第43期第2回評議員会方針
2019年2月17日 全日本民医連第43期第2回評議員会
第1章 第43回総会からの中間点に立って |
はじめに
第43回総会から1年、激動の時代の中で確実に、平和、民主主義、人権の力強い歩みがすすめられています。
第43回総会方針は、今日が、憲法と平和、国のあり方をめぐり、新たな段階でぶつかり合う時代であること、平和と人権が大切にされるよりよい社会を創り上げていく力は、一人ひとりの市民であることを確認しました。そして、共同組織の仲間と力を合わせ、より広範な連帯で平和と憲法を守り抜くこと、貧困と格差・超高齢社会に真正面から向き合う日常の医療・介護の実践、権利としての社会保障の確立をめざして奮闘しようと呼びかけました。
戦争する国づくりを仕上げようとする安倍9条改憲の発議は、3000万署名などの市民の運動によって昨年の通常国会に続き、臨時国会でもできませんでした。
沖縄のたたかいは、憲法にもとづく、本来の民主主義、地方自治の姿を問い続けています。地方の民意を踏まえない施策は許されません。今、辺野古新基地建設ストップの声は、世界中に広がっています。
旧優生保護法による強制不妊手術などの被害者が「憲法13条に違反するもの」として毅(き)然(ぜん)と裁判を起こしました。また、政府・行政機関におけるパワーハラスメント、セクシャルハラスメントに対して被害者が声を上げました。人権の回復を求める当事者の勇気が、人びとの尊厳、人権の擁護を大きく前進させました。
第2回評議員会は、第44回総会までの折り返しです。憲法とくらしを守る上で重要な3月からの統一地方選挙、7月には、参議院選挙が行われます。憲法を守り抜き、共同組織とともに、住民本位の地方自治の発展、安心して住み続けられるまちづくりをすすめましょう。医療・介護活動の2つの柱(以下「2つの柱」)を旺盛に実践し、経営、職員の確保と育成、運動との好循環を創り出しましょう。
第2回評議員会は、第43回総会からの1年間の総括と到達点、情勢認識を一致させ、第44回総会へ向かう重点課題を全会一致で決定しました。また、第43期第1年度決算と第2年度予算を全会一致で承認しました。すべての県連・法人・事業所で評議員会方針を具体化し、重点課題を実践していくことを呼びかけます。
第1章 第43回総会からの中間点に立って
第1節 全般的な到達点
最大の運動とした安倍9条改憲発議をさせないとりくみは、安倍政権の目標であった2018年の改憲発議を許しませんでした。学習運動を力に、「安倍9条改憲NO!憲法を生かす全国統一署名」は全国で約1400万、民医連では100万を超え、300万に向けてさらに前進しています。
第39回定期総会で民医連綱領を改定し「私たちは、この憲法の理念を高く掲げ、これまでの歩みをさらに発展させ、すべての人が等しく尊重される社会をめざします」としました。今、その真価が問われています。沖縄県知事選挙は歴史的な勝利となりました。沖縄民医連と全国の職員・共同組織の奮闘を誇りとしたいと思います。
第14回看護介護活動研究交流集会、人権としての社保運動交流集会、介護・福祉責任者会議などで、「受診に結びつかず、救うことができなかった患者事例を振り返り、見えてきた病棟看護師の役割」「研修医のSDHの視点での地域レポート」など事業所で、「2つの柱」の視点や実践が広がり、運動と職員養成の力となっていることが共有されました。
第14回全日本民医連共同組織活動交流集会は、すべての県連から共同組織の代表が参加し、この2年間の多彩な活動を共有し成功しました。共同組織は、月間を通じ370万を超える組織に前進しています。
民医連に共感する医学生が増加、2019年2月14日時点で、奨学生は502人、また、190人近い新卒医師が2019年度に民医連で研修を予定しています。
医師政策に関する論議は、「未来に向かって民医連の医師と医師集団は何を大切にするのか」(案)の提案に至り、全国討議をすすめています。
経営面は、2013年度から1%以下の経常利益率が続き、資金的な厳しさも広がっています。地域の中で事業所の存在意義を鮮明にし、共同組織とともに打開をはかりましょう、2019年度、すべての法人で明確な前進をはかることを呼びかけます。
各地での集中豪雨、大型台風、地震など、自然災害への支援に力を結集しました。岡山県倉敷市の真備地区では医療生協組合員10人が亡くなられるという痛ましい事態となりました。「困難あるところに民医連あり」、「困難は、全国の連帯の力で」と多くの仲間が支援し、乗り越えてきました。
1月7日、水没で診療機能を失った真備歯科診療所が診療を再開しました。実践を積み上げてきたMMATや災害医療、災害時の事業所のマニュアル整備など引き続き強めていきます。
第2節 各分野の概要
(1)医科・歯科・介護
経済的困窮評価支援ツール(試行版)が完成し活用に入りました。J―HPHは、現在97の事業所が加盟する組織となりました。J―HPHカンファレンスには、民医連の事業所から積極的に参加し、無差別・平等の民医連綱領の立場から健康権に照らしたヘルスプロモーションの実践を持ち寄りました。
QI事業が厚生労働省の事業として6回目の採択をうけ、厚生労働省共通指標を含む指標の測定を開始しました。QI推進士セミナーには61人が参加、前期とあわせて全国で152人の推進士が養成されました。
