元気スペシャル アメリカの草の根から わきあがる「イラク占領やめよ!」 「兵士をすぐ帰せ」と平和集会あいつぐ
円道まさみ
(カリフォルニア在住)
一〇月二日、ブッシュ大統領が戦闘終結宣言をして五カ月目、イラクでの米兵の死者が、とうとう二百人をこした。侵攻時の死者一三八人を大きく上回る。
同じ日、フセインの大量破壊兵器を捜索していた米調査団団長のデービッドCIA特別顧問は、連邦議会上下両院の情報特別委員会で、「大量破壊兵器は発見されていない」と報告した。
愛する者の死に対して
「9・11」事件から、はや二年。ブッシュ政権がこの間、アフガニスタンにつづいてイラクと強行してきた戦争政策が、はたしてアメリカ国民を?テロ?の威嚇から守り、9・11で奪われた命を少しでも癒す結果となったのだろうか。
9・11の遺族でつくるグループ「平和な明日をめざす9・11家族の会(ピースフル・トゥモローズ)は、九月一〇日、次のような声明を発表した。
「世界の人々からあつい支援を受けたことを感謝します。…しかし米国政府が私たちの愛する者の死に対してとった対応は、平凡な人々の常識に、真っ向から 反するものでした。二周忌を迎えるにあたって私たちは、現状の危険な方向にストップをかけ、真の安全と正義につながるアプローチを呼びかけます」
早く家族を故郷に帰して
この間、ブッシュ大統領は権力と支配を欲しいままにしてきた(と見える)。しかしいま、戦争政策のツケがアメリカ国民の生活を直撃し、二年連続で貧困層が増大(米商務省発表)。ブッシュ政権に対する不信感がつのり始めている。
ブッシュ大統領は、依然としてイラクが対テロ戦争の拠点だと強調し、九月一七日、新たに八七〇億ドルの追加予算を議会に要請した。しかし見通しのたたな い占領政策に、議会も渋い顔を見せる。
ブッシュ大統領の支持率は50%を割り込み、政権を握って以来「最悪のトラブルにある」と批評されている。ブッシュ大統領の地元、テキサス州でも、イラ クに派遣されている米兵の家族や退役軍人が「この戦争は間違っている。早く家族を帰してほしい」とデモをしている。
空爆で民主主義は運べない
九月二八日、秋の気配を感じさせる西海岸サンフランシスコで、イラク占領に反対する大規模な集会が開かれた。「米軍の即時イラク撤退」「兵士のすみやかな帰還」を求め、いままた大きな平和運動が立ち上がっている。
「世界に一人でも占領下に住む人がいるならば、私たちはその一人のために立ち上がるべきです」。集会主催者の言葉に、大歓声があがる。「空爆と占領に よって他国に民主主義を運ぶ国がどこにありますか! パレスチナもアフガニスタンもそしてイラクも、主権は米軍にあるのではなく、その国の国民にあるので す」
参加者はサンフランシスコの繁華街を思い思いのプラカードやポスターを掲げて歩く。「正義のないところに平和はない、アメリカは中東から撤退を!」
お母さんの肩で、しっかりプラカードを握っているオフィリヤちゃん(2歳)。プラカードには「占領ではなく託児所にお金を!」と書かれていた。
参考資料
Peaceful Tomorrowsws”Statement on the Second Anniversary of 9.11″
アメリカに平和の大統領を!
