私のまちづくり 子どもはおとなにとって「未来」! 寺子屋(家庭塾) 福岡・行橋市羽根木東区
地域の神社拝殿で開かれる寺子屋(家庭塾)。元小学校教諭の古谷信一さん(72・福岡・健和会京築友の会会員)が中心になって、小学生を対象に、月二回、土曜日に「読み、書き、計算」と礼儀作法を教えています。
開始三〇分以上前にやってきた鈴木健弘くん(小5)はお兄さんも寺子屋の卒業生。「ここの勉強では百マス計算が一番好き。休み時間に遊ぶのも好き」と話してくれました。
原点にかえろうと…
古谷さんの名刺には「民生委員」「社会福祉協議会評議員」など肩書きがびっしり。「町内会長もしているので、総会で承認してもらってこの神社を使っています。神社で寺子屋なんてのも、いいでしょう」と笑います。「寺子屋」を始めようと思ったのは学校週五日制の開始前。
「蕫ゆとり教育﨟と銘打って五日制が導入されることになりましたが、本当にゆとりになるのか?と。人間らしい豊かな生活を営むには、基礎学力が大切で す。五日制では詰め込みになってしまい、子どもたちの学力低下が心配でした。また五日制の導入は父母の合意を得たものでもありません。学童クラブや児童館 など、子どもが安心して遊べる施設があるならまだしも…。まったく子どもの権利が守られていない」と古谷さんは憤ります。
「今の学校は管理体制が厳しくなり、教師も子どもも伸び伸びと過ごせない。どんなに力量のある教師でも今の状況で子ども一人ひとりをみるのは至難のわざ です。何か手伝えることはないのか、と考え、教育の原点にかえろうと蕫寺子屋﨟を思い立ったのです」といいます。
村田さんの朗読に聞き入る |
地域の人の協力も得て
勉強する内容は「読み、書き、計算」を基本としながら毎回違います。八月六日は子どもの権利条約のうた 「待たないで」を歌ったあと、視覚障害者への音声訳ボランティアをしている村田英子さん(77)による「ちいちゃんのかげおくり」の朗読を聞きました。続 いて「漢字のお経」。その学年で習う漢字を語呂よく並べ、お経のように何度も音読して覚えてしまおう、というもの。
クリスマス会などで手品をみせてくれる野本和俊さん(隣の地区の民生委員)による手品のタネあかしもありました。「夏休みの自由研究に」と。そして百マ ス計算。人との競争ではなく、前回の自分のタイムとの競争。最後に「起きた時刻」や「歯みがきをしたか」を記入する「生活点検」の表が配られました。
家庭での生活習慣、大事と
親も参観できます。二人の男の子を通わせる加藤さん、森下さん。二年生の男の子の両親の堤さん。「しつけもしてくれるからうれしい。親のいうことはなかなか聞いてくれないけれど、先生に言われたらちゃんと聞きます」と、四年生の男の子の母親の多久島さん。
古谷さんの補助をしている吉永基之さん(35)は「古谷先生は一~二年生のときの担任。怖かった!(笑)。でもユーモアたっぷりで、決して子どもを見放 さない先生でした。私は高校の非常勤講師をしています。今の高校生の学力低下は、家庭で学習する習慣がないことも原因のひとつかと。子どものときから基礎 学力と正しい生活習慣を身につけることが大事だと思い、自分から手伝いたいと願い出ました。人との関わり方も教えているところがいい」と。
一~二年生を担当している古谷さんの妻の美代子さん(元教師)や「私も寺子屋をやりたくて」と北九州市から通ってくる太田多美子さんたちが見守るなか、 真剣に学び、伸び伸び遊ぶ子どもたち。その姿をみながら、「子どもはおとなにとって未来。蕫人は花より美しい﨟のです」と古谷さんは語ります。
文・斉藤千穂記者/写真・若橋一三
いつでも元気 2005.10 No.168