特集1 列島ゆるがす”三割負担凍結せよ!”
意見広告、街頭宣伝、地方議会でも次つぎ
自民党支持を凍結/小泉不支持決めた/沖縄県医師連盟/當山委員長にきく
約束違反の小泉さん 早くやめなさい
健保窓口三割負担など負担増に反対する四師会(医師会、歯科医師会、薬剤師会、看護協会)の行動がひろがるなか、「自民党支持凍結・小泉首相不支持」を打ち出したのが沖縄県医師連盟。當山護委員長(県医師会副会長)にききました。
當山さんは那覇市内で開業している形成外科医師。明るくおしゃれな待合室に「自己負担3割導入ダメ! 高齢者の自己負担増ダメ!」のポスターがあった。
活発に行動されていますね。「意見広告を五週連続で『琉球新報』『沖縄タイムス』に出し た。県議会の決議を働きかけているが、全国の県議会自民党に山崎幹事長から『倒閣運動につながるので自粛するように』と指令が出た。妨害はあっても、全会 一致で、県政与野党を問わず県民のため国民のため働いているのはだれかを示してほしいといっている。その促進のため街頭でビラ配りもした。全国で半分の議 会がやれば大きい。ほんとに小泉さん倒れるね。倒したほうがいい。僕がそういったと書いてください」
手ごたえは。「ある。四師会いっしょに働くのは初めてだが、これがよかった。医者だけの動きで は特権階級の運動と見られる。薬剤師、看護師が加わり浸透度が増した。医師はビラ配りなど不慣れだが、やるべきだ。三割負担はわかりにくい。理解してもら うには、ビラをとっかかりに話し合い、取材も受ける。くりかえし、根気づよく、アピールする。選挙資金なんかばらまくよりずっといい」
窓口三割負担になぜ反対?「われわれは政府との話し合いで、医療経済が苦しいというから診療報 酬の改定(実質マイナス二・七%)をのんだ。それで受診抑制、医療費削減になったはずだ。私たちの試算では、政管健保の積み立てが二〇〇六年には一兆円に もなる。このうえ窓口負担をふやすのは、必要もないし筋が通らない。公的保険は、病気になったら元気な人が助けましょうという助け合い。沖縄でいう『ゆい まーる』の精神です。そのために国民はもう負担している。本来、窓口負担はゼロであるべきだ。受益者負担というが、窓口へくるのは一番困っている人で、病 気になった人から二重どりする『受難者負担』です。『病院にくるな』と受診抑制をますますひどくすること以外に、何の意味もない」
沖縄は県民所得も低く、失業率は全国最悪。診療報酬や老人医療費の改悪で、開業医への影響は?「あ りますよ。年に五百万円くらい減収だろう。三割負担でますます受診が減る心配は深刻だ。五百万減れば雇用に響く。沖縄で二百の院所が一人ずつ減らしても二 百人が失業する。でなければ医療の質を落とすか。よい医療という観点からゆゆしいことだ。いま沖縄の健康長寿が危ない。男性の平均寿命は全国4位から26 位に落ちた。老後はあたたかい沖縄で長生きしよう、なんて人はいなくなるのでは」
自民党支持の凍結、小泉さん不支持を決められたのは?「基本的には、三方一両損の内容だ。国の 損を認めない三方一両損とは何であるか。財務省主導でひどいからだ。それにたいしてわれわれがいくらものをいっても自民党は、何も変わらない。与党単独の 強行採決で修正もしないで健康保険法などの改正案を成立させた。これでは何のために支持しているのかわからないということです」
「小泉さんの医療改革は医療をつぶす『医療破壊』だ。いまの健康保険による医療から、株式会社による医療や混合医療(高額医療には営利企業が参入)にし ていく。まじめにやる人ほどきびしい時代です。医療は基本的にオートメ化できず、人海戦術。ウンチの始末、深夜の往診など、こまやかな結びつき、こまやか な話し合いで成り立つ。そのたいせつな部分を切り捨ててしまうと、医療は弱肉強食の世界になる。小泉さんの周囲には企業で成功した『勝ち組』しかいない。 良心的な負け組のことはわからない」
小泉さんにひとこと。「早くやめてほしいよ。取り引きやバーターはしない。そんなことでは、われわれの運動がきたない運動になる。首相には解散権があると開き直るなら、『どうぞ』というだけだ。早く選挙をして、こんな医療破壊がいいかどうか、民意を問いましょう」
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待合室に張ってあった4師会のポスター |
自民・公明政府の足もとがゆれて
「許すな!三割負担」の声がたかまっています。東京・日比谷公会堂で開かれた2.3国民集会には屋外にまであふれる四二〇〇人が参加(関連44ページ)。
一二日。日本医師会は、この日を「闘争日」に設定。大きな行動にとりくみました。同日、野党四党が初めて共同で「三割負担凍結法案」を、衆議院に提出。 健保本人と退職者、家族(入院)の医療費自己負担を現行二割から三割(一・五倍)に引き上げることを「凍結」させる内容です。
自民・公明政府は、野党提出の法案を審議さえしない構えで、地方議会での意見書採択に応じるなと圧力もかけています。しかし、各地で次々に「凍結を」の意見書を採択。国民生活破壊の自民・公明政府の足下をゆるがしています。
追いこまれたか、とんでもない民医連攻撃
国会でとんでもない民医連攻撃
西野議員のねらいはどこに?
