特集1 もう一つの世界 東アジア発 南北コリアと日本の子どもたちが絵で交流
私のことを知って、あなたのこと教えて
写真と文 山本美加
03年8月平壌でひらかれた「南北コリアと日本のともだち展」 |
家族の姿、友だちの顔、東アジアの地図、風景や動物、一堂に集められた四百枚近いさまざまな絵。これら は、日本・大韓民国・朝鮮民主主義人民共和国に住む子どもたちが、「私のことを知って、あなたのことを教えて」というテーマのもとに、まだ見ぬ未来の友だ ちへ自分を紹介する絵を描いたものだ。
仲よく平和になればいいな
まるで海から飛び跳ねているような三頭のシャチの絵を描いたのは、日本の小学四年生。絵の中の三人の子どもが三国の国旗を手に持っているところが印象的だ。この絵には、「早く三つの地域が仲よく平和になればいいな」というメッセージがつけられている。
平壌展を訪れた朝鮮学校に通う在日コリアン(両端) |
「日本の人とも仲よくしたいし、朝鮮の人とも仲よくしたいと思っています」という言葉は、在日コリアンの五年生。二つの国の間に生まれ育った素直な気持ちだ。
「みんなちがう顔、ちがう性格のひと。ぜんぜんちがう性格のひとたちどうしでも、わらうことができるんだって。がんばれば平和がやってくるって意味だ よ!」というメッセージと絵を描いたのは韓国の中学一年生。お互いの違いを理解・尊重し、協力する、その気持ちが子どもだけでなくおとなにも必要であるこ とを思いおこさせる言葉だ。
日本・ソウル・平壌で
この絵画展は、三国の間にある壁をのりこえる第一歩として一九九九年から始まった。二〇〇〇年には、日本 の複数のNGO(非政府組織)の賛同により「南北コリアと日本のともだち展」実行委員会を組織し拡大。さらに、子どもの目線で異文化と出会う大切さを考え つづけてきた韓国のNGO南北オリニオッケドンムとの協力関係により着実に続いている。
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〇一年からは、ソウルや平壌でもこの絵画展が開催されるようになった。その後、それらの会場では、絵を描いた子どもたちが集まり、実際に顔を合わせ話し 触れ合う交流会が続いている。ソウル展へは、日本や在日コリアンの朝鮮学校に通う子どもたちが、東京展では、韓国の子どもたちが、平壌展へは、在日コリア ンの子どもたちが、海を越えてそれぞれの会場を訪れた。
あと10年たてば…
「あと一〇年たてば私は二〇歳です。そして『一人一人』が友だちになれば、みんな一つのつながりになるで しょう。『一人一人』ががんばれば、みんながなかよくなって、くだらない戦争なんてなくなって、『大切なともだち』が世界に広まって、もっともっと大切に したいなーと思うようになると思います」(日本)
小学生のこんな純粋な言葉に、おとなの価値観さえ動かされる思いがする。主体はあくまでも子どもたちだが、交流会ではむしろサポートする大人たちのほう が出会いに感涙する場面も珍しくない。不信と対立の歴史をくり返した東アジアにおいて、子どもたちの平和な未来を願う子どものためのプロジェクトは、おと なへのメッセージをも多く含んでいる。
(フォトジャーナリスト)
いつでも元気 2004.2 No.148