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いつでも元気

いつでも元気

特集1 共同組織とともに「いのちの平等」守ろう 全日本民医連第36回定期総会

全日本民医連第36回定期総会――長瀬事務局長に聞く

 全日本民医連は二月二六日から三日間、埼玉で第三六回定期総会を開き、今後二年間の運動方針を決めました。民医連は何をめざすのか、長瀬文雄事務局長に聞きました。 八重山薫記者

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全日本民医連・長瀬文雄事務局長

 こんどの総会は、平和と憲法が岐路に立っている時期に開かれた総会です。平和に生きる権利や医療・福祉を受ける権利が奪われ、「いのちの平等」が崩されてきている時代にあって、どのような方針をうちだしていくかが問われました。

私たちの主張が国民の声に

 この二年間、「医療や福祉は人間が生きていくのに欠かせない権利。商品ではない」と主張し、たたかってき ましたが、この主張は国民的な声になってきました。昨年の健保本人三割、高齢者定率負担に反対するたたかいでは日本医師会や看護協会などと共同してたたか うなど、多くの人たちと手をたずさえてきました。

 医師会からは、民医連といっしょに国民の命や福祉を守りたいという声が寄せられ、エール交換が全国各地で 行なわれるようになりました。山梨では、民医連の医師総会に山梨県医師会の会長が出席、国民の命を守るためにともにがんばろうとあいさつがありました。 もっともっと幅広い共同をひろげていきましょう。

受療権を守るとりくみひろがる

 受療権を守る各地のとりくみがゆたかに交流されました。北海道の旭川では、国保証をとりあげるな、資格証 明書を発行するなというねばり強いとりくみで、義務教育の子どもがいる家庭や、病気の人がいる家庭に資格証明書は出さないと行政に約束させるとか、沖縄な ど国民健康保険の一部負担金減免を実現しているところ、要介護認定者が障害者控除を受けられるよう運動をし、減税を実現したところなど、全国各地での、障 害者、難病患者、高齢者の医療・福祉を受ける権利を具体的に守っていくとりくみが、いきいきと報告されました。

 これらの経験を学びあい、自分の自治体でもこんな運動をしようという動きができたと思います。共同組織の人たちとぜひすすめていければと思います。

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さいたま市・大宮ソニックシティに604人の代議員が集まった

安全・安心・信頼の医療

 民医連は、医療事故をおこさないために、どんな小さなミスでも原因を明らかにして教訓を普及し、同じあやまりをくり返さないことを原則にしてきました。注射事故や、転倒転落事故、感染事故などの防止対策マニュアルをパンフにしてひろめています。

 不幸にして医療事故がおこった場合は、患者さんの人権を第一にすることが何よりの基本です。隠す文化ではなく、「正直な」安全文化です。川崎協同病院の事件、京都民医連中央病院の事件でも私たちは自己点検と改善をすすめ、教訓を発信してきました。

 医療の安全に対するとりくみは日常不断の努力が求められます。民医連の組織のすみずみまで患者第一の原則が貫かれる職場づくりをと確認しあいました。

憲法の大学習運動を

 戦争はもっとも命を粗末にする行為です。絶対に許してはなりません。とくに劣化ウラン兵器は人類史的犯罪として『いつでも元気』でも追及してきました。この問題を、民医連はこれからもとりあげていきます。
 憲法を変えようという動きが政治日程にのぼってきます。憲法を日常の医療やくらしのなかに定着させ、生かしていくとりくみをすすめていこうと確認しあいました。
 四月には「民医連憲法手帳」を七万部刷って職員と共同組織の方に配ります。この手帳には、戦後、中学生の副読本になった「あたらしい憲法のはなし」もの せました。ここでは「戦争放棄」について、軍隊や武器を持たないといってなにも心細く思うことはない、日本は世界に先がけて正しいことを行なった、正しい ことほど強いものはない、と書かれています。憲法の大学習運動をひろげていきましょう。

地域の財産、共同組織

 昨年、三百万の共同組織、五万の『いつでも元気』普及を達成しました。総会方針では「民医連の事業所を守 り、地域で健康づくり、医療・福祉の運動をすすめる共同組織の存在は地域の人々と私たちのかけがえのない財産」と表現し、すべての活動に「共同組織ととも に」を貫くことを提起しました。
 共同組織の存在は、民医連最大の特徴ですが、民医連だけではない、地域にとっての財産に成長してきています。「模擬患者」になって、よりよい医者や看護 師を育てる活動も始まっています。健康づくりや助けあいの活動も全国にひろがっています。川崎や京都の事件で、民医連を支えたのは共同組織の人々でした。
『いつでも元気』は、民医連と地域を結ぶ雑誌です。昨年の共同組織活動交流集会で、肥田会長が、『元気』を三百万共同組織の人全員が読んだら、日本の医療 や福祉は変わるといいました。この立場で、あらためて、職員や共同組織のみなさんに『元気』を読んでもらおうとよびかけました。
 総会では、今後一〇年で「四百万の共同組織、一〇万の『いつでも元気』読者」という大きな目標を確認しました。四百万といえば、日本の全世帯の約一割近 くです。次の総会までに、二〇万の仲間を増やし、『元気』は、〇五年に岡山で開く共同組織活動交流集会までに一万人の読者を増やすことを決めました。