そんななか、二月六日の衆議院予算委員会で、自民党・西野あきら議員が全日本民医連の医療事故・事件をとりあげ、事故がおきるのは、病院が日本共産党の選挙活動をしているからだというとんでもない質問を行ないました。
野党四党はただちに「内容が不適切」として抗議、謝罪を要求。全日本民医連は緊急記者会見を行ない抗議しました。
質問の狙いはどこにあるのでしょうか。
Q.民医連の医療事故をとりあげたのは民医連の事故が多いということでしょうか?
A.違います。ことさら民医連の病院の事故だけとりあげた異常な質問です。
日本病院会が会員医療機関に行なったアンケート(回答六〇八施設)では、一施設で平均年間一三〇件の事故が報告されています。それを、テレビ中継される予算委員会の場をつかい、民医連の病院の事故のみをとりあげたのです。
医療事故をなくすことは国民的な課題です。しかし西野議員の狙いは「ぜひ医療ミスがゼロになるように…厚生労働省としても取り組んでいただきたいという ふうに思います。これについては時間の関係もありますので答弁を求めません」という発言に明らかなように、真剣に医療事故をなくそうという立場とは無縁で す。党利党略といわざるをえません。
Q.四つの病院の例を持ち出し、「看過できない」といっていますが、事故の調査はどうなっているのでしょうか。
A.すすんで事実を公表し、再発防止に懸命につとめています。
医療事故がおきたときには、民医連は事実を公表して原因を明らかにし再発を防止するという姿勢が、もっとも大切だと考えています。その立場で、四病院ともすすんで事実を公表し、内部だけでなく外部の方の調査も受け、二度とおこさないために懸命にとりくんでいます。
西野議員の質問は、たとえば耳原総合病院での院内感染による死亡は堺市の専門調査報告書でも明確に「三人」としているのを「七人」というなど、事実も経過もねじ曲げやウソが数多くあります。
セラチア菌については、届け出義務がなかったにもかかわらず、被害を最小限にくいとめるため専門機関の協力をえようとすすんで届け出たもので、その教訓 をまとめ、二度と同じ事故がおきないよにと全国に普及しています。同病院の大田豊隆副院長は厚労省の依頼で、二度も院内感染問題で講演しているほどです。
西野議員はこうした事実はまったく無視し、事故は、民医連の病院が選挙のとき組織ぐるみで共産党の「集票マシン」になるからがおきるのだという中傷をくりひろげているのです。
Q.民医連は共産党を支持していないのですか?
A.組織として特定の政党を支持することはありません。
どの政党にせよ、民医連の病院や診療所が、組織として特定の政党を支持することはありません。職員一人ひとりは、思想信条の自由があり、政治活動も自由です。職員が支持する政党の後援会をつくり活動するのは当然のことです。
自民党や公明党は、企業や創価学会など組織ぐるみの選挙活動をし、団体献金も野放し状態です。しかし、民医連が、団体献金をしたことは一切ありません。
Q.民医連をつくったのは共産党だといっているようですが。
A.戦後の苦しい時期、貧しい人のため共産党が診療所をつくったのは事実です。
共産党の志位和夫委員長は翌日の予算委員会で西野質問に対しこういっています。「戦後すぐの時期、多くの貧しい人たちが医療を受けられなかったとき、共産党が診療所をつくった。それは共産党にとって誇りとする歴史です」と。
民医連は、そうした診療所もふくめて、民主的な医療機関が集まって一九五三年に全国民医連として独自に結成されたのです。
Q.なぜこのような中傷がされるのでしょう。
A.社会保障を守る運動の先頭にたつ民医連を、国民から切り離したいのです。
医療改悪反対の運動はじめ、社会保障をまもれという国民世論が大きく広がっていることに、脅威を感じていることのあらわれといえます。こうした運動の先頭にたってがんばっている民医連を、国民と切り離そうという戦略がみえます。
ここ一~二年、全国各地で出所不明(多くは創価学会・公明党と判明)のビラや署名などで、民医連を中傷するという事件が続いています。「病院をつぶす署 名です」とはっきりいうものまであります。それが国会の場にまで持ち込まれたということで、絶対に許すわけにはいきません。
自民・公明という政権与党が、一医療機関を名指しで攻撃するというのは異常であり、国民生活をどこまで破壊するのかという国民の怒りに、まともにこたえられないことを証明しています。
民医連は地域住民のみなさんと力をあわせて、権力によるこの不当な中傷・誹謗をうち破っていきます。どうぞ、ご理解とお力添えをお願い致します。
■川崎市当局は「(川崎協同病院が)現段階で考え得る限りの事項について調査及び検討」しており、対策についても「同病院の強い意志があらわれている」。「この取り組みの成果が全国の医療機関及び医療機関関係者の参考となるよう期待する」と述べています。
■耳原総合病院でのセラチア菌感染問題の調査班責任者で大阪大学微生物研究所教授の本田武司さんは「まじめに自主公表し、教訓を広げようとする病院を犯人 扱いする報道では、今後こうした院内感染や医療事故を自主的に公表しようとする医療機関は出て来なくなる」とくり返し語っています。いする報道では、今後 こうした院内感染や医療事故を自主的に公表しようとする医療機関は出て来なくなる」とくり返し語っています。
いつでも元気 2003.4 No.138