米軍から殺人の手ほどきを受ける自衛隊
「将来、本当の戦場でいっしょに戦えることを楽しみにしています」
と日米合同訓練指導した米軍曹
千坂純 日本平和委員会事務局長
陸上自衛隊160人が市街地で徒歩訓練を実施。周辺住民には何の連絡もなかった。「演習場の外での戦争訓練」に抗議する住民(6月11日、滋賀県大津市) |
自衛隊が、「実際に戦争できる軍隊」に変わろうとしている――そういっても、“まさかそんなことが”と思う人が多いかもしれない。けれどいま自衛隊は、実際にイラク戦争で民衆を殺りくしてきた経験を持つ米軍に指導を受け、イラク戦争型の訓練を繰り返している。
直前までイラクにいた海兵隊が
たとえば、二月一九日から三月三日まで、岡山県日本原演習場と滋賀県饗庭野演習場でおこなわれた米海兵隊と陸上自衛隊の共同訓練。この訓練に参加した米海兵隊部隊は、その直前まで「“イラク自由作戦”の支援でイラクに派遣され任務を終了したばかり」の部隊だった。
米海兵隊のウェブニュースにそのことが書かれているのを、岡山県平和委員会が見つけたのだ。隊員の一人は「この前イラクにいたときは、何回となく襲撃をおこなった」と豪語している。
イラクでは海兵隊による民間人虐殺が次々と明らかになっている。ファルージャでは沖縄からの海兵隊も参加 し、数千人の市民を包囲し、殺りくした。そしていまもイラク西部のラマディを封鎖し、手当たり次第に撃ち殺している。その実戦の感触が抜けやらぬ海兵隊か ら、自衛隊が手ほどきを受けているのだ。
あいば野演習場で公開された日米合同市街戦訓練。演習場内に3棟のビルを新築。そこに銃を持った敵6人(自衛隊員)が潜伏、自衛隊員と海兵隊員が銃撃戦で制圧するという訓練。「敵」はイラク人を想定してか、頭に布を巻いていた。2月23日(提供=滋賀民報) |
銃撃戦の中で家屋から家屋へ
ウェブニュースによると、その訓練は次のようなものだった(写真参照)。
「銃撃戦の中で海兵隊と陸上自衛隊は家屋から家屋に襲いかかり、すべての部屋から立ちふさがる敵を一掃し た」「この総攻撃はイラクの情景を蘇らせるものだった。それは“イラクの自由作戦”に従事する間、ヒット市で我々が実行してきたことだったからだ」「自衛 隊は、イラクの経験を持った海兵隊員から新しい戦闘技術を学んだ」
また陸上自衛隊第八普通科連隊第一中隊第三小隊カネマキ氏は、演習の感想をこう述べている。「この訓練 は、海兵隊の手順を知る上で貴重な経験となった。海兵隊は世界の実戦で数多くの経験を積んでいる。我々は彼らから多くのものを学び、士気も高まった」(日 本平和委員会『平和運動』6月号、中尾元重論文から)
教導連隊が米国で指導を受け
これだけではない。西部方面隊普通科連隊は今年一月、米海軍コロナド基地などで米第一海兵師団から敵前上陸訓練の手ほどきを受けたが、この海兵隊部隊もイラクから帰った部隊だった。
昨年一一月一五日にテレビ朝日の報道ステーションが報じた、米フォート・ルイス基地での米陸軍第一軍団と 陸上自衛隊普通科教導連隊との市街地戦闘訓練は衝撃的だった。この第一軍団は、四〇〇〇人のストライカー旅団をイラクに派遣し、一年余りで五八九人が負 傷、四四人が戦死している。指導したファルコン軍曹は、こう述べる。「この訓練は我々が実際にイラクでやってきた戦いとまったく同じです。非常に重要な訓 練です。イラクでもイランでもいまや戦場は市街地です」「将来本当の戦場でいっしょに戦えることを楽しみにしています」
訓練を受けた教導連隊は、帰ってきてから、全国各地の陸上自衛隊にその「成果」を受け継ぐ訓練を、静岡県東富士演習場で繰り返している…。
いま「米軍再編」で、神奈川県座間基地に司令部を移転するとしているのが、この米陸軍第一軍団である。
司令部を陸海空、全部一体化し
あなたはこの日米軍事演習の模様をどう感じるだろうか? いま全国で米軍基地の強化拡大が大問題になって いる。住民の反対を押し切って強行しようとしている「米軍再編」。その最大の狙いは、米軍と自衛隊を一体化し、世界中で米軍と自衛隊がいっしょになって戦 争できる体制をつくることだ。そのために、米軍・自衛隊の司令部が、陸海空全部一体化することをめざしている。
米軍と自衛隊が一体となって戦争できる体制づくり…これこそが、憲法九条改悪の背景にあることを、しっかりと見なければならない、と思うのだ。
いつでも元気 2006.8 No.178