民医連事業所のある風景 東京/根津診療所 患者の生活背景も考慮した思いを寄せる医療活動
開設60年の歴史
根津診療所は1961年9月に開設され、今年は開設60周年です。開設当初は一軒家のなかの5坪あまりの小さな診療所でした。当時の「本郷健康文化会」が行っていた健診・予防相談活動をベースに、地域の住民・働く人々が開設運動をすすめ、設立されました。1989年、現在の場所に移転をしました。
診療所がある東京都文京区根津は、隣接する文京区千駄木・台東区谷中を含め「谷根千」と呼ばれる地域にあり、昔ながらの長屋や古くからの寺院などが存在し、坂道が多い地形と相まって風光明媚な風景を作っており、昨今は街並みを散策する観光客が増えています(現在、コロナ禍で少なくなりましたが)。
きめ細かい対応の心がけ
外来診療は一般内科・皮膚科・糖尿病外来を中心に展開しており、外来患者数は月約670件と規模的には大きくはないのですが、家族の相談も含めた認知症対応や、疾病だけではなく生活状況や家族状況も考慮したきめ細かい対応を心がけています。
コロナ禍で東京の感染者が増えているなか、外来患者数はいったん減少しましたが、診療の中断がないように、電話再診も含め対応を行い、以前の状況に近づきつつあります。訪問診療は月約95件の方を管理しており、ケアマネジャー、地域包括支援センター、行政との連携も合わせ、在宅での生活をフォローしています。また、各大学病院や都立病院から紹介があった患者のがんターミナルケアにも力を入れ、看取りの方は、人生の最期を健やかに迎えられるようとりくみを行っています。都心部に位置する地域の特徴として、核家族化の進行の影響である独居または夫婦2人暮らしの高齢者の世帯が多く、また親子で同居しながら意思疎通が図られない家庭なども見られます。患者、本人のみならず、家族や関係者も含めた療養環境、生活環境の整備や調整は大変ですが、一層力を入れてとりくんで行きます。
地域の健康づくりのために
法人としてとりくんでいるヘルスプロモーション活動の一環として、2018、2019年に「すこしおチャレンジ」という企画を行いました。これは尿サンプルから1日推定塩分量を算出する機能を生かし、事前に医師、管理栄養士から減塩の学習会を行い、その後2週間減塩を心がける生活を送ってもらい、開始前と開始後の塩分量を比較するといった内容です。毎日の食事のなかで、減塩の習慣づけがいかに大事なのか、実感してもらうよい機会になったと思います。またフレイル予防の観点から、自治体健診のときに握力測定を行い、法人が推進しているフレイル予防班への参加呼びかけなどの活動も行っています。
昨年9月より所長が交代しました。コロナ禍のもと、患者をはじめ地域の皆さん大変な状況に陥っていますが、こんなときだからこそ皆さんに思いを寄せながら、医療活動に邁進していきたいと思います。
(根津診療所 事務長 小沢 信幸)
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