カナダでの貧困治療の実践を学ぶこと、民医連の次代を担う医師の成長の機会とすること、社会正義のためにたたかう志を持ったカナダの医師との連帯を築くことを目的に「民医連スタディーツアーinトロント」を開催しました。さまざまな場面で困難な状況にある患者や地域のニーズを理解し正面から応えようとしている姿勢、公正な医療と医療の質の改善、その実践にかかわる研究活動などの学びを活かしていく必要があります。精神医療福祉交流集会を小児医療委員会、産婦人科医療委員会、歯科部が協力して開催し、多科連携による症例検討会を実施しました。
歯科分野では、今期より歯科衛生士が部員に加わり、歯科の全職種での部構成となりました。6つの重点課題(①「歯科事業所完結型」の歯科医療からの脱皮、②『歯科酷書第3弾』を学び活用して、保険で良い歯科医療の運動につなげていく、③歯科奨学生の確保と養成、④民医連歯科読本の改定、⑤歯科衛生士、歯科技工士、事務系幹部の人づくり、後継者育成、幹部養成、⑥黒字体質づくりから全県連に歯科を、そしてあらゆる事業所に対応する歯科づくり)を確認してきました。また、医科や介護・福祉との情報共有のための基本的な知識や、歯科におけるチーム医療、患者の情報共有の方法などについて学び、歯科からの情報発信の実践をすすめていくこととしました。『歯科酷書第3弾』を発表後、活用講座の開催、国会要請行動などをとりくんできました。今後は、保険で良い歯科医療を求める運動にもつないでいきます。
介護分野では、2018年改定報酬への対応を中心とする事業基盤の強化を柱に、介護・福祉分野のとりくみが総合的にすすめられてきたことが特徴です。介護実践・事業活動の面では、職員体制の厳しさが続く中、改定対応を通して、退院支援におけるケアマネジャーと病院との連携、リハビリ部門や歯科との連携、老健と入院・在宅部門との連携の強化がはかられるとともに、事業所の機能やケアの質の向上が追求されています。居宅介護支援や通所介護などをはじめとする事業所の再編や職員の働き方の見直しにとりくんだ法人もありました。他方で、医療機関との連携の難しさや、医療・介護の改定内容に対する相互理解の不十分さを指摘する声も寄せられています。
この間の各地の災害の経験から、災害対策マニュアルの作成、マニュアルにもとづいた災害訓練の実施を呼びかけ、災害訓練の日程などの共有が始まっています。災害時の医療・介護費の減免や避難所施設の改善の要望をすすめてきました。「MMAT必携」を発行し、9月からMMATメンバーの募集を開始しました。
(2)深刻な民医連経営の現状
①民医連経営の現状と改善した経験
2017年度の医科法人の経常利益は34億円(収益比0・5%)で、予算77億円に対し、マイナス43億円の大幅な未達となり、経常利益予算を達成したのは28%の法人にとどまりました。7割の法人は必要利益の確保ができていない状況が続いています。事業キャッシュフローは2017年度平均で、収益比5・9%と全体として低迷しており、金融機関への1年以内返済額とリース料(固定的支出)を事業キャッシュフローでまかなえない法人が32%となっています。また、2017年度経営実態調査では、中期指標5ポイント以上に該当したのは59法人にのぼりました。このまま推移すれば1~2年以内に資金破綻が懸念される法人もあり早急な対策が必要となっています。2018年度上半期のモニター医科30法人で経常利益予算を達成した法人はわずか7法人とさらなる苦戦が続いています。『民医連医療』誌で経営改善をはかった法人の経験を発信してきました。経営が改善した法人に共通しているのは、民主的管理運営を通じて、全職員参加の経営の力が発揮されたことです。その教訓は、①経営幹部集団のリアルな経営認識と具体的な行動、②全職員での経営実態と方針の共有、③地域における事業所の存在意義の共有、④管理部のマネジメント力と職員の行動変容、⑤全国の教訓を学ぶ行動と民医連の連帯の力の発揮です。
さらに、医師の確保と養成を法人と事業所の経営課題の柱の1つとして捉え、経営改善の中心に医師が座ったことや、労働組合と協議を積み重ね経営認識を一致させ、事業の発展と労働条件の改善を位置づけてとりくんできた経験も生まれています。
②介護・歯科分野・薬局法人の状況
介護事業の経営は、全体として厳しい状況です。損益が算出されている61法人の経常利益率は前年比でプラス0・8%からマイナス1・1%に転じており、黒字法人の比率が減少しています。経営が悪化した法人は40法人と6割を占めました。2018年の改定率は辛うじてプラス0・54%となったものの、前回のマイナス改定の影響をまだ引き継いでいる中で、通所介護などの基本報酬の引き下げが加わったことが要因として挙げられます。加算を算定してもコストが上回って収支の改善に必ずしもつながらない、今改定そのものの構造が反映している側面もあります。全体として、管理者が同時改定への対応方針を明らかにし、加算算定の意義を踏まえ、全職員参加型のとりくみをつくり出している法人では経営の改善がはかられています。
歯科分野は、上半期経営調査の提出事業所合計で3億3000万円の黒字、収益比約4%、68・4%の事業所が黒字を確保しました。
薬局法人は、2018年度薬価改定で約8%の薬価引き下げとなりました。外来処方箋の減も重なり、薬局法人の収益が大きく減少しています。2019年10月の薬価改定、2020年以降の毎年の薬価改定も予定されています。民医連の保険薬局活動を維持発展させるため、経営環境の変化に対応した経営管理の強化が求められています。
③福島・郡山医療生協経営対策委員会の到達点