ひろがる草の根大統領選挙キャンペーン
きくちゆみ
(グローバルピースキャンペーン発起人)
デニス・クシニッチを知っていますか? オハイオ州選出で連邦下院議員を四期務め、二〇〇四年の大統領選挙に、民主党から出馬表明している人です。
ミサイルでなく医療援助を
私が彼の名を初めて知ったのはことし一月、彼の演説をメールで読んだときです。彼はこういっていました。
「私が描くアメリカとは、単独行動主義の代わりに世界調和を求める国であります。最初に攻撃するのではなく、最初に手を差し伸べるような大国。世界の 人々の重荷を軽くするために努力する国。援助を乞われたら爆弾でなくパンを、ミサイルではなく医療援助を、核物質ではなく食料を分配するのがアメリカなの です」…びっくりしました。
そして「核拡散防止条約の約束をもとに戻し、率先して核兵器全廃に向かう」「二酸化炭素排出削減のため世界各国と協力して地球の気候を保護する」とも。
私は日本の外交政策は、永田町ではなくワシントンで決められていると思っていました。さらに9・11以降のブッシュ政権を見るにつけ、アメリカ大統領を 選ぶ権利は世界中の人々がもっている、とまで思うに至り、アメリカ政府に注目してきました。なぜなら、アメリカ大統領の政策次第で、突然テロ国家にされ、 何の罪を犯していなくても爆弾で殺されるかもしれないからです。
クシニッチは、バーバラ・リー議員らも賛同している米国「平和省」設立の提唱者です。彼の政策を知れば知るほど、私も日本から、平和の大統領が誕生する のを後押ししたいと思うようになりました。そして、写真のクシニッチが手にしている本『デニス・クシニッチ/アメリカに平和の大統領を』を日本で出版しま した。
大量破壊兵器を廃止しよう
イラク戦争開戦の翌日、〇三年三月二一日には、クシニッチは全米新聞協会でこんな演説を行ないました。
「アメリカは、私たちを攻撃したことのない、そして差し迫った脅威でもない国に対して、一方的な先制攻撃を開始しているのです。9・11はイラクが行 なったものではありません。イラクはアルカイダや9・11との明確なつながりはありません。(中略)いま再び、二つの国(アメリカとイラク)の人々の希望 が、兵器を破壊するという名のもとに、兵器によって打ち砕かれています。
みなさん、国内の大量破壊兵器を廃止しましょう。失業は大量破壊兵器です。貧困は大量破壊兵器です。飢えは大量破壊兵器です。不十分な医療保障は大量破 壊兵器です。劣悪な教育は大量破壊兵器です。差別は大量破壊兵器です。足元の、国内の、こういった大量破壊兵器を廃止しましょう」
アメリカが大量破壊兵器の脅威を口実にイラクへ侵攻したとき、世界中の人が「世界で一番大量破壊兵器を持っているのはアメリカ自身だ」と思ったでしょ う。広島・長崎を知っている人なら「アメリカこそ、一般市民に核を二度も使った唯一の国じゃないか」と、つぶやいたはず。
彼の言動は、アメリカの平和や環境、人権、女性などの運動に関わるあらゆる人にとって、希望の灯となりました。
大企業が支配する二大政党制
日本では、アメリカの二大政党制が理想的であるかのように宣伝されていますが、実態は大企業が政府を支配 しており、民主党だろうと共和党だろうと、大差はありません。軍需産業やゼネコン、エネルギー産業の元重役がホワイトハウスを占拠している現政権はとても わかりやすいだけです。大企業・財界がホワイトハウスを、常に操ってきたのです。
民主党の有力候補、ウェズリー・クラークやハワード・ディーンを、マスコミは「平和の候補」として持てはやしていますが、彼らは「イラク戦争反対」とい いながらも、国防総省予算を削減しない。彼らなら財界にとって「安全パイ」なのです。日本で二大政党制を目指そうというのも同じことです。
著書『アホでマヌケなアメリカ白人』のなかで、映画監督マイケル・ムーアは「民主党はいいことをやるといって悪いことをやり、共和党は悪いことをやると いって悪いことをやる」といっています。
そんななかで企業献金を一切受け取らずに選挙運動をしているデニス・クシニッチはまったく異色の存在です。
民主党のなかの大統領指名選挙に立候補するためだけに、最低二千万ドルが必要という世界ですが、平和を願う人々の後押しで彼が出馬している、それが話題 になること自体が重要です。ここにきて、クシニッチの草の根キャンペーンはますます大きくなり、絶対不可能といわれた三百万ドルの壁も突破。最近では他の 候補者への寄付が伸び悩んでいるのに対し、支持者の数や寄付金の金額がぐんぐん伸びています。
インターネットの指名候補者投票では、ニューズデイとCNBCで1位、CNNでも3位と常に上位です。
私は日本をよりよくしたい、平和で持続可能な社会を創りたいと願うすべての人に、クシニッチを知ってほしいです。
デニス・クシニッチ公式URL http://www.kucinich.us
グローバルピースキャンペーンURL http://www.peace2001.org
ブッシュもコイズミも戦争中毒だ
絶版になっていたまんが『戦争中毒』を出版したフランク・ドリルさんも、「デニス・クシニッチはアメリカ 市民の良心のみならず、世界中の平和を求める人々の声を代表している」と語る。10月中旬、フランクさんはブッシュ大統領と同時期に来日。日本が2004 年度分の「イラク復興支援」として15億ドル(1650億円)拠出を約束したことについて、「ブッシュもコイズミも戦争中毒だ」と批判した。
いつでも元気 2003.12 No.146