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いつでも元気

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医療が必要な人から保険証を奪うな 資格証明書の機械的発行で手遅れも

四年前、国は国保料(税)滞納者からの保険証取り上げを自治体に義務づけました。以来、「資格証明書」や「短期保険証」の発行件数が全国で急増。昨年の資格証明書の発行件数は二五万八三三二件。七年前の約三倍になりました。
 資格証明書は、いわば「国保料の滞納者です」という証明書。受診したとき窓口で医療費を全額支払わねばならず、保険料を納めれば七割分を払い戻されると いうものです。しかし保険料が払えなくて滞納している人に、一〇割の医療費を払い、さらに保険料も納めるなどということができるわけがありません。
 千葉市で初めて資格証明書が発行されたのは二〇〇一年九月。その後はうなぎのぼりで増え、昨年三月時点で、資格証明書発行は約一万件に。短期保険証をあ わせると約二万二千件です。国保世帯の14・3%から正規の保険証を取り上げていることになり、全国でも最悪です。

市は「相談にきて」というが

 同市にある花園診療所の石塚俊彦事務長は発行が始まったときから「資格証明書をもった人が受診したり、受診を控えていることがわかったら、すぐ自分に連絡を」と診療所内外に話してきました。
 「まず、医療を受けてもらうことが第一です。本人に電話して事情を聞き、困っているようなら役所に同行します。千葉市は、”とにかく窓口にきて相談して くれれば、正規保険証を発行します”と言明していますから」
 これまで、石塚さんが把握した資格証明書受診者は、他院を受診していた人をふくめ約一〇件です。
 Aさん(63歳)の場合。独居。四年前に失業、国保に。高血圧、アルコール性肝障害、高脂血症がありましたが、保険料が高くて払えず「自費で医者にか かったほうが安い」と思い、必要なときだけ自費で受診していました。歯痛が激しくなってどうしても保険証が必要に。
 役所にいきましたが多額の滞納額をみせられて支払えず、花園診療所に相談。石塚さんが区役所に同行して分納相談をし、保険証を手にすることができました。
 「いまはなんとか仕事がみつかり、毎月五千円を払ってます。でも、私ら年金も少ないし、仕事だってろくにない。こういう事情を、区も国ももっと理解してほしいと思いますよ」とAさん。
 石塚さんも「分納相談にいっても、本人は滞納があるし強くは出られない。同行した私たちが”いま失業中でこれだけしか払えないんです”とやって、やっと 正規保険証が出される状況です」と。

日本の患者負担は世界でも重い

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”収奪機関”になりさがった

 こうしたなか、本来は「特別の事情」として正規の保険証を交付されるはずの「有病者」つまり病気で医療が必要な人にも、無差別に資格証明書が発行されるケースが頻発しています。無差別発行の典型がB子さん(39歳)の場合です。
 甲状腺機能障害で他院を受診していましたが、失業して国保に加入。しかし保険料が払えず資格証明書に。三人の子どものうち六歳、四歳の子が喘息でアト ピー。内縁の夫も喘息ですが、やはり資格証明書なので、子どもの喘息薬で発作を止めていたという状態でした。
 「こんな家族からも保険証を取り上げているのです。命を脅かす事態がおきているのに、役所の担当者は型にはまった対応しかしない」(石塚さん)
 B子さんの場合も石塚さんが同行して分納相談をし、正規の保険証を出させましたが、石塚さんは「行政が?収奪機関?になりさがっている」といいます。

とうとう悲惨な事件が

 昨年末、悲惨な事件がおきました。
 息子と二人で暮らしていた六〇歳の男性Cさんは、昨年四月に資格証明書を交付されました。めまいなど自貧症状が出て、無料の市の健診を受診。がんが発見されたものの手遅れで、二カ月後の一二月には亡くなってしまったのです。
 口座引き落としで国保料を払っている人でしたが、二〇〇一年度に残高不足で二回滞納が生じました。しかし、翌年度は完納。それなのに昨年四月になって、資格証明書が発行されたのです。
 「国保を考える会」事務局長の木幡友子さん(千葉民商)はこういいます。
 「千葉市は”交付要綱に従って資格証明書を発行している”といいますが、半年滞納で短期保険証、一年滞納で資格証明書とまったく機械的です。文字どおりコンピュータまかせなのです」
 Cさんの場合、〇一年度の滞納がそのままだったため、一年たった時点で「資格証明書」が発行されてしまったのです。
 「Cさんにはあきらかに払う意思はあったわけです。そういう人からも、悪質滞納者という扱いで無差別に保険証を取り上げる。こんなことがあっていいものでしょうか」と石塚さん。
 こうした市の対応の裏には、厚労省の姿勢があります。機械的な対応をするなという一方で、「過去の滞納について追及せよ」とか、「督促状を出しても返事 がない場合は、保険証の返納がなくても資格証明書を出していい」とか、現実には保険証取り上げを推進しています。
 「国の姿勢も正していかなくては」と石塚さんはいいます。

実情の把握を積極的に

 「国保を考える会」は、民医連や民商(民主商工会)などが中心になって一〇年前につくりましたが、資格証明書発行を期に活動を活発化。市内六区のうち五 つの区役所で集団減免交渉を行ない、保険料減免規定を、市議会で現実的なものに改定させるなどしてきました。
 木幡事務局長は「そもそも年収の一〇%にもなる国保料は高すぎる。そのうえ資格証明書世帯になると乳幼児医療費助成も受けられません。市民生活の実態を無視した国保行政は、なんとしても変えなければ」と語気を強めます。
 石塚さんは「民医連は患者の人権を守ろうとがんばっていますが、ほんとうにその気になって積極的に動かなければ、治療を中断している人、自費受診の人の事情はつかめない。全事業所でのとりくみが求められています」と語ります。
文・矢吹紀人(ルポライター)

いつでも元気 2004.3 No.149