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いつでも元気

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ベトナムで進む地域リハビリ(上) 住民参加で障害者の生活を支える

京都民医連かみの診療所所長 尾崎 望

NPO法人つくって本格的に支援を決意

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「立てたぁ!」と喜ぶ少年。リハビリを指導する大城PT(右端)と松本PT(左から2人目)

 ベトナムの枯葉剤の調査から始まり、〇二年からは障害者のリハビリを支援するようになった私たちの活動は、昨年一〇月、NPO法人「ベトナム・タイニンの地域リハビリテーションを支援する会」を立ち上げるところまで発展しました。
 タイニン省では、発展途上国でリハビリと障害者の社会参加を進めるためにWHO(世界保健機関)が提 示したCBR(Community Based Rehabilitation)という計画に、行政と住民でとりくんでいます。地域住民の中から、CBR ワーカーと呼ばれる人たちを選び、その人が障害者の自宅を定期的に訪問し、運動療法や生活指導をおこなうというシステムです。専門家や施設が乏しい地域 で、障害を持った人たちが自分たちの持てる能力で生活を楽しみ、社会に参加していくためには、とてもすぐれた方法です。
 私たちの会は、このタイニンのCBRを本格的に継続して支援しようと決意しています。一〇年来、夏休みや冬休みを利用して、医学生・看学生とともにベト ナムを訪問して、交流・支援をしてきましたが、昨年は八月にタイニン省チャウタン県を訪問。障害実態調査への協力、CBRワーカーや障害児者の家族との懇 談、現地リハビリスタッフの技術研修などをおこないました。
 一一月には、スタッフ養成の一環として現地の訓練士二名を日本に招いて、リハビリの研修を受けていただきました。次号で、そのようすをリポートをしま す。
 支援活動をおこなっていく上で、読者の皆様のご協力をぜひお願い致します。

タイニン省訪問に参加して

協力し合うことの意味

山西 卓 京都民医連中央病院・研修医

 ベトナムでみられる問題は、戦後または江戸時代の日本と同じです。貧困、健康に対する意識の低さ、社会的環境などによる、受診率の低さ・社会的認知のなさ・就学就職困難・社会的サポートのなさ・背負う家族の負担・それらから生じる二次的障害などです。
 私は二年目の研修医で、これまで医学生としてベトナムに三回同行しましたが、医師としては初めてです。そばに相談できる小児科医がいるとはいえ、基本的 に診察室に医師は私一人。あるのは聴診器と打腱鎚と血圧計だけ。目の前には言葉も文化も違う、困っている親子。最初は本当に、どうしたものかと思いまし た。
 しかし周りには、年齢も国籍も職種も関係なく、少しでも何かできることがないか、必死に考える人たちがたくさんいました。障害を持って困っている人を助 けたい、将来の可能性をつぶさず広げたいと、自然な気持ちで協力している人がこんなにいる。人と人とが知恵を出し合い協力し合うことの意味を感じることが でき、それが私の日々の研修でも、一番の元気のもとになっています。

「できる能力」発見し

塩見明子 京都民医連中央病院・作業療法士

 二回目の参加です。今回は、二日間にわたり障害を持った方のお宅を一九軒訪問しました。地域によって、訪問を受けている家庭と、まったく知らないという家庭とがありました。CBRという言葉も初めて聞いたという方が多くいました。
 懇談会には前日に訪問した家族も含め一六家族が来てくださり、三班に分かれてお話を聞きました。家業のバイク屋を手伝っている青年や、自宅の玄関先の掃 除を日課としている人もいて、とても楽しそうに「仕事」をしているとのこと。何か役割があった方がいいのだと思う、という意見もあり、大きな感動でした。
 今回の訪問を通じて、障害があってもできることはある、と何度も思いました。日々の生活の中に、目標や楽しみ、役割を見つけてほしい。運動療法を指導す るだけでなく、「できる能力」を発見し、うまく生かす、あるいは生かせる環境を作っていくこと、それが専門家の役割であり、そのための人材育成が私たちの 会の役割だと考えています。

物ごいする子らを前に

佐藤智夫 近畿高等看護専門学校二年

 初めて参加しました。一番印象に残ったことは、貧富の差を目の当たりにしたことです。私たちが健診をおこ なった場所は、都市から少し外れたところにある町です。そこにはたくさんの物ごいをしている子どもたちがいました。みんな小学校一年生くらいに見えました が、聞くと「一五歳」「一四歳」という答えばかり。
 一人の子に「一日何を食べているの?」と尋ねると、「田んぼの魚(四、五礼の淡水魚)を一日五、六尾食べている」といいます。とてもショックでした。
 一五歳といえば、ちょうど発育盛りで食欲が一番わく時期です。一日五、六尾の魚だけなんて日本では考えられない。同じ人間なのになぜこんなにも違うの か、私は悔しくてたまりませんでした。
 何が自分にできるのか、今も自問しています。少しでも多くの人に関心をもってもらうことが、間接的であっても手助けになるのでは、と考えています。少数では何もできませんから。

募金は郵便振替でお願いします。

口座番号:14430-38438311、
加入者名:ベトナム・タイニンの地域リハビリテーションを支援する会

いつでも元気 2006.2 No.172