資金ショートの危機にあった郡山医療生協に対して、経営対策委員会を設置し、管理体制の変更、事業所別予算の作成、銀行交渉、毎週の現地での指導・援助、月次の予算管理の点検など全日本民医連、北海道・東北地協をあげた支援を行ってきました。1月末現在の経常利益は、予算比208・9%、利益率3・9%、資金の月商倍率は1・22カ月となっています。引き続き中長期経営計画の策定と2019年度予算編成、管理運営の改善、医師課題、また福島県連の県連機能強化もすすめていく必要があります。
(3)医師の確保と養成のとりくみ
第43回総会方針は、医師養成新時代に、私たち民医連の医師集団の役割を探求し、その集団形成にとりくむことを提起しました。また、第1回評議員会で、医師養成新時代、民医連の医師養成・医学生対策の前進への契機をつくろうと呼びかけ、第2回評議員会までの半年間、5つの課題(①医活委員会と共同して「2つの柱」の実践をすすめること、②民医連の医師養成をさらに発展させていくこと、③医学対活動2つの任務をしっかり実践し、受け入れ200―奨学生500のロードマップ達成に向けたスパートをかけよう、④多職種で大いに論議し民医連の医師集団形成での前進を築こう、⑤「2つの柱」の実践のためにスケールメリットを活かした調査、研究、教育の発信を)を提起し、実践してきました。
①受け入れ200、奨学生500のロードマップの到達点
初期研修医受け入れ数、奨学生数ともに、この間のとりくみが成果へとつながり、着実な前進がみられます。医学対決起集会では、「2つの柱」の実践と結びついた医療活動と学生との結びつき、SDHを意識した医学対活動、2014年11月に理事会決定した「早急に求められる医学対担当者の育成と集団化のために」を踏まえて、あらためて医学対活動の質的強化をすすめていくことを確認しました。2018年12月には全国医学対担当者新人スクールと全国医学対ゼミナールを開催しました。
②医師の働き方改革に対するたたかいと対応
厚生労働省の「医師の働き方改革に関する検討会」における議論の状況を踏まえ、プロジェクトチームを設置し、全国調査をすすめてきました。2月に厚生労働省がまとめた「医師の労働時間短縮に向けた緊急的な取組」の対応について医科法人にアンケートを実施し、内部的な整備を呼びかけてきました。医師の働き方改革をめぐっては、各医療団体からも、根底にある医師増員が十分にはかられていない中で、地域医療のあり方や医療機関の経営に重大な影響を与えかねないことへの懸念が出されています。現状は、患者の権利を擁護するために、やむを得ず過重労働になっているという実態があり、働き方改革だけがすすめば、結果、患者にしわ寄せがおよぶ事態が生じることが懸念されます。時間外労働規制について、過労死基準を超えることを是認する厚労省案は認められるものではありません。あらためて、医師養成数を増やすこと、そのために必要な診療報酬を引き上げていくことを国に求めるものです。民医連も加わるドクターズデモンストレーション実行委員会が主催するシンポジウムには、全日本病院協会や自治体病院協議会からもシンポジストとして参加を得て、あらためて医師増員とを求めていく点での一致を確認しました。
③新専門医制度・医師養成・研修をめぐって
制度発足後、半年が経過した新専門医制度は、日本専門医機構のガバナンスが大きな問題となり、理事会の刷新や、総合診療分野のプログラムや認定で一定の改善がはかられました。民医連においても、総合領域や内科領域において新たなプログラムが認定されるなどの前進がありました。しかし、内科、総合診療科を除いたほとんどの領域の医師養成は、大学以外ではごく限られた医療機関でしかできないことなど、引き続き、制度が地域医療に否定的な影響を与えないよう改善を求めつつ、民医連の内外からプログラムが選択されるよう、総合性を重視した研修をつくっていきます。領域別委員会として整形外科医療委員会を立ち上げ、民医連での専門医養成の方策も検討に入りました。
④多チャンネルによる医師の確保にむけて
第1回評議員会方針でも提起されたように、医師の流動化は、民医連の医師集団形成の入り口が多チャンネルであることを積極的に捉えられる局面でもあることから、2018年11月にはじめて常勤医師確保会議を開催し、医師確保を前進させるための課題について議論を行いました。働きやすい職場環境のみならず、「2つの柱」の実践の中で、民医連らしさに共感を引き出すことや自己成長を実感できることが、医師が働き続けるためには重要です。労働条件改善、医師事務補助者の導入による労働軽減など環境整備をすすめる課題と、医師集団づくりの議論を両輪ですすめる必要があります。
⑤医学部入試における女子学生、多浪学生への差別的扱いについて
東京医科大などの入試に関連して、8月25日に会長声明を出し、政府と文部科学省の責任において、点検と是正が行われるように求めました。医学生も、医学生ゼミナールで積極的な議論を踏まえたアピールを発信、「入試差別をなくそう! 学生緊急アピール」が結成されるなど、メディアに登場し声をあげる動きが広がりました。
⑥医師支援のとりくみ
熊本・菊陽病院への支援を8月から行っています。福島・桑野協立病院への日当直の支援を福島県連内と北海道・東北地協、関東地協から行っています。西日本豪雨で、大きな被害を被った岡山県倉敷市真備町と同市内の水島協同病院への医師支援に、7月半ばから9月半ばまで23人が参加しました。
(4)現場からの社保、いのちと人権を守る活動
①社会保障解体を止める大運動、日常の医療・介護現場から負担増の実態・利用者の困難を告発、発信するとりくみ
人権としての社保運動交流集会では、SDHの視点でとりくむ社保運動のいっそうの前進を提起、「2つの柱」を実践しながら、憲法にもとづく人権を守る視点で患者、利用者、家族に寄り添い、現場からとりくむ社保運動の豊かなイメージが共有されました。
