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いつでも元気

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文化も生活も子どもの未来も奪った 核実験 マーシャル支援に参加して

genki176_05_01“被ばくも糖尿病もアメリカが運んできた”

 二月二六日~三月八日、日本原水協がおこなったマーシャル核被害者支援代表団に、民医連から二人の医師が参加しました。

2人の医師が糖尿病検診

 阪下紀子さん(愛知・協立総合病院)は、四年前、医学生として訪れて以来、二回目のマーシャル訪問。前 回、被ばく者の方たちの話を聞かせてもらい、「いつか、医師としてお返しをしたいと思っていた」といいます。「今回は、私がまだ一年目の研修医だし、マー シャルですごく増えている糖尿病に絞って、検診をしました。一人ひとりの方に食事や生活のアドバイスをして」
 宮城調司さん(東京・立川相互病院)は沖縄出身。米軍支配下の島民の生活に関心がありました。
 「六〇人を検診し、ほんとうに糖尿病が多いので驚きました。五〇人弱が糖尿病とみられます。伝統的な食生活が破壊され、太っている女性が多く、変形性膝 関節症をおこしていました。糖尿病は、はじめはまったく自覚症状がなく、だるいとかのどが渇くなどの症状が出たときはもうかなり進んでいます。地元の人た ちは“被ばくも糖尿病もアメリカが運んできた”といっていました」

6万人の島に6千件のがん!?

 アメリカは、一九四六~五八年にビキニとエニウェトクで、六七回もの原水爆実験をしました。爆発威力の合計は一〇八メガトン。広島型原爆が一二年間毎日一・六個爆発したのと同じ規模です。
 最大のものが、日本の漁船第五福竜丸なども被ばくした五四年三月一日の「ブラボー水爆実験」です。
 昨年明るみに出た米国がん研究所の報告によると、マーシャル諸島共和国(人口六万人弱)では、核実験の時代に生きていた人々のなかで五六〇〇件のがんが 発生し、さらに直接“死の灰”を浴びた人たちから五〇〇件のがんが発生すると推定しています。しかし米国政府は、「核被害への責任は終わった」として、被 ばく者への医療援助、汚染除去などあらゆる措置の削減、打ち切りをすすめています。(「原水協通信」から)

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ロンゲラップ島民と日本原水協代表団。前列右が阪下さん、左が宮城さん、前から2列目右から3人目がロンゲラップ環礁首長のマタヨシさん

子どもたちも希望描けない

 宮城さんはこういいます。
 「核実験で島を追い出されたロンゲラップの人たちは、他の島に間借りする形になり、漁をする権利もない。もともとは自然のものを採取して食べていたの に、いまはアメリカからのファストフードや缶詰ばかり。歩いて四〇分ぐらいで回れる島なのに、少しの距離でも車に乗るという生活にされてしまっています。
 そういうなかで糖尿病が増えている。マジュロ病院の医師の話ですが、被ばく者の血液検査をして、“糖尿病があるから通院を”といっても、痛くないからと 聞き入れてくれないそうです。日本の青年海外協力隊員の方が、『世界の子どもたちに夢をという気持ちできたのに、子どもたちは何の希望も描けない』と嘆い ていました。核実験によって、伝統的な生活・文化がすべて奪われ、帰島もできない。未来まで奪われている。すごくショックでした」

米国の補償打ち切りに怒り

 「前回お会いした、ロンゲラップ島の元首長、ネルソン・アンジャインさんのお見舞いにいきましたが、もう話もできない状態でした。がんばってこられたのに、自分の島に帰れずに亡くなるのは無念だろうなあ、と思います」と阪下さん。
 「島の人たちの一番の不安は、やっぱりがんです。マーシャル人の医師がいないので病気の説明が不十分で、とくに被爆者はアメリカの実験データにされてい るだけではないかという不信があります。これからがんが発症してくる危険性は高いのに、アメリカは補償を打ち切ろうとしている。核実験場とされたビキニ、 エニウェトクの人たちが、未払いになっている土地被害への補償金を支払うよう、アメリカ政府に対し訴訟を起こすそうです。人を訴えるなんてことのないやさ しい人たちが、ほんとうに怒っているのだと思います」
 「ロンゲラップ平和ミュージアム建設計画がどうなっているのかも、気になっていました」と宮城さん。
 「マーシャルから核廃絶を発信できる場所を作りたいと、二〇〇〇年三月によびかけられ、日本の“支援する会”で、建設資金の半分の一〇〇〇万円を集めた のです。ロンゲラップ環礁選出のアバッカ・マディソン上院議員らを中心に一生懸命、建設運動をしています。伝統的な土地所有制度のため時間がかかりました が、用地は確保できました。
 現在、工事を始めるために政府の補助金を申請していますが、なかなか出ないというのが現状だそうです」

核兵器がなくならないと

 「核兵器がなくならないと、私たちの苦しみも終わりません。私は、生きている限り、みなさんと一緒にがんばります」と語っていたネルソンさん。「この言葉をしっかり受け止めていきたい」という阪下さん、宮城さんです。

いつでも元気 2006.6 No.176