民医連事業所のある風景 高知生協病院 「在宅医療」と「地域連携」に大きく踏み出し 患者・家族の多様なニーズにこたえる機能を強化へ
誰もが安心してかかれる診療所がほしい
高知生協病院は、高知市中心部より西に車で30分程度すすんだ小高い丘の上に建つ、病床数114床の中小病院です。1950年代に起きた台風被害の際に全日本民医連からの救護を受け、それを機に「誰もが安心してかかれる診療所がほしい」という要求が高まり、開設の準備がはじまりました。1966年8月に旭診療所が開設し、その後「センター病院もほしい」との声から1983年に高知生協病院が開院。開設以降は無医地区への診療など「無差別・平等」の医療活動だけではなく、振動病・じん肺などの労災職業病、高知パルプの地下水汚染調査、被爆者検診など、人々の命や人権、健康にかかわるさまざまな社会問題に対して積極的にとりくんできました。人々の「健康で長生きしたい」という想いに応えるため、組合員の方々と「地域丸ごと健康づくり」をすすめ、現在は組合員5万人を超える医療生協となりました。
経営危機を乗り越えて
2011年に高知医療生協は7億円を超える累積欠損を抱え、資金ショート寸前の経営危機をむかえました。
全日本民医連による経営対策委員会が設置される事態となりましたが、これを機に経営構造を一新(組織のあり方や経営へのとりくみを全面的に見直しました)。我流の会計基準を脱却し、また、自院の立ち位置を高度急性期病院からの受け皿としての回復期機能、そして高齢者の急性期を受け入れる入院施設として焦点を絞り、ポジショニングの明確化にとりくみました。結果、当院のポジションに見合う、地域包括ケア入院料の新設取得などにより大きく収益を伸ばすことができました。
賃金・退職金改定や病棟編成などの大きな変化に戸惑う声もありましたが、「病院をつぶすわけにはいかない」という職員の奮闘によって、2019年現在で累積欠損は1億円をきることができました。
在宅で暮らす患者さんをささえ、地域医療を守る
当院のめざす医療活動を後押しするかのような2012年診療報酬改定もあり、「在宅医療」と「地域連携」へ大きく踏み出すことに。
同年4月には、地域の開業医さんたちと連携して、機能強化型の在宅療養支援グループ「じきいくネット」を結成し、在宅患者さんの急変時の受け入れと、治療してまたもとの在宅(地域)へ帰すという関係性(連携)ができあがりました。また2016年には病院敷地内に「在宅療養センター」を開設し在宅医療の強化をはかり、患者件数も200件に近づく程に増えてきました。
今後は医療・介護・生活支援・地域資源などを総合的につなぐ機能を強化するため「コーディネートセンター」の設置を予定しており、患者さんや家族の多様なニーズに対応していきたいと考えています。
(高知生協病院 事務次長 薮田 真吾)