「経済的事由による手遅れ死亡事例」と『歯科酷書第3弾』の記者会見が各地でとりくまれました。国保制度の改善に向けて、社保協に結集し、自治体キャラバンを通じて都道府県への改善要望の要請、都道府県単位化の中での保険料統一による引き上げに反対する交渉を強めてきました。子どもの医療費、重度心身障害者・児医療費の窓口無料制度の復活など各地で地域の団体と共同した運動をすすめてきました。介護ウエーブでは、介護保険制度・介護報酬の改善、処遇改善を求める新たな介護請願署名(社保協・全労連・民医連の三者共同)が広がっています。10月以降は11月11日の「介護の日」を前後して、署名・宣伝行動、介護相談、自治体との懇談、介護学習会などが地域社保協とも連携しながら各地で推進されてきました。
総会以降、無料低額診療事業は、4事業所で届出が受理されました。
②地域医療構想・医療費適正化計画について
各県連とも、県や市の担当部署との懇談や、調整会議など、県の各種会議や委員会の傍聴などをすすめてきました。
奈良県が、医療費適正化計画のために地域別診療報酬導入を提案する中、県、地区医師会とも共同し、県議会に向け反対の意見書にとりくみ、県内39自治体への意見書要請書を送付、10自治体への訪問など、幅広い共同の運動がつくられています。
(5)職員育成のとりくみ
①「2つの柱」の実践と社保・平和活動を通して育ちあう職場づくり
今年1月に、職場づくり・職場教育実践交流集会を開催しました。全国的に、「2つの柱」の実践を通して職員が確信をもち、民医連運動の担い手として育ちあう経験が広がっています。またそのような職場づくりをすすめるために、「職場管理者の5つの大切」にもとづいて、職責者を中心とした工夫・努力が活発に行われています。
「各職場・職種で、あるいは多職種協働でSDHの視点での症例検討会・カンファレンス」、「無料低額診療を利用する患者など気になる患者訪問を行い、暮らしや療養の困難を把握し、地域連携や自治体交渉をすすめて解決しようというとりくみ」、「職場での徹底した憲法学習と語りあいを力に3000万人署名活動の先頭に立つ職場づくり」、「それぞれの職種の専門性を生かして一人ひとりの患者の願いに寄りそい、その人らしく生きていくことをささえる実践」、「職場の年間重点目標に『戦争の歴史を学び、社保平和活動にみんなでとりくむこと』を掲げ、戦争体験を聞く会や戦争パネル展を開いている職場」など、各地の経験を大いに学ぶことが必要です。
これらに共通するのは、第一に、職責者やトップ管理者が民医連の組織理念にこだわり、その担い手の育成のとりくみでリーダーシップを発揮していること、第二に、職場づくりの重要な視点として、職員一人ひとりを信頼し、依拠し、その積極的な意見や役割発揮を大事にする、すなわちみんなで学びあい、語りあい、ささえあう活動を大切にしていることなどです。
「医療・介護活動への確信」と「良好な人間関係(職場)」が、職員の成長に決定的影響をおよぼします。そこに、管理者・職責者や教育委員会(担当者)の知恵と力の出しどころがあります。
②青年職員の育成
青年職員の育成のとりくみを全国的に交流し発展させていくために、昨年11月、青年援助担当者交流集会を開催しました。青年の自主性、自発性を育むための親身でていねいな援助、SDHの視点での事例検討や平和学習を通しての育成、県連や事業所の歴史と存在意義に確信を深め継承していくための多彩な企画など、各地の活発な経験を交流しました。
県連や事業所で青年職員の成長を援助する体制を確立すること、援助担当者が青年の思いに寄りそい青年とともに育ちあう立場で諸活動をつくっていくことが大事です。
(6)職種委員会などの主なとりくみ
薬剤
2018年4月新卒薬剤師入職者数は141人となりました。薬学奨学生は320人となっています。病院を中心に薬剤師体制が厳しい状況です。育てる薬学対のさらなる強化が必要です。6月時点で健康サポート薬局の取得は48薬局、民医連薬局の13・4%となっています(全国平均1・7%)。非営利一般社団への移行は29法人(約40%)で行われました。各地で保険薬局での無料低額診療事業の薬代自治体助成への要請活動がとりくまれています。毎年の薬価改定(引き下げ)が行われ、経営環境が厳しくなる中、業務の効率化、地協での予算検討会の開催も呼びかけられています。
5年に1度の医薬品、医療機器等法(旧薬事法)の改定の論議がなされており保険薬局の基本機能についても盛り込まれる予定です(2020年施行)。この間、保険薬局をめぐる情勢も大きく変化しており、10年ぶりに全日本民医連の保険薬局政策の改定論議をすすめています。
看護
「看護管理調査(2018年)」では、離職率で病院の正規看護職員10・1%、新卒6・0%、200~299床で2・4%と日本看護協会の調査より低い結果となりました。日本看護協会の認定看護管理者3760人のうち、民医連は96人、2・6%を占め、多くが認定看護管理者養成での講師活動などを行っています。2018年新卒看護師受け入れは1137人で、(到達率94・6%、奨学生率65・3%)、7年連続で1000人を超え、2019年新卒も目標1179人に対し内定者数1074人となっています(11月末時点)。一方で、2016年度民医連の法人別労働条件調査では、看護師の紹介業者を通した採用に全国で年間3億円の支出が報告されています。育てて確保するという民医連の看護師確保の意義を再確認するとともに、ハローワークやナースセンターの役割発揮を求めた運動が求められています。
