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いつでも元気

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特集1 おかしいぞ?マスコミ3 人質事件めぐる「自己責任」議論は・・・

イラク国民の絶望の深さを人質事件を通して理解すべきです

美帆シボさん(フランス在住)

 邦人人質事件がおこる以前から、日本とフランスのイラク情報に違いを感じていました。いつも私はフランスのラジオニュースでイラクの状況をきいた上で、 日仏の新聞を読みますが、フランスで感じているような緊張感が、日本のマスコミではそれほど感じられませんでした。これは自衛隊派遣に対する批判が高まる ことを懸念しているからだろうか、とパリ在住の日本人と話していたほどです。
 その後、今井君を含む三人の拘束があり、日本の人々の反応を知って、いまの日本そのものに危機感を持ちました。たとえば人質の家族を中傷したり、謝罪を 要求したりする人がいることです。最初、極右の発言かと思ったら、なんと政府要人の発言ではありませんか。
 フランス人が異国で人質になった例は日本よりずっと多いけれど、仏国民は政府をはじめ連帯し励

ましこそすれ、非難を浴びせることはありません。政府が救援費を人質の家族に要求することも、フランス人には理解できません。
 今回の本質的な問題は「イラク戦争は終わっていない」ことであり、「戦争終了後の復興」というまやかしの表現で軍隊を送った国々は、破壊と虐殺に苦しむ イラク国民の絶望の深さを、人質事件を通してもっと理解すべきだと思います。その基本的な問題が、日本では人質の「自己責任」にすりかえられているのでは ないでしょうか。
 四月一七日付ル・モンド紙で、フリップ・ポンス特派員の次のような分析・見解が載っていました。
 「日本がいまその平和ドクトリンを捨て去ろうとしているとき、NGOが新しい戦争反対の推進者となろうとしている。イラクで捕まった三人はこの理想を共 有していた若者である」。私はこのような肯定的な意見を日本のマスコミから聞きたかった。マスコミが国家権力や一部の極右的な国民の嫌がらせに脅えてまと もに批判ができないのなら、心ある者がそれぞれ主張すべきです。

 まず自分の身の回りの人々に語りかけることから始めようではありませんか。

genki152_05_01
イラク人道支援募金運動

 日本平和大会で呼びかけられた「イラク人道支援募金」が始まりました。事務局団体は全日本民医連と平和委員会。
募金の振込先は■りそな銀行本郷支店 普通預金1329985 全日本民主医療機関連合会 代表者・長瀬文雄。

権力に対するチェック機能放棄はジャーナリズムの自殺に等しい

豊田直巳さん(フォトジャーナリスト)

 ジャーナリストもNGOも仕事の性格上、「自己責任」は自覚しています。危険な紛争地などへいくときは、最大限の情報収集と、最大限の協力者の確保、最 大限の安全確認をしているつもりです。それでも不可抗力でトラブルに巻き込まれることがあるのは事実です。
 そういう、私たちが自覚する「自己責任」というものと、何かあったときに政府が蕫それは被害者の「自己責任」だ﨟というのは、まったく違う。政府として の「邦人保護の義務」を放棄した発言だと思います。
 ましてかかった費用を出せなどというに至っては、それなら家族と救出についてどういう方法をとるかきちっと打ち合わせしてやったのか。新聞報道による と、どのように使ったか公開できない部分もあるという。そうすると最初から情報公開なしに使ったのか。
 いま公務員の情報公開されていない部分におけるヤミ給与を含めた税金の不正流用は、北海道警でも福岡県警でも、大問題になっています。政府のいうことは 正しいから黙って信用しろというわけにはいかないことは、現在進行形で明らかになっていますよね。
 いずれにしろ政府の側から、国の義務を果たさないと宣言するのに等しいような「自己責任論」というのは当然批判され、撤回されるべき言葉だと思います。
 そうでないと国民が「日本政府は何もしないんだ、納税の義務だけ国民に負わせて正当な社会保障は得られないんだ」という気になりますから、国家の崩壊につながりかねない失言です。
 もしマスコミが同じ口調で語っているとしたら、マスコミとしての自己責任を果たしていないことになる。マスコミには政府の広報という機能もあるでしょう が、ジャーナリズムは、世界中で「第四の権力」といわれるように、行政・司法・国会も含んだ権力に対するチェック機能が最大の存在意義です。それを放棄し たらジャーナリズムの自殺に等しいと思います。 (談)

いつでも元気 2004.6 No.152