんななかでも「みんなで明るく仕事してますよ~」と樫山基矢医師。牧口さんは「患者さんのがんばりに学びながら、病棟全体で支えることができました」と、Fさんの話をしてくれました。

「薬使わず回復」と全体で確認し

 Fさん(八〇代)は開拓農家の大黒柱として黙々と仕事をし、一家を支えてきた方です。粘り強く温厚で、つらい手術や処置にも前向きにとりくみました。
 Fさんが受けた手術は「粘液性膵腫瘍に対する膵頭十二指腸切除術」という心身への負担の大きなもので、一〇時間以上かかりました。そのため手術後、強度 のせん妄状態に。看護師の止めるのも聞かず、おなかにつけられた分泌液を排せつする管を抜いてしまったり、大声を上げて廊下に飛び出したり、夜間不眠に陥 るなど、興奮状態が続きました。
ご家族もFさんの急激な変化を受け入れられず、「元に戻るだろうか、手術しなかった方がよかったのでは…」と不安を口にするほどでした。おう吐物が肺に入って肺炎を起こし、再度、集中治療室に戻ったことも。
 病棟では、精神科医師とのカンファレンス(症例検討会)で「Fさんのせん妄は、一時的な意識の混濁であり、必ず回復する」ことを確認し、全体で意思一致。人権を守る立場から、「薬物による沈静や身体抑制をしない」という方針をもちました。
 「病棟全体でFさんの苦痛と不安を和らげるよう見守り、生活リズムの確立を目指して、規則正しいリハビリと生活の援助を続けたのです」と牧口さん。術後 の患者さんを二人夜勤で見ていくのは大変でしたが、当直の医師や師長、施設職員の協力も得て、方針を貫きました。
 入院は一カ月に及びました。Fさんは徐々に興奮からさめ、本来の自分を取り戻すことができ、家族にもようやく笑顔が戻りました。
 退院の前には、リハビリスタッフとともに自宅を訪問し、浴槽に入りやすくするなどのお手伝いもしました。
 「Fさんの看護実践を通して、私たちは患者さんの人権を何よりも大切にすることを学びました。安易に薬や身体抑制に頼ることなく、科学に裏付けられた看護方針をチーム全体で貫くことの大切さ。大変だけど、大事なことだと、改めて確認できたのです」と牧口さん。
 Fさんは退院後ひょっこり病棟を訪れ、ありったけの笑顔を見せてくれました。

患者の人権を大切に、思い受けとめて

訪問診療・看護
慣れ親しんだ我が家で…

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詰所でのカンファレンス。患者さんのために学ぶ

 在宅保健部師長の加藤真由美さんは、「最期まで自分らしく生きたい」という患者さんの思いを、大切にしたいと思っています。
 病院近くに住むAさん(九〇代)は、五年前に夫が他界、子どもたちはそれぞれ独立し、一人暮らしをしていました。春頃から体調の不良を訴え、検査したと きには、すでに多発肝転移の状態でした。入院を希望しなかったため、訪問診療が開始されました。
 いよいよ寝たきりになったころ、もう一度、入院しないか聞いてみました。「このまま家で往生させてください」とのことでした。離れて暮らしていた娘さん 二人が、交代で家に泊まり込むことにし、一日三回のヘルパーが導入されました。
 Aさんは「もう自分はよくならない」と思われたのか、「何もしてほしくない」と点滴も拒否。一日に数回、氷片を舐め解かし、一〇日間ほどはわずかな水分 のみ…。見守る娘さんはいつも不安そうでした。在宅医療部では週三回、ときには連日の往診で家族を支えました。
 Aさんは、夏休みを利用して北海道に来てくれた九州の曾孫さんに会うことができ、その三日後、家族に見守られながら永眠しました。
 「先生や看護師さんには、本当によくしていただいて」「寝たきりになって、天井ばかり見ていたけれど、慣れ親しんだ天井なのよね…」と、家族も納得して見送ることができたのです。
 「在宅をまっとうしたAさんは、在宅だったからこそ痛みや不安、せん妄も軽くできたと思います。ただ、まだ一般的でない在宅の“看とり”のためには、家 族の不安に応えるだけの援助と家族への教育、また連携する医療スタッフへの教育が必要だと思います」と加藤さん。
 病院で発足した緩和医療プロジェクトの一員として終末期の患者さんのカンファレンスをすすめ、病棟単位の看護師学習会にも積極的に応じています。

認定看護師への挑戦

 加藤さんは、ナース・ワゴンの第一号に、師長室の高橋夏絵さんとともに「認定看護師誕生!」というニュースで登場しています。加藤さんは「ホスピスケ ア」の、高橋さんは「WOC(創傷・オストミー・失禁)」の認定看護師です。
 北海道医療大学に初めて開設された認定看護師研修にチャレンジし、六カ月のコースを卒業。〇六年五月の審査を突破、七月に認定発表となったのです。受験 には、保健師・助産師・看護師の資格を得て「実務経験が五年以上」あり、うち「通算三年以上は特定の認定看護分野の経験を有する」ことが必要です。
 受験の直接の動機は「総師長に“キャリアアップのために受けてみたら?”とすすめられたから」ですが、高橋さんは「患者さんに、少しでも質の高い医療を 提供したい、若手の指導にも役立てたいと思って挑戦しました」と語ります。
 磨きをかけ、輝きをます看護師集団。それだけに「看護師増やして」の願いもますます切実です。
文・矢作京介/写真・千葉茂

いつでも元気 2007.1 No.183