医科法人、社会福祉法人での訪問系サービスにおける患者・利用者および家族による職員へのハラスメント対策の現状を調査しました。「法人として対応する方針・指針・対応マニュアルがない」が6割以上、「暴力ハラスメントの研修の実施」や「契約書・重要事項説明書に暴力ハラスメントに関する内容が盛り込まれている」は2割にとどまっています。県連・法人での方針やマニュアルの整備、契約書や重要事項説明書の整備、暴力ハラスメント発生時の対応の研修などをすすめることは喫緊の課題です。また、国・自治体に向け複数訪問を拡大するための助成制度の充実など交渉をすすめることも重要です。
「情報通信機器(ICT)を利用した死亡診断等ガイドラインについて~理解を深めるために」(2018年7月20日)及び「【見解】情報通信機器(ICT)を利用した死亡診断等ガイドラインについて」を発表し、討議を呼びかけています。ブックレット『民医連のめざす看護とその基本となるもの』の活用を促進するために、ファシリテーター養成研修会を2019年3月から43期中に4回開催予定です。
検査
今年は地協の検査部門交流集会を各地協で開催しています。医療法・臨床検査技師法の一部改正にともない、①検体検査の精度の確保に係る責任者の配置、②遺伝子関連・染色体検査の精度の確保に係る責任者の設置、③必要な標準作業書、作業日誌および台帳の作成が求められることへの対応もすすめました。
リハビリ技術者…2018年4月の診療報酬改定は、回復期リハビリ病棟を6段階に分類した上でアウトカムが厳格化されました。一方、介護報酬改定は、通所リハビリの減算や、老健施設でのセラピストのかかわりの強化が求められるなど、リハビリ部門に大きな影響を与えました。部会や職場でSDHの学習が積極的にとりくまれており、3000万人署名や平和活動をけん引する活動も報告されています。第2回リハビリテーション技術者幹部講座を開催しました。
放射線
2018年11月に代表者会議を開催し、①強度変調放射線治療導入に向けたとりくみ、②インシデント・アクシデントからの改善例、③画像診断で見落としをなくすとりくみ、④震災から7年半経過する中で避難者検診のとりくみについて報告を受け各地の実践を交流しました。
栄養
2018年6月に第43期栄養部門県連代表者会議を開催し、栄養部門基礎統計調査報告を行いました。多職種連携、アウトリーチの具体化などをすすめています。
SW
SDHにかかわる委員会参加、職員・組合員対象の学習会講師、SDH評価・介入研究班の要請を受け「経済的評価支援ツール」活用に向けた事例作成で積極的な役割を果たしました。一方で、退院支援など多忙な業務で事例検討や学習時間がとれず、退職するケースや無料低額診療事業適用の判断を左右する担当者としての負担感などの悩みが出されています。「人権保障としてのSDHに関する実践」をすえた提起や、無料低額診療事業でのSWの役割を深めることが今期の課題の柱です。
(7)第14回共同組織活動交流集会・共同組織拡大強化月間
①第14回全日本民医連共同組織活動交流集会
第14回共同組織活動交流集会in神奈川は、すべての都道府県から2500人以上が参加し、2年間のとりくみを大いに交流しました。寄せられた演題発表は250にのぼりました。
安心して住み続けられるまちづくりのとりくみは、共同組織を大きく発展させてきた土台でもあり、多彩な活動が発表されました。地域訪問、見守り活動、つながりマップ、子育て世代とのつながり、無差別・平等の地域包括ケアの実践、原発事故避難者や、災害復興を通じてのまちづくりなどさまざまです。地域の困難を地域住民に押し付け、共助で対応させようとしている政府の「我が事・丸ごと地域共生社会」政策の対抗軸として、住民本位の地方自治の発展につなぐ視点となっていることが特徴です。
今回もっとも多かった演題は、「たまり場・居場所づくり」でした。子ども食堂、学習塾、認知症カフェなど活動が多彩に広がっていることが特徴です。「ひとりぼっちの高齢者をつくらない」、「介護世帯を孤立化させない」なども視野に入れたこれらのとりくみが、地域の他団体とつながり、ネットワークとして広がっている実践も報告されました。
「健康づくり」のとりくみが、文字どおり「地域まるごと」として大きく広がり、共同組織内の班会から、地域全体を視野に入れた健康づくりとなっている実践が多く報告されました。地域包括支援センターや自治会、学校や駅、スーパー、公的機関などと連携した「健康づくり」や健康サポーター、体操インストラクター養成などが、地域連携や地域にひらかれた形で行われています。また、健康サポート薬局など職員や民医連事業所との協力したとりくみも報告されました。
記念講演では、アーロン・ヘイムス氏より「共同組織、健康へのつながり」のテーマで、共同組織の果たしている役割を語り、感動を呼びました。交流集会をまとめたDVD「いまこそ 共同組織を強く大きく」を作成しました。
『いつでも元気』誌は、交流集会に向けて、まちづくり・共同組織委員会と共同組織活動交流集会全国連絡会が共同でアピールを出し、6万部を達成しようと呼びかけ、9~12月と4カ月連続の増誌につながりました。
②共同組織拡大強化月間のとりくみ
今年度の共同組織拡大強化月間では約2万以上の純増となり、目標の370万を突破しました。『いつでも元気』は、月間後5万6621部(2019年1月号)となり、過去の最多発行部数まで780部という到達です。
