地域にお風呂ができた! 高知市旭地区「存続させる会」
高知市旭地区の「旭に銭湯を存続させる会」(本誌2月号既報)のこと、覚えていますか?
ことし3月、高知市議会で請願が採択され、5月から入浴施設が開放されました。
学生の論文が大きな話題に
山本 正博 | 旭診療所事務長 「存続させる会」会長 |
「ああ、さっぱりした」
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高知市議会では私たちの請願書が全会一致で採択され、市の予算に▽旭地域の老人福祉センター(木村会館)の入浴施設の開放一七五万円▽公衆浴場安定化策三二〇万円が盛り込まれました。
私たち住民の声が、「入浴を確保する」責任が行政にあることを認めさせることができました。
こんなうれしゅうことない
木村会館のお風呂は、五月二〇日から火・木・土曜日の週三回使えるようになりました。午後一二時半から四時までで、浴槽が一つしかなく、途中男女入れ替えという、一般の銭湯からすれば不十分なものですが、旭地域のかたがたはこの日を楽しみにしておられます。
現在、八〇人が登録し、一日平均一七人、多い日には二〇人をこえる方が利用しています。利用者からはこんな声が。
「木村会館のお風呂に入るぞね」「これから気兼ねせんで入れる」「近くに風呂ができてこんなうれしゅうことない」
「いいお湯やったネ、さっぱりした」…
学生も一緒に手作りで
木村会館での入浴は、高知市から「旭に公衆浴場を存続させる会」が入浴デイサービスという形で委託を受 け、運営に携わっています。ボイラーの点火、受付、風呂掃除、後かたづけと、「手作りの地域のお風呂」といった感じです。ボランティアとして、医学生、看 護学生も携わってくれています。
七月一五日、この日も高知大学の学生、道脇みかさんと野口真美さんが参加しました。
入浴前の血圧測定、汗だくになりながらのなれない風呂掃除、そして合間を見てはお風呂の終わった方と楽しくお茶を飲みながらの談笑と、大奮闘です。二人の生きいきした姿は、お風呂の利用者さんに明るい希望を与えてくれています。
地元紙やFMでも紹介され
じつは二人は、「存続する会」のとりくみを執筆し、『民医連医療』四〇〇号記念論文でみごと最優秀賞を受 賞。今、この受賞が高知ではちょっと話題になっています。二人が賞金の一部を「存続させる会」に寄付したことを新聞記者がつかみ、五月一〇日の高知新聞に 『民医連医療』を手にした姿が掲載されました。
さらに七月一五日のFM高知のラジオ番組にも二人が登場し、民医連医療、生協病院、「存続させる会」のことなど、おおいに語ってくれました。
「旭の地域の人がこの論文を書かせてくれました」「人と人とのつながりの大切さ、人との関わりの楽しさを知りました」という道脇さん、野口さん。
「受け身ではなく地域に出て、問題意識を持って地域の人をしあわせにできるようになりたい」と抱負を語ってくれています。
銭湯も月一回無料の日が
市の公衆浴場安定化策では、高知市が「銭湯マップ」を作り、町内会に配布。各銭湯が月一回無料の日(行政が補助)を設け、銭湯存続に向け、行政と地域とが一体となった運動も始まりました。
「お風呂に入りたい」という当たり前の要求が行政を動かし、地域に世代をこえたふれあいの場が生まれました。
そして今、旭のまちづくりの議論へと発展してきています。少々は不便であっても、人にやさしい旭のまちづくり、「不便さのなかに豊かさ」を大切にするまちづくりを考えています。 写真・酒井猛
いつでも元気 2006.9 No.179