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いつでも元気

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元気スペシャル 自衛隊駐屯予定地 サマワでも劣化ウラン弾が! 米軍は無差別に放射能兵器を使っている

写真家 森住卓

 日本の自衛隊の蕫駐屯予定地﨟であるサマワ。バグダッドから三百キロメートルほど南にある、首都と南部の都市を結ぶ要衝の地だ。私は昨年一二月、サマワでも放射能兵器「劣化ウラン弾」が使われていた証拠をつかんだ。
 ユーフラテス川沿いの広場に放置されていたキャノン砲の残骸。米軍ヘリの攻撃を受け、砲身を空に向けたまま、機能を完全に失っていた。

通常値の20倍の放射線

 私の目は、砲身に空いた蕫穴﨟に吸い寄せられた。ひと目見て、あの恐ろしい蕫痕跡﨟とわかる。穴は決して大きくはないが、縁をめくりあげ、中心部まで貫通している。
 放射線測定器の不気味な警告音は、連続音にかわり、静かな広場に響きわたった。測定値は、通常値の二〇倍だ!
 町の中心部から少し離れたこのあたりは、野菜畑が広がり羊も放牧されている。川沿いにはヤシの林が広がる。イラクの農村部でよく見かける、ありふれた光 景だ。子どもたちも遊んでいる。こんな所でも、蕫悪魔の兵器﨟が使用されていた。
 周辺住民に聞いてみると、戦争蕫終結﨟直後には、タバコ大の劣化ウラン弾がいたるところに散乱していたが、米軍が占領統治を始めると、きれいに片づけら れたという。劣化ウラン弾を使ったという事実を隠蔽しようとしたのは明らかだ。「大義なき戦争」のなかで、放射能兵器の無差別使用という、さらに悪辣な大 罪を犯していたのだ。
 私が見つけた劣化ウラン弾の痕跡はほんの一部にすぎない。サマワも確実に放射能に汚染されている。

「ようこそ自衛隊の皆様」

 日本で話題になった「ようこそ自衛隊の皆様」の横断幕を、自分が書いたというアンマール・モーセンさん (宝石商)に一二月二日の夜に会った。彼は地元バスケットボールチームの会長で、ほかのサマワ市民同様、素朴に日本の支援を待望していた。「歓迎日本の皆 様」は日本語でどう書くんだと、おおぜい来た日本人にきいたが断られたという。
 やっと教えてくれるジャーナリストがいたが、彼は「歓迎日本の皆様」とアラビア語で書かれた横断幕の日本語を「自衛隊の皆様」と教え、それを書かせて、 自らニュースとして日本に伝えた。地元が自衛隊を歓迎していると示すことは、自衛隊を送りたいと考えている人には好材料だ。実際、そのように使われた。

異様なほどの親近感

 サマワには日本人に対して異様なほどの親近感が満ちあふれていた。日本の「ジエイタイ」がくるという宣伝 はゆきとどいているが、「ジエイタイ」が軍隊だと思っている人はほとんどない。ソニーやトヨタのような企業がきて、職につけると期待しているのだ。八〇年 代、日本の援助で建設された病院は、いまでも市民に感謝され、日本の技術は高く評価されている。その技術で、水道や電気、学校、病院などが再建され、自分 たちも仕事がもらえると期待している。
 さらにシーア派の多いこの町では、湾岸戦争直後にフセイン政権打倒の暴動があり、参加した数千人の住民がフセイン元大統領に虐殺された。フセインにたい する憎しみは強いが、その一方で、フセイン打倒に手を貸さなかったアメリカにたいしても不信感を拭いきれない。日本なら、アメリカに「占領」された経験も あり、われわれを救ってくれるに違いない…というわけだ。
 日本の自衛隊が軍隊で、アメリカ占領軍の手先だと知り、雇用も増えないと知ったとき、失望と落胆が憎しみに変わるのはわけないだろう。すでにバグダッド では、日本は米英に次ぐ「第三の敵」と考えている人は多い。
 一四の部族からなるサマワは、たしかにほかの町より落ち着いている。部族長たちの目がゆき届いているからだ。オランダ軍が約千人、駐留しているが煙たが られている。もう軍隊はいらないというのが、サマワ市民の思いなのだ。

一番危険なのは米軍だ

 二人の日本人外交官が殺害された地域は、バグダッドより北の、ティクリット、ファルジャなど、蕫スンニ派 三角地帯﨟とよばれている地域だ。フセイン元大統領の出身地で、米軍が激しい攻撃を加え、いまもさまざまな武装勢力が入り乱れている。ジャーナリストも入 れないため、実情がわからないところなのだ。
 バグダッドからファルジャの病院に薬を届ける仕事をしている青年はファルジャに住んでいるが、「いまは危なくてファルジャに帰れない。薬も届けられない」という。
 フセイン政権残党も外国からのテロ勢力も多いが、一番危ないのは米軍だ。市民にたいしてすぐに無差別攻撃を行なうというのだ。しかも「掃討作戦」と称し て大規模攻撃し、結局殺されたのは民間人だけ、ということもしばしばで、市民の怒りは増すばかりだ。
 実際、五カ月ぶりにイラクを訪れ、一番変わっていたのは米軍だった。非常に危険な存在になっている。すぐ発砲する、いたる所で検問する。事件がおきると 偶然いあわせた人たちもふくめて、現場近くの市民をごっそり拘束する。米兵にしてみれば、いつどこから攻撃されるかわからないから、極度に神経質になって いるのだ。
 フセイン元大統領が捕まっても、占領軍にはイラク国民とイスラム社会からの支持はない。外国軍隊が一日も早く撤退し、イラク国民自身が統治する道を開か ない限り、戦闘は泥沼化し、放射能汚染はすすむだろう。

■劣化ウランは、核兵器や原発の燃料を生産する過程で出る残りカス で、99・8%がウラン。厳重に管理しなければならない「厄介者」だ。それを再利用した劣化ウラン弾は硬くて重く、戦車に対して絶大な破壊力を発揮した。 摩擦熱で一気に燃焼し、微粒子化して大気や土壌を汚染し、何十億年にもわたって消えない。劣化ウラン弾が大量に使われた湾岸戦争(91年)後、イラクでは 奇形児の出産や小児がんが増加の一途をたどっている。

いつでも元気 2004.2 No.148