月間では、多くのところで共同組織構成員や地域の声、困難をつかむことを方針として掲げ、訪問行動にとりくみました。北海道では9月からはじめた月間のさなかに胆振東部地震が発生し、被害が大きかった地域で友の会員、気になる患者訪問を展開しました。訪問を通して、あらためて民医連・共同組織のつながりの大切さを実感した声や、訪問に参加した職員からは共同組織の重要性を確認できたとの声が寄せられました。
③共同組織の担い手づくり
安心して住み続けられるまちづくりを実践する共同組織を強く大きくするために、新たな担い手づくりは引き続き重要な課題となっています。サークル活動やボランティア活動、相談活動などに参加した人がやりがいを感じ、要求が実現することを経験する中で新たな担い手が生まれています。
(8)旧優生保護法による人権侵害への全日本民医連のとりくみ
第1回評議員会方針を受けて、プロジェクトチームを設置、専門家による理事会学習会、『民医連医療』での学習資材作成、厚生労働省の病院調査の全日本民医連への情報提供の依頼、裁判傍聴などにとりくんできました。
被害者救済へ向けた与党、超党派による法案が一本化され、今年の通常国会へ向けて具体的に作業がすすめられる中、責任の主体が国であることを法文上明記すること、内容・手続きの両面で実効性ある補償制度を確立すること、なぜ長期にわたり憲法のもと重大な人権侵害が続いてきたのかを検証することなどを各政党に要請しました。全日本民医連としての見解作成作業をすすめています。
(9)全国的とりくみ
①特養あずみの里、乳腺外科医師えん罪事件の裁判支援
特養あずみの里裁判は、12月17日に弁護人最終弁論が行われ結審し、3月25日に判決の予定です。裁判開始から4年、刑事告訴の理由である窒息、注意義務違反について全面的に争い、無実を証明してきました。長野県内をはじめ各地で、看護協会、介護施設団体などで支援が広がり、署名は41万筆を超えました。完全無罪を勝ち取るため最後まで署名を広げ、世論に訴え続けましょう。
東京の乳腺外科医師えん罪事件は、東京地裁で無罪判決となり、全面勝訴しました。
②国際活動
9月に共同組織活動交流集会へ、緑色病院(韓国)の職員2人が参加しました。2019年1月、韓国側からの招待を受け、2人の歯科医師が訪韓し、交流しました。
国際連合経済社会理事会(ECOSOC)に、4年間の活動報告を今年6月に提出するための準備を行っています。
第2章 総会以降の情勢の特徴
第1節 広がる平和と人権の流れ
第43回総会方針は、「平和と人権を実現する運動は、紆(う)余(よ)曲折を経ながらも着実に世界と日本を変えています」と提起しました。
朝鮮半島では、歴史的な南北・米朝首脳会談が行われる中で、対話と外交を通じた平和と非核化をめざすプロセスが始まりました。1950年開始の朝鮮戦争が53年に休戦して以来、敵対関係にあったアメリカと北朝鮮が友好へと歩み始めことは、北東アジアの非核化・平和の流れと安定がはかられるうえで画期をなすものです。
核兵器禁止条約は、調印・批准が着実に増えています。調印国は70カ国に、批准は21カ国となりました(2019年2月現在)。批准国が50になれば90日後に発効します。
世界の各地では、新自由主義・グローバリズムに対抗する運動も広がっています。
フランスでは富裕層、大企業優遇をすすめてきた政権に抗議する「黄色いベスト運動」が広がり、政府が最低賃金を月1万2600円引き上げる措置を打ち出しました。最低賃金引き上げをめぐり、アメリカでは住民投票がいくつかの州で行われ賛成多数で可決、引き上げが決定、韓国でも、ローソク革命により誕生した大統領のもとで格差と貧困対策をすすめるため、最賃1割の引き上げが行われています。
国内では、「戦争法廃止、立憲主義の回復」を掲げて始まった市民と野党の共闘が「原発ゼロ基本法案」「子どもの生活底上げ法案」の共同提出、安倍9条改憲や辺野古新基地建設強行、消費税10%への引き上げ、働き方改革、出入国管理法改正案、水道民営化法案などに共同して反対するなど大きく広がりました。また今年の参議院選挙で32ある1人区での統一候補の擁立を合意するなど、市民の要求と運動に応えています。また、故翁長雄志沖縄県知事の「米軍基地被害は沖縄だけの問題ではない」との提案を受け、全国知事会が、日米地位協定の抜本的改善を求める提言を日米両政府に行いました。この提言を受けて、すでに7道県36市町村が抜本的改善を求める意見書を可決しています(12月27日現在)。また、国民が支持しない原発政策は続けられないと財界が表明、成長戦略であった原発輸出を含め、原発推進政策の破たんが明確になりました。
2018年末の報道各社の世論調査では、安倍内閣支持率が低下、不支持率が4割を超えています。
こうした世論の変化は偶然ではありません。外国人労働者の受け入れ拡大について「評価する」38%、「評価しない」54%、「成立させる必要がなかった」71・3%(産経)、沖縄・辺野古新基地建設をすすめることに「賛成」22%、「反対」30%(NHK)、消費税の来年10月の引き上げ「賛成」29%、「反対」36%、改憲も6割が「必要ない」などの民意を顧みず、数を頼りに強引に国会を運営し、強行し続ける政府の姿勢に対する国民の厳しい評価の表れです。
第2節 国民生活の困窮・雇用破壊の拡大と社会保障解体
(1)格差と貧困の一層の拡大と労働法制の大改悪
