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いつでも元気

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医療安全交流集会ひらく 医療事故なくすには? 全国のとりくみを熱く語って 患者の人権をまもり、患者とともに

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『転倒・転落事故を予防するために』のパンフを掲げ、報告する参加者

 全日本民医連では全法人・事業所をあげて、医療の安全性を向上させるために、安全対策のとりくみを進めています。三月七~八日に開催した「医療安 全交流集会」(名古屋)は、医師、看護師、リスクマネージャーなど四二〇人が参加。外部講師を招き、院所のトップによる真剣な論議が行なわれました。
 「安全性と医療危機管理」をテーマに講演した自治医大附属大宮医療センターの安達秀雄教授は「集団の力でディスカッションすることは民医連の強み、すばらしい」と今回の集会を評価していました。
 テーマ別には(1)転倒転落防止 (2)事例から学ぶ注射事故 (3)医療事故シンポジウムの三つの集会が行なわれるなど、経験を交流しました。

 

「転倒・転落防止」パンフを作成

 「転倒・転落」と「注射事故」は医療事故全体の六割を占め、これらの事故を減らすことは大きな課題となっています。
 「転倒・転落防止」の集会では、はじめに福島県立医科大学教授の安村誠治さんが学習講演。自身の調査データをもとに、寝たきりになる原因に転倒骨折が増 えていることや、女性が転倒しやすいこと、体力の衰えが転倒につながることから、きちんとした食事や体のバランス機能を鍛える散歩の重要性を紹介しまし た。

●対策チームの立ち上げを! 
 各地からは、北海道・札幌丘珠病院の「三年間で転倒件数を半減させたとりくみ」はじめ、山形・協立リハビリ病院、福岡・千鳥橋病院などが報告しました。
 千葉・船橋二和病院は「転倒・転落対策チーム」を立ち上げたことを報告。医師・看護師・作業療法士だけでなく薬剤師、施設課の職員も加わり、薬剤師は転 倒の原因になる抗うつ薬、睡眠薬が最小限におさえられているかをチェックし、施設課は環境整備やベッド、ドアなどの改良や修理に責任をもちます。院長も一 緒に安全パトロールをしています。
 それぞれ役割を明確にしてとりくむことで、担当者が積極的に役割を果たし元気がでたこと、また職種の役割が他職種にもみえるようになったといいます。
 安全モニター委員会からも「ぜひ、全院所でチームの立ち上げを」と呼びかけがありました。
 この日発行されたパンフ『転倒・転落事故を予防するために』も注目を集めました。全日本民医連安全モニター委員会が二〇〇一年一〇月から〇二年一月までの四カ月に四九病院・二施設で発生した転倒・転落事例一六一八例を集約・分析したもので、提言も大いに活用できます。

事故おこしやすい要因は?

 「事例から学ぶ注射事故分析」においては労働科学研究所の関由紀子さんが講演。二二の事例に触れて、注射業務の流れのどの部分に、事故をおこしやすい要因があるかを明らかにしました。
 「医療事故シンポジウム」では、全日本民医連安全モニター委員会によせられた医師からの報告を分析し、危険性の傾向と安全対策を各専門医(麻酔・整形外 科・循環器・消化器)が提示し、参加者と討議。いずれも個人による努力だけではなく、病院全体でとりくむべき課題であることが示されました。  全日本民医連安全モニター委員会委員長・小西恭司理事の集会への基調報告から。

「安全文化」の確立を

 いま、日本の「医療の安全性」の根本が問われています。
 安全な医療の実現は、航空・鉄道行政、食の安全などと同様に、個々の対策におわらない「安全文化の確立」が必要な国政の重要課題です。政府・厚生労働省の、機敏で総合的な対応が求められています。
 同時に、患者の人権を守り、医療事故を隠ぺいしないこと、事故を個人責任にせず、組織の問題としてとらえることなど、医療界の自己変革が強く求められています。民医連自身も、自己点検・自己変革が求められています。
 民医連は七〇年代より、人権を守る安全・安心の医療の方針を掲げ、一貫して患者の立場にたつ医療を追求してきました。八〇年代から看護集団を中心に全国 的に「ヒヤリハット」(ヒヤッとしたこと、ハッとしたことを集中し、分析する)にとりくみました。薬剤師集団は三〇年間副作用の事例を集中し分析する「副 作用モニター」にとりくんでいます。
 さらに二〇〇〇年から医療の安全モニターのとりくみを開始しました。医療事故の収集・分析を行ない、様々な教訓を得、改善提案の立案と実践を行なっています。
 その基本的視点は次のとおりです。

  1. 患者の人権を守り、共同の営みの医療を発展させる。
  2. 患者・国民と共同して安全な医療の実現と質の向上を目指す。
  3. 安全文化を日常の医療の中に定着させる。
  4. 各医療団体、患者・国民と話し合い協力し、教訓となるヒヤリハットの分析や医療事故を公表し、再発防止のために努力する。
  5. 医療事故を社会的な問題として捉え、診療報酬の改善、人員体制の保障をもとめる。医療事故の原因究明、再発防止、被害者救済などを目的として第三者機関の設置を求める。

 この集会を安全な医療を推進する跳躍台としましょう。

いつでも元気 2003.6 No.140