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いつでも元気

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診療報酬引き下げと抱き合わせの「特定療養費」で患者にしわ寄せ

小泉内閣の患者いじめ、患者負担増はただごとではありません。
 サラリーマンの医療費を三割負担にする、高齢者の窓口負担を大幅に引き上げるなどのほか、保険診療そのものを制限し、保険はずしをすすめようとしています。

  7万円の負担が約2倍に!? 他の病院での入院も通算して

 その一つが、六カ月を超える長期入院患者の入院費用。外来で受けるのと同じ治療は保険でみるが、それ以外の費用は保険からはずし患者負担にする、というのです。
 保険給付からはずされる額はまだ発表されていませんが、一カ月につき五万~一〇万円が保険外負担になるといわれています。
 そうなると、これまで月に約六万円(医療費一部負担と給食費)、おむつ代などを含めても七万~一〇万円くらいだった患者負担が、十数万円から二〇万円にはね上がることになります(左図)。
 また、ほかの病院に入院していた期間も通算されるとしています。以前、同じ病名でほかの病院に六カ月以上入院していたら、再入院のときは初めから、ほとんどが保険外ということになってしまうのです。
 これまでも、入院が長引くと病院に入る医療費が減るしくみのため(一般病院では三カ月こすと最初の二週間の医療費の半分近くになる)、いわゆる入院患者 の「タライ回し」ということがありました。それもさせないぞ、ということです。

  社会保障を一気に破壊 「聖域なき…」というけれど

 なぜこんなことをするのでしょう。  なにより医療費にたいする国の支出を、二八〇〇億円減らすためです。
 「聖域なき構造改革」を叫ぶ小泉首相は、公共事業も本予算で一兆円も削ったのだから社会保障も聖域ではないと大ナタをふるいました。しかし公共事業には、補正予算で結局二・五兆円もの積み増しをしたのです。
 「自民党をぶっ壊す」といった小泉首相ですが、やっていることは自民党本流。高支持率を背景に、いままで自民党がやりたくてもやれなかった社会保障破壊を一気にやってのけようとしています。
 大幅な保険はずしもその一つ。狙われたのが長期入院患者です。
 厚生労働大臣の諮問機関である「中央社会保険医療審議会(中医協)」は、「入院の必要のない人が家庭の事情で長期に入院して、保険医療財政を圧迫してい る」といいます。そういう人には出てもらう、出られないなら自費で払え、そうでなければ家族が苦労して自宅療養している人に対して不公平だというのです。

  受け皿なしに追い出すのか 介護保険料徴収してるのに
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療養型病棟で

 ほんとうに入院の必要のない人が、長期入院をしているのでしょうか。
 六カ月を超す入院患者の調査(昨年11月実施・四二二六例)を行なった全国保険医団体連合会(保団連)の滝本博史事務局次長はこういいます。
 「在宅で療養できる体制や、入所できる介護施設などがあれば、入院しなくていいという人は、今回の調査でもたしかにかなりおられます。しかし、中医協がいうように、退院できるかというと話はぜんぜん違います」
 たとえば87歳のAさんは五年間入院。脳血栓症で血栓がおきやすく、全盲です。93歳のBさんはパーキンソン病、腰椎症でほぼ痴呆、寝たきりで一四年入 院。脳梗塞、糖尿病、痴呆のCさんは73歳。独り暮らしで特養待ちですが、三年先といわれ、すでに四年半入院…。
 「この方たちが退院できないのは、まず特別養護老人ホームや介護保健施設の整備が遅れていて入れない、ホームヘルパーや介護サービスが不十分だったり負 担が重かったりして、在宅で療養できないからです。富山や京都の保険医協会が行なった特別養護老人ホームなどの待機者調査によると、入所に一〇年待ちとい う施設もあります。
 介護保険がはじまって、四〇歳以上の国民はみんな介護保険料を徴収されているんですよ。必要な基盤整備をするのが先でしょう。受け皿なしに、病院から追い出すことだけやろうなんて、本末転倒。絶対に許せません。
 また医療が必要で、病院でなければむずかしい方も多いのです。がん末期の方とか骨折している方もいます」

  大事な問題を国会審議なしで決めるとは

 滝本さんは、もう一つの大きな問題点を指摘します。
 「こんな大変な問題なのに、国会審議がされないのです。中医協が答申すれば厚労大臣の告示だけで、診療報酬の改定という形で決まってしまう。
 この保険はずしは、これまでの厚生行政でもなかった、大変な?改定?です。本来なら、保険給付や患者負担の率は、健康保険法なり老人保健法のなかに入れて、国会で審議して決めるべきです」
 こうした「保険はずし」のことを「特定療養費」制度といい、始まったのは一九八四年。それまで一〇割給付だった健保本人に一割負担が導入されたのと同じ年です。

  史上初の診療報酬引下げ 差額ふやして患者負担増に

 もともと医療保険制度では、保険診療と保険外診療とが混じることは認めていません。
 ところが八四年に、「医療技術の進歩に対応する」などの理由で、高度先進医療や差額ベッドなどで差額をとることを認め、その場合の基礎的医療に対し「特定療養費」を支給するとしたのです。歯科の「差額」と同じ考え方です。
 今回の「特定療養費」の拡大は、「長期入院」を対象にしたことにはっきり見られるように、保険はずし、保険診療の制限という性格を急速に強めました。
 ほかに特定療養費を拡大する分野は、差額ベッド料(規制緩和し増やす)、二百床以上の病院の再診料、医師の指名料、複数の医師に意見を求める場合の助言料などがあがっています。
 厚生労働省は、ことし史上初めて、診療報酬本体の引き下げを実施するとしていますが、同時に、前述したような特定療養費の拡大も抱き合わせで実施しようとしているのです。
 医療機関の収入が減る分を結局は患者にしわ寄せし、ひどい患者負担増をもたらすことになります。

  長期入院にはそれぞれ理由があるのに

 東京・代々木病院の吉田希以子事務長はこういいます。
 「四月時点で六カ月を超える入院患者さんを調べてみると、入院患者一四〇人中、五人でした。当院の平均入院日数は一七日なのでもっと少ないかと思っていましたが。
 二人は在宅を希望されていますが、病状改善がみられなくてむずかしい。家族が介護できる状態でなく転院待ちの方はいつ転院先が見つかるか見通しがたちま せん。また寝たきりや感染があると受け入れてくれる転院先はありません。やむをえずの長期入院なのに負担が増えたら払えなくなる人も出てくるでしょう。
 差額をとらずにがんばっている民医連の病院など、ほんとうに苦しくなります。共同組織の方と力をあわせて、こんな改悪は何としてもやめさせたい」

取材・斉藤千穂記者/写真・若橋一三

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(1カ月につき) (1カ月につき)

いつでも元気 2002.3 No.125