ワーキングプア(年収200万円以下)層は12年連続して1000万人を超え、2017年は1085万人、労働者の21・9%を占めています。非正規雇用の労働者は2036万人、全労働者の37・3%となっています。一方で、役員報酬1億円以上の企業は240社、538人に増加しています(2018年)。17年度の内部留保額は、非正規雇用の固定化による賃金の抑制、法人税引き下げ、大企業優遇税制などによって前年を22兆円上回り、425兆円に到達しました。20年前、日本企業の株主のうち、外国法人とその資金を活用する信託会社の比率は、20%でしたが、現在は50%を占め、日本の民間企業を支配しています。今期、GDPがマイナスになっても、内部留保はさらに拡大しています。この20年間、労働者の賃金が0・97倍に低下する中、経常利益を3倍化、役員報酬を1・5倍化、株主の配当を5・7倍化してきました。株主の利益のみを追求し続けた結果、最低限の企業モラルが崩壊しています。この大企業を応援し続けているのがアベノミクスです。
「働き方改革」「人づくり革命」「生産性革命」などの名で雇用破壊がすすめられています。6月には、労働基準法に盛り込まれた「時間外労働と休日労働」をあわせた年間の上限は960時間、1カ月あたりおおむね80時間とされている過労死ラインに設定されました。2019年4月から労働基準法の法定労働時間、時間外・休日労働、休憩、深夜の割増賃金などが適用されない「高度プロフェッショナル制度」が施行されます。すでに、多くの産業で長時間労働による健康破壊、過労死が頻発している中で、よりいっそう働くものの健康権を侵害するものです。
政府は労働力不足を口実として、年金改悪を見据えた高齢者の労働力化、外国人労働者の受け入れ拡大などを急速に法制化しています。
先の臨時国会で成立が強行された改定出入国管理法は、実習生の失踪、最低賃金以下での労働が強いられ、昨年までの8年間で174人が自殺などで死亡しているとされる現行の外国人技能実習制度を土台としています。
介護分野では2016年の入国管理法改正で在留資格に介護が加えられるとともに、農業や製造業などの75業種を対象としていた外国人技能実習制度に新たに介護が追加され、17年11月から実施に移されました。技能実習制度については法改正により管理団体の許可制や、介護については、受け入れに際して「固有の要件」が設けられました。今回、特定技能1として介護職が指定されました。外国籍の労働者が日本で必要な技能を獲得し、介護の職に就くことそのものは否定されるものではありません。しかし、①少なくとも日本人の介護職と同等の賃金・労働条件を保障すること、②日本語習得への十分なサポートを行うこと、③日本で暮らしていくための支援を行うこと、習慣や文化、宗教などの違いをお互いに理解し包摂していく環境を整えること。さらにこれらの条件整備が現状では受け入れる法人の責任とされていることに対して、政府に必要な施策・支援を講じるよう求めていき、健康権が守られるよう運動を強めていきます。何より、現業者の給与を含めた抜本的な改善をはかることを「介護人材政策」の中核にすえるよう求めていきます。
(2)全世代型社会保障改革と消費税率の引き上げ
安倍政権は2025年に向けた社会保障・税の一体改革をすすめながら、2042年、65歳以上の人口が4000万人と過去最高となることを念頭に「全世代型社会保障改革」を最大のチャレンジとして提起しました。
この改革の目的は、①継続雇用年齢を引き上げて年金受給開始を先送りする高齢者を増やし、公的年金の支出を抑制すること、②働く高齢者を増やすことで、医療・介護給付費を削減するとともに、65歳以上でも社会保障制度をささえる側としての役割を求めることにあります。
安倍政権は、2020年には、継続雇用年齢を現行の65歳から70歳に引き上げることと一体に、年金の受給開始年齢を原則65歳から70歳以降で選択できるようにする法案の提出をめざしています。
また財源として消費税の10%への引き上げが予定されています。格差と貧困が拡大する中で、2%の引き上げで国民負担は国税、地方税あわせて5・6兆円と試算されており、国民生活に深刻な負担を及ぼします。税率の引き上げで全日本民医連全体への増税額は30億円、増税と合わせて予定されている薬価改定は薬価本体で2・4%の引き下げであり、医療機関の経営への影響は深刻です。また、2018年7月~9月の国内総生産(GDP)は、前年同期に比べ2・5%減少、個人消費とともに企業の設備投資も減少している中、増税が日本経済と国民の暮らし、雇用に深刻な影響を与えることは明確です。軽減と言われている複数税率による混乱も必至です。
こうした中、消費税そのものへの考え方の違いを越えて「2019年10月からの消費税10%への引き上げに反対する」の一点でのネットワークが確立しました。全日本民医連は、共同してこの運動をすすめていきます。
(3)生活保護改悪はただちに中止を
生活保護基準が、2018年10月、5年ごとの見直しにより、18年度からの3年間で平均1・8%、最大で5・0%、年額で160億円もの引き下げが強行されました。2013年8月の生活扶助670億円の削減、15年の住宅扶助と冬期加算の引き下げに続くものです。「月額1600円も削減され、やりくりが本当に苦しい」などの声が広がっています。この引き下げに対し、全国で6000人が行政不服の申し立てを行いました。生活保護を受ける子育て世帯でも4割近くの約15万世帯が減額となり、子どもの貧困対策からも大きく逆行するものです。また、生活保護基準は、就学援助、住民税の非課税措置、また最低賃金の金額など私たちの暮らしに大きく影響し、各種制度が引き下げられることにつながります。18年6月に成立した生活保護法の改悪により医療扶助でジェネリック医薬品使用が原則化されました。また、厚生労働省は、同年3月に生活保護利用者のみ薬局を一元化するとしました。「生活保護利用者がお薬手帳を持っていない場合は、福祉事務所に報告するように」と自治体が通知を出すなど深刻な人権侵害が広がっています。こうした事態は、憲法25条に違反するものです。またすべての人びとは、差別なく医療を受ける権利、自己決定権を持っています。この「劣等処遇」、医療に差別を持ち込む制度の撤回を求めます。そして、生活保護の捕捉率が2割以下とも言われるなど、多くの国民が生活保護基準以下の暮らしを強いられている現実を解決するために生活保護制度の拡充を求めるものです。
