いま必要なのは顔の見える支援 市民ボランティアがファルージャで見たもの
NPO法人「ピースオン」の相澤恭行さん(33)は、日本平和大会で集まったイラク支援募金のうち百万円を預かり、ファルージャに医薬品を届けてきました。相澤さんにききました。
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私は、戦争前からイラクの人々と交流を持ち、現在は「ピースオン」というNPO法人で、イラク市民にトラックやスクールバス、抗がん剤をおくる支援活動や、文化交流活動を行なっています。
四月五日にいったん帰国したときに、イラクでの日本人拘束事件の知らせが入ってきました。当時相次いだ外国人拘束事件の背景には、ファルージャで七百人 とも千人ともいわれる住民が、米軍に殺された事件がありました。
多くの犠牲者を出した、そのファルージャに医薬品の緊急支援を行なうため、預かったお金を持ち、五月一二日、ヨルダンのアンマンに着きました。
医薬品は事前に、ピースオンのイラク人スタッフであるサラマッドが、病院に聞いて調べてくれたリストにもとづいてアンマンで購入しました。まとまった数 はバグダッドでは揃いにくいのです。
日本の市民による現地での支援活動は、人質事件以来、途絶えていました。しかし自衛隊派遣で対日感情の悪化が心配されるいまこそ、直接お互いの顔が見え る支援で、市民同士の信頼をつちかうことが必要ではないか…、サラマッドたちと相談し、治安状況を確認したうえでイラク入りを決意しました。
高遠さんも支援していた病院へ
アブダリオ家の子どもたちと相澤さん(左端)
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治安は比較的落ち着いてきたとはいえ、安全を考えて、できるだけ外国人が乗っていることがわからないように、後部座席に横になっての道中でした。
ファルージャの総合病院に無事到着して、支援物資の薬品を届けることができました。アンマンでは約七〇万円分の薬を仕入れましたが、これが一〇日ほどし かもたないといわれ、かなり不足していることがわかりました。
米国いいなりの日本人はきらわれているのでは、と覚悟していましたが、病院や、周辺を歩いて話したイラク人たちに「日本の市民は助けに来てくれているんだよね」といわれました。
悪化した日本の評判を、皮肉にも、人質事件が押し戻してくれたようです。高遠菜穂子さんたちの事件が報道されて、日本の市民による支援が行なわれていた ことが、ひろく知られるようになっていました。ちなみに、バグダッド陥落後、この病院にはじめて医薬品を届けた日本人が、高遠さんでした。
医師たちの話では、ガーゼなど緊急治療用の医療用品はすでに十分届いているとのこと、「いま必要なのは医療器具」と口をそろえます。そして今回届けたよ うな、下痢や吐き気止め、解熱剤、痛み止め、皮膚アレルギーの薬など一般薬が慢性的に不足してきているとのことでした。
これは、戦闘を逃れ郊外に避難していた市民が、いま続々と市内に戻ってきていますが、不衛生な避難中のテント生活がたたって、病気がひろがっているためです。
屋上からいきなり米兵が
ファルージャは、人口四〇~五〇万人といわれますが、商店街も閉まったままで、街は閑散としていました。
サラマッドの案内で、四月にもっとも激しい戦闘地域となった、ジョラン地区のアブダリオさん宅を訪問しました。親族も集まってきて、チャイ(お茶)をご 馳走してくれ、われわれを客人として、心からもてなしてくれました。
家のなかを見せてもらうと、三階の壁は砲撃で破壊されて外が丸見え、床にもミサイル攻撃でできた大穴が…。ミサイルの破片と、壊された家具や、ウエディ ングドレスが瓦礫にまみれていました。
戦闘がはじまって、いきなり米兵が自宅の屋上から入ってくるのを見て、アブダリオさん一家は、着の身着のまま郊外の砂漠に避難し、停戦発表でようやく自宅に戻ってきたといいます。
「帰ってきたらこのありさま。宝飾品や金目のものはなくなっていました」
周囲を見渡せる屋上に上がりました。見晴らしのいいアブダリオさん宅は、米軍の格好の攻撃拠点として、しばらく米兵が住み着いていたようです。屋上に は、米兵の残していったリュック、携帯食料、弾薬が放置されていました。
アブダリオさんは、落ちていた不発弾を手にして「見ろ! こんなものを一体誰がかたづけるというのだ!」と怒りをあらわにします。「外国人がたくさん写 真を撮りに来るが、その後誰もなにもしてくれない。誰が壊した家を直してくれるのか」と…。
現状を見た者の責任として
「うちも壊されたの」と近所のおばさんにも呼びとめられました。時間がなく、見ることはできませんでした が、「現状を世界に伝えてほしい」というイラク人の意気ごみには並々ならないものがあります。彼らの思いを伝えるのは、現状を見た者の責任です。さらに、 それを知ったわれわれには、その先一体何ができるのかが問われています。
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日本平和大会で呼びかけられた「イラク人道募金支援運動」でこれまでに集まった三百万円は、第一次分として六月一五日、日本国際ボランティアセンター(JCV)に託しました。 八重山薫記者
■募金の振込先 りそな銀行本郷支店普通預金1329985 全日本民主医療機関連合会 長瀬文雄
NPO法人ピースオン(PEACE ON) ホームページは http://npopeaceon.org
いつでも元気 2004.8 No.154