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いつでも元気

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元気スペシャル 「ここは楽しか。仲間がおるけん」 みんなで仕事を探し、みんなで仕事をする 就労センター「ありあけ」(福岡県・大牟田市)

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 「働きたくても働けないというのは本当につらいことです。私は働きつづけられる限り一生働きたい」と、就労センター「ありあけ」の参加者はいいます。 「ありあけ」は、高齢者、障害者、生活保護を受けている人などが共同で、仕事探し・仕事づくりをする場。昨年九月にできました。

 朝から「ありあけ」の仲間が出向いたのは、お隣の熊本県荒尾市の山あいの「EM実験農場」(注)。「ありあけ」がはじまってから三カ月、一面がセイタカアワダチソウと竹林の荒地を切り開いて農地づくりにはげんできました。
 この日、仕事にきたのは五人。「まずひとりが機械の使い方を学び、みんなに教えて、安全に使えるようになりました」「最初はきつかったばってんが、いま はまっ黒になって帰って、風呂に入って飯食ったら、もうぐっすりです」…仲間が口々にいうのは「やりがいのある毎日」。
 それぞれが、リストラされたり体を壊したりして、これまで働きたくても働く場がなかった人たちです。なかにはホームレス経験者もいます。参加者のひとり が「ここは楽しか。働かされるというのではなくて、自分たちで仕事をつくっていける。それに、ここにくれば仲間がおるけん」といいました。

仕事がなければ自分たちで

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耕運機も草刈り器もみんな持ち寄り。前列右端が堀さん、前列左から2人目が仕事を依頼した田島さん

 「ありあけ」は、NPO「緑と健康を守る街づくりの会サンサン中友」の活動から生まれました。「サンサン中友」は、中友診療所や友の会の人たちがつくったまちづくりのボランティア組織。生活相談やヘルパー事業にとりくんでいます。

 「ありあけ」の所長の堀栄吉さん(72歳)は、ありあけ健康友の会の役員でもあります。「大牟田は、三池 炭鉱閉山のときからずっと雇用情勢が悪くなるばかり。六五歳以上はまったく仕事がありません。全国の有効求人倍率が〇・五六に対して大牟田は〇・四〇とい う低さです」と堀さん。「福祉事務所は生活保護の受給者に、毎日毎日、就労指導といって書類を出させる。早く仕事を見つけろ、昨日は何をしたかときびしく いうだけで、仕事を探してはくれません。それなら自分たちで仕事を探そう、仕事をつくろうというのが就労センターなのです」

 農場づくりは、堀さんとは三池の争議以来の古い仲で、現在「EMどんどんヤロウ会」の田島博康さんから依 頼されました。「初仕事は、事務所のペンキ塗りでした。寺の整地などの仕事もやってきましたが、田島さんからの仕事を請け負って、事業も安定してきまし た」と堀さんはよろこびます。

職員もボランティアとして参加

 中友診療所の宮田真由美看護師長(45歳)はこういいます。「診療所では、生活保護の患者さんが百人をこ えます。なかには、仕事がなく酒びたりの毎日を送って地域から見放されている人たちがいる。治療してよくなってもまた病院に戻ってくる、これでは本当に病 気を治すことにはなりません。治療だけでなく、生活が自立できるようにしなくては…。一方で、働きたくても働けない人たちがいます。この人たちが働く場を 持ち、生きがいを見出していくにはどうしたらいいかと診療所で話し合ってきました」
 話は、地域に共同作業所のようなものをつくって、そこに診療所職員もボランティアとして参加できないかと発展し、その後の就労センターの構想に結びついていったのです。

もっと多くの人に仕事を

 「ありあけ」の事務長を引き受けた冨田公夫さん(62歳)は、自身も高血圧で働けなくなり、関西から故郷に帰ってきたものの、仕事がなく生活保護を受けています。
 「私も早く自立したいんです。ここでの仕事は、多い人で一カ月七万円ほどの収入にまでなってきましたが、まだ生活保護を抜け出せるほどではありません。 働く場がなく保護をもらうだけの生活は本当につらい。同じ思いをしている人たちがもっとたくさん埋もれているはずです。はじまって三カ月。これからです よ」
 就労センターの現在の登録者数は二五人、「みんなで仕事をしよう」というチラシを新聞おり込みするなど仲間を募集しています。そこには「仕事引き受けま す」の募集も。「仕事をひろげて、早く軌道に乗せ、多くの人に仕事をしてもらいたいですね」と冨田さんは語ります。

文・八重山薫記者/写真・酒井猛


(注)EM実験農場 酵母菌や乳酸菌など「有用微生物群」(EM)で米ぬかなどを発酵させてつくった肥料を使う無農薬・化学肥料不使用の農場。「ありあけ」では、農地づくりのほかにEM菌を使った肥料などの製造もはじめています。

いつでも元気 2004.4 No.150