医療と政治を統一して

 民医連は、目の前の患者さんの人権を守ると同時に、日本中の国民、患者さんが安心して医療や福祉を受けられる世の中にするために、創立以来活動してきました。このことを総会では、あらためて確認しあいました。
 医療制度が改悪され、戦争をする国にむかう、「政治が人を殺す」といわれるような世の中にあって、民医連は、平和と憲法を守る政治を実現しよう、まじめ に生きてきた人たちがお金の心配なくかかれる医療や福祉の制度を実現しようということをかかげています。共同組織や職員のなかでおおいに議論しながら、七 月の参議院選挙にのぞみます。

 


医師養成
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病棟でのカンファレンス(奈良・土庫病院)

臨床研修制度が新しくなって

 四月から新しい医師臨床研修制度がスタート。これまで大学病院に集中していた研修が、地域の中小病院でも行なわれるようになります。民医連では四四病院 が「臨床研修管理型病院」に指定され、民医連を選んだ医学生一八四人の研修を受け入れます(過去最高は一九四人)。
●地域の病院が連携して育成はかる
 新制度では、病院が地域でグループをつくり研修をすすめることができます。
 沖縄では、沖縄協同病院のほか民間、県立あわせて一三の病院が「思想・信条をのり越え、一致協力して、沖縄ひいては日本のよき臨床医を育成する」ことを 目標に、昨年四月、「群星(むりぶし)沖縄」プロジェクトを結成しました。沖縄民医連は「群星」の事務局長を派遣するなど大切な役割を担っています(座波 政美代議員)。
●患者を中心に学びあい議論して
 北海道の澤田幸子代議員は、〇二年四月から開設された勤医協中央病院の「総合診療病棟」での研修医養成を報告。
 多様な病気の患者さんが入院する総合診療病棟で、研修医は主治医としてさまざまな患者を担当。終末期の患者を担当し、患者が家に帰ることを選択したとき は、最期まで往診して、責任を持ちます。
 研修医と看護師はカンファレンス(症例検討)をくり返して学びあい、情報を共有し、患者さん本人にとって何がよいかを議論して治療方針を決めています。
●医学生にさらに語りかけよう
 埼玉の増田剛代議員は「新制度になって、大量の新人医師が民医連に就職するようになったいまこそ、”平和と民主主義を守り、人権を尊重できる医師になろ う”という、医学生への働きかけが大切」と発言。「研修医はカリキュラムをこなしていくのに精一杯。生存権や受療権を守る民医連運動の後継者を育てるに は、学生時代に民医連にふれ、将来、民医連運動の後継者になる決意をもってもらうことがますます重要」と強調しました。

人権守る医療
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浦和民主診療所の「わたしの終末期要望書」表紙

「終末期要望書」にとりくんで

 患者の意思が最優先されるべき終末期医療。その実現のためには生前の意思表示(リビングウィル)が欠かせません。どんな終末期を望むのか、「わたしの終末期要望書」作成にとりくんだ経験が、浦和民主診療所(医療生協さいたま)の酒井てるえ代議員から報告されました。
●学習かさね「要望書」120通に
 医療生協の「患者の権利章典」の学習を基礎に「私の終末期要望書」の原案ができたのは九三年。当時一〇通だった「要望書」は現在一二〇通をこえました。
 学習のなかで、患者の意思確認のためには病名告知とインフォームドコンセントが重要なことも学びました。
 ことし、四人の方が亡くなりましたが、本人の強い意思表明を中心に、家族と医療者・介護事業者が連携し静かに在宅死されました。家族も「要望書にそって 看取ることができて満足です」と感想を。
 在宅患者が緊急入院した公立病院でも「要望書」により人工呼吸器装着は選択しない判断をしました。組合員は他の医療機関でも対応してくれることを知り、確信を強めています。
●患者・医療者双方の人権意識高め
 「要望書」のなかの「終末期に望むこと」という欄には、その人らしい大切な主張がさまざまにつづられています。すべてを受けとめながらのサポートは大変 きびしいけれど、このとりくみが広がり、患者・医療者双方の人権意識を高め、人権を尊重する医療の具体的な手段として活用されるよう努力していきます。

まちづくり
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尼崎医療生協のまちづくり交流会

提案型の運動が前進

 尼崎医療生協・粕川實則代議員は、民主市政が誕生し、提案型まちづくり運動が前進していることを報告しました。
●市民の声きく市政に転換
 〇二年一一月、現職を破って白井市長がみごと当選。市財政は大型公共事業のつけで大赤字、市民のくらしを守るのは大変ですが、新市長は市長室オープン トーク、車座集会など市民の意見を聞くしくみをつくり、市政が大きく変わりました。
 〇四年度予算案で三五人学級へのつなぎとなる複数担任制のほか待機児ゼロ、早朝の延長保育などを盛り込みました。
 昨年は、三歳児未満の医療費無料化、国保の保険料引き下げを実現しています。社保協として国保の減免基準を提案し、四月から新要綱にそった運用がされます。受療権を守る第一歩です。
 市長が変われば県政も動かすことができます。県が昨年末発表した福祉医療切り捨て計画を、短期間の運動でストップさせました。県民医連、県社保協として 直ちに反対運動を始め、市政にも働きかけて市として反対の意見を表明。これが他の自治体や県医師会も動かしました。
 この改悪の息の根を止めようと、尼崎で二万の署名にとりくんでいます。
●40人が社保学校を修了して
 健診制度の充実をもとめた保健所との懇談では、尼崎医療生協が市民健診の30%、大腸がん検診の68%を担っているとわかり、私たちの保健予防活動が市民の健康に直結していると実感しました。
 昨年は社保学校を開催し、四〇人の組合員さんが修了。生協医療部会の通信教育も五四人が修了しました。修了者は「まちづくり委員」に。地域に根ざしたまちづくり型社保活動をすすめていきたい。

いつでも元気 2004.5 No.151