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いつでも元気

いつでも元気

たばこは核兵器と同じく廃絶を 未成年者禁煙外来にとりくんで

おとなの喫煙が子どもの脳を傷つける!

 私は本来、小児外科医で、秋田大学小児外科に7年間在籍し、小児がんや新生児の先天奇形などを主に扱ってきました。現在は主として子どもの外科系の病気やけが、救急医療などにあたっています。

発達さかんな脳に深刻な影響が

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両親が喫煙する10歳女児
歯ぐきを着色するとニコチンがくっきり

 そんな私が、10年来、禁煙の推進や喫煙防止教育に情熱を傾けています。もともとたばこは嫌いです。新生児の先天奇形では、親の喫煙が胎児に与えるたばこの有害性を強く意識していました。

 95年に「秋田・たばこ問題を考える会」という市民団体を知り、ここで学べば学ぶほど、たばこの健康被害が大きく、喫煙習慣自体が「依存症」という病気であると確信を得ました。10年前、活動を始めたばかりのころは、「狂信的な禁煙主義者」などといわれたものです。

 02年、成人向けの禁煙指導を始め、この年10月に、奈良女子大学教授高橋裕子先生の子どもを対象とした「禁煙外来」を知り、感銘を受けました。

 というのも、99年と01年に秋田県内の小中高校生の喫煙実態調査をおこない、高校生の喫煙率が全国平均 を上回り、3年男子では5割近くが「喫煙経験あり」、うち約6割は日常化しているという深刻な実態をつかんでいたからです(秋田県子ども研究会薬物非行問 題研究班調査)。

genki175_04_02  未成年者は成人に比べて細胞が若い分、発がん率が飛躍的に高く、ニコチン依存症になりやすいことは周知の事実です。そしてたばこの恐ろしいところは、そう した影響がすぐには出てこないことです。たいしたことないじゃないか、と思って吸い続けるうちに身体中ボロボロにされてしまう。脳への影響も深刻です。

 一番怖いのは、胎児や乳幼児の受動喫煙です。周りのおとなが吸うたばこの煙が体内に入り込むと、最も発達の盛んな中枢神経、つまり脳に影響がいくからです。文字通りオーノー!です。

禁煙が解決にならないときも

 03年9月に、秋田県内初の未成年者禁煙外来を開設しました。最初に患者さんが来たのは12月になってから。中3男子でした。以後、現在まで21人が受診しています。中学生7人(うち女子2人)、高校生14人(同女子3人)です。

 外来指導の基本は成人と同じで、自由診療、原則予約制、ニコチン依存度を評価し、必要と判断すれば禁煙補 助剤(ニコチンパッチ)も使います。保護者同伴を原則としている点のみ異なり、かつ大きな特徴です。受診のきっかけは、養護教諭から勧められた8人、自分 から進んで7人、親に勧められて6人でした。

 10人が禁煙成功、3人は治療中、8人が中断、というのが現在の成績です。決して満足のゆく結果ではありません。

 受診した子どもたちを見ていると、大きくふたつのタイプがありました。たいした動機もなく、好奇心や退 屈、友だちの勧誘などで軽い気持ちで吸い始めてやめられなくなったタイプ。私は「好奇心誘惑型」としました。もう一つは親子関係の問題やいじめ、学校への 抵抗反発といった背景があるタイプ。これを「問題背景型」としました。前者は高校生に多く、後者は中学生に多く見られました。

 当然ですが、後者の方がやっかいです。喫煙は非行行為のひとつにすぎず、禁煙は解決にならないからです。喫煙を悪いことだと思っていないのも特徴です。こうした子どもたちとは、いかに心を開いて話ができるかが重要で、カウンセリング的な対処が必要でした。

過干渉と無関心に傷つけられて

 また、子どもらから学んだ最大のものは、親の影響力の大きさです。よくも悪くも親の影響を受けているので す。彼らにとって、親が自分を信用していない、愛してくれていないという思いが最大の打撃だと、この外来を始めてから知りました。過干渉と無関心、このふ たつが子どもらを傷つけるのです。外来を保護者同伴にしたのは正解だったと今にして思います。私はしばしば親と話をします。キーマンはむしろ親なのだと思 えるケースが多いからです。

 未成年者禁煙外来は始まって実質2年ほど。まだまだ十分知られているわけではありません。一番大きな課題は学校医や養護教諭との連携が不十分な点で、もっと働きかけが必要だと考えています。

 保護者同伴を掲げているために受診できずにいる親子も多いかもしれません。指導の実際でも、子どもらと真正面から向かい合っているのだろうかと自分自身試されているような気もしています。

知能指数の低下もみられ
全体の平均値を100とした場合の知能指数の偏り
落ち着きのない子、
キレやすい子になりやすい
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まず教育、そしておとなが禁煙

 喫煙防止教育はこの3年で50回ほどおこないました。中学校が主ですが、昨年からは小学校も増えてきました。高校生や成人も依頼があれば話にいきます。

 内容は▽喫煙規制が世界中で始まっていること、▽たばこは依存性が強く、やめられなくなったら病気であること、▽発がん性が高いこと、▽受動喫煙、胎児への悪影響、▽歯が汚れたり歯周病の治りが悪くなること、などです。

 聞いた方は、健康被害がいかにすごいか理解できたと答えてくれます。生徒の感想もしばしば送られてきますが、ほとんど理解してくれるのだなあといつもうれしく感じています。

 昨年暮に秋田市周辺の高校生を対象に飲酒と喫煙の意識調査をおこない、現在集計中ですが、喫煙経験率は大幅に減少しているようです。教育の効果が大きいと思います。未成年者の喫煙を減らすには、まず教育、そしておとなが率先してたばこをやめることです。

 世界中でたばこを規制する動きが強まっているのは確たる科学的根拠のあることで、たばこは核兵器同様この 世から廃絶すべきものです。健康に関わる職業にある者なら誰でも、一人残らずたばこをやめ、人々に禁煙を勧めるべきです。アスベストの500倍も危険な受 動喫煙をどうして放置しておくのか、不思議です。

 民医連の職員、共同組織のかた全員がたばこのない健康な生活を送ってほしいと願っています。   (まつだ・きよし)

いつでも元気 2006.5 No.175