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いつでも元気

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少しでも税金減らそう 「障害者控除」を集団申請 北海道・十勝社保協 要介護認定で控除受けられる

 要介護認定で「障害者控除対象者認定書」を発行させて、所得税と住民税の払い戻しを―北海道・十勝社会保障推進協議会(十勝社保協)では、十勝管内の一市一六町二村すべての自治体で「認定書」の発行申請をすすめるとりくみを広げています。

 「認定書」発行申請のとりくみは、六五歳以上で、介護保険の要介護認定を受けてい る人が対象です。申請書に記入して、市町村役場に持って行けばよいという簡単なものです。認定書は年内のいつでも受け取ることができ、控除は五年分さかの ぼることができます。あとは確定申告書の障害者控除欄と扶養控除欄に控除額を記入して、認定書と一緒に税務署に出すだけで所得税と住民税が還付されます。

別居でも扶養家族なら控除

 さらに子どもの扶養になっていれば、同居していなくても子どもが税務署に認定書を出し、障害者控除を受けることができます。給与所得者なら年末調整時に認定書を職場に出して控除を受けます。
 帯広市に住む村上為利さん(83)、千代さん(80)夫婦も非課税世帯ですが、二人とも要介護認定を受けています。「独立したお子さんの扶養家族なんだ から、お子さんが控除を受けられますよ」と十勝社保協事務局長の山本鉄雄さん(55)にすすめられて申請書を書きました。
 「お子さんの住む自治体が認定書を発行していなくても全然かまいません。障害者控除は国の制度ですから」という山本さんは、十勝勤労者医療協会(十勝勤医協)・帯広病院の放射線技師です。

扶養と障害控除一覧(万円)
  普通障害 特別障害
  一般 老親等
と同居
一般 同居 老親等
と同居
高齢者(70歳以上)
の扶養控除
48 48 48 48 48
老親(70歳以上)
同居加算
10 10
特別障害者
の同居加算
35 35
<扶養小計> 48 58 48 83 93
普通障害控除
特別障害控除
27 27
40

40

40
扶養・障害合計 75 85 88 123 133

確定申告書の記入方法
  (障害者控除認定を受けた場合〈帯広市〉)

■障害者控除
 普通障害(要支援1~要介護2) 27万円
 特別障害(要介護3~要介護5) 40万円
 ※自治体で異なる。要支援まで認定をしているのは帯広市だけ
 ※妻=普通障害、夫=特別障害の場合は合計67万円

■扶養控除 右表参照
■その他
 基礎控除38万円、配偶者控除38万円、公的年金控除
120万円や保険料控除、医療費控除などもあります。

年13万円の負担軽減に

 真鍋節子さん(57)は〇二年から、毎年義母の真鍋ツキミさん(96)の認定書を申請してきました。当初は要介護2。「普通障害控除」二七万円に「高齢者の扶養控除」「老親等の同居加算」を加え、年八五万円の控除を受けてきました(表)。
 今年八月に要介護4になったため、次からは「普通障害控除」が「特別障害控除」にかわり、「特別障害者の同居加算」も加わるため一三三万円の控除に。年 収約二〇〇万円という節子さんは、単純計算で一三万三〇〇〇円(所得税率一〇%)の所得税が軽減されます。
 節子さんは「税務署もお金を取るときはいってくるのに、戻すときはいってきませんね」と笑います。
 認定書は代理申請もできます。節子さんは、「自分の足では申請に行けないという人もいる」と。「ケアマネジャーさんはあちこちの家庭にいくわけだから代 わりに申請できないかしらね」との話に、山本さんもうなずきます。

全国に控除申請を広げよう

広がる認定書の発行

 所得税法施行令第一〇条は、市町村長が「精神又は身体に障害のある六五歳以上の 者」だと認めれば障害者控除の対象になるとし、一九七〇年の旧厚生省社会局長通知は、市町村が「障害者控除対象者認定書」を発行すれば控除対象になるとし ています。介護保険の要介護認定で認定書を発行させるとりくみは、これらを根拠に、〇二年、新潟県長岡市と上越市からはじまりました。
 「初めは帯広市は出さないといっていた。住民の運動で十勝管内の自治体に広がっていったのです」と話すのは、十勝社保協代表委員の高野幸雄さん(70)。十勝勤医協友の会会長でもあります。
 十勝社保協は税務署に「認定書があれば控除する」という確認をとって帯広市に伝え、市議会議員とも協力し、要介護認定で認定書を発行させることができました(『元気』二〇〇四年七月号)。
 その後も運動は広がっています。地道に集団申請会も開く中で、十勝管内全体で〇三年度は八七通の認定書が。〇四年度は二七九通、〇五年度は五一二通。〇六年は一〇月現在、五〇六通です。
 以前は診断書がないと認定書は出さないといっていた町が、「要介護認定を受けていればいい」と変わり、広報や有線放送で案内する自治体も増え、対象者に通知を出す自治体も出てきました。
 「自治体とけんかするだけではダメ。自治体の職員も、住民のための仕事ができれば、それがうれしい」と山本さん。障害者控除が地元の新聞に取り上げられ たことがきっかけで認定書の申し込みがあいつぎ、「ある自治体の障害福祉課長は、住民から感謝されて喜んでいましたよ」とエピソードを明かします。
 「『認定書を出せ』『制度を住民に知らせろ』と一方的に詰めるのではなく『隣の町では有線放送もして知らせているみたいだけど、あなたの町はどうす る?』など、いっしょに住民のために何ができるか考えることが大事です。どこの自治体でも隣の自治体がどんなことをしているか知りたがっています。自治体 別の認定書発行数も、毎年社保協から、ほとんどの自治体に教えていますよ」

自治体が発行を認めさえすれば

 高野さんは「十勝管内すべての自治体で、集団申請をおこないたい。そうすればもっとたくさんの申請者が生まれると思う」と抱負を語ります。
 山本さんもこういいます。
 「自治体が認定書を出しさえすれば、日本全国どこに住んでいても障害者控“出します”と、首を縦に振るかどうか。全国的には認定書発行は広がりつつあり ますが、まだまだです。ぜひ全国の民医連・社保協などが先頭にたってこのとりくみを広げてほしい。保険料が払えずに国保証がとりあげられることや税制改悪 で非課税から課税世帯になり、住民税や介護保険料も上がることが大問題になっています。そういうときだからこそ障害者控除認定書を発行させ、控除された分 を保険料にまわそう、非課税に戻そうという運動が求められていると思います」

文・多田重正記者
写真・酒井猛

いつでも元気 2006.12 No.182