(4)介護保険制度をめぐって
「改正」介護保険法が施行され、これまでの改悪に加えて、利用料3割化、生活援助に対する事実上の利用回数規制などにより、利用困難の事態がいっそう広がっています。総合事業では基準緩和サービスをめぐって事業所の撤退があいつぐなど、制度設計そのものの矛盾が露呈しています。また、職員確保の困難が続いており、人手不足を理由とした事業の縮小や廃止もあいついでいます。2025年は33万4000人の供給不足が見込まれていますが、政府の介護人材確保対策は有効性を欠き、先を見通せない状況です。新たに保険者機能強化推進交付金制度(インセンティブ改革)が開始されました。「自立支援」や「適正化」で成果をあげた自治体に交付金を支給するというものですが、自治体を給付抑制に駆り立てる仕組みづくりの一環であり、保険者機能をゆがめることにもつながるものです。さまざまな制約の中ですすんでこなかった「混合介護」について、厚労省が現行の枠組みで実施を可能とする運用ルールを通知しました。一定の要件を満たせば、保険外サービスの併用を実施できるとし、最終的にはヘルパー指名料や保険外サービスのケアプラン策定につなげようとしています。「混合」利用は、経済事情による介護の差別化の徹底、保険外サービスの開発・普及(産業化)、保険給付の圧縮をねらうものです。
安倍政権が推進する「自立」の理念が「介護を要しない状態」「制度からの卒業」に置き換えられ、自立支援型介護が「質の高い」介護とされています。これは介護保険制度自体の質的な転換・改悪です。本来の「自立」とは何か、理念をめぐるたたかいが重要です。
第3節 安倍9条改憲・戦争する国づくりの新たな局面
(1)改憲をめぐって~9条に自衛隊を書き込む3つの危険性
自民党が2018年3月25日にまとめ、今後の憲法審査会に提示しようとしている改憲案は、①9条1項、2項を残して自衛隊を明記する、②緊急事態条項、③合区の解消、④教育の充実の4項目ですが、②~④は主に憲法の改正に関係なく、法律の改正で事足りる内容です。本当の目的は、①の「自衛隊の9条への明記」です。また、緊急事態条項では緊急事態の際に内閣に権限を委ね、その濫用による人権侵害につながるものです。
安倍首相は「9条に自衛隊を明記することは、国民の9割が支持する自衛隊を憲法に明記するだけで、今と何も変わらない」と説明していますが、これは欺(ぎ)瞞(まん)で、日本を戦争する国として完成させる3つの危険な内容があります。
第一に、9条に自衛隊を明記することで合憲とされる自衛隊は、安保法制=戦争法により海外で武力行使も可能となった自衛隊です。「戦争法は違憲」という多くの市民の声で全面発動ができない戦争法がこれで合憲化され、全面発動できるようになります。
第二に、自衛隊を明記することによって、9条2項が持っている自衛隊の活動に対するしばりを死文化し、自衛隊を文字通り「戦争する軍隊」に変えるという危険性です。今の憲法には“自衛隊は9条2項が禁止する軍隊であってはならない”と規定されているため、自衛隊は武力行使ができません。しかし、自衛隊が合憲と明記されれば、2項は残っても“自衛隊は軍隊であってはならない”という制約はなくなり、自衛隊は変質します。
第三に、自衛隊を「戦争する軍隊」に変えるだけでなく、日本全体が「戦争する国」に変わります。今の憲法は、軍隊を持つことも戦争をすることも認めていない、世界でも誇るべき憲法です。戦争を認めていないため、憲法には戦時に国民の自由を奪い戦争への動員を強制する「緊急事態条項」がありません。また軍隊を認めていないため、軍刑法や軍法会議が認められないばかりか、軍事秘密の漏えいを特別に重く処罰する軍事秘密保護法もありません。徴兵制も許されていません。
軍隊と戦争のためには人権は制限してもよいという例外措置が設けられます。私たちが“当たり前に”享受している毎日、日本社会の自由と人権状況は大きく変わります。こうした危険性を職員、共同組織で学び、地域に知らせていくことが大切です。
また、自衛隊が実施できるアメリカ軍への支援や戦闘協力の拡大を可能とした安保法制=戦争法を踏まえた防衛力整備が急速にすすめられています。攻撃のため発進を準備しているアメリカ軍の戦闘機に艦艇の上で燃料を補給できるよう海上自衛隊の「いずも」(ヘリコプター搭載型護衛艦)を「空母」に改修、また、北朝鮮からグアムやハワイへ向けて弾道ミサイルが発射された場合、追撃するために「イージス・アショア」(地上配備型ミサイル迎撃システム)の導入など、安倍政権が集団的自衛権の行使容認により拡大してきた装備を防衛省が追認し、「防衛計画の大綱」「中期防衛計画」改定の閣議決定を行いました。またアメリカのトランプ大統領から対日貿易赤字の解消のため兵器購入を迫られ、最新鋭ステルス戦闘機のF35B、戦闘機に搭載する長射程巡航ミサイルといった「専守防衛」のためとは言えない攻撃を目的とした兵器を大量に購入しようとしています。2019年度予算案で、防衛費は7年連続過去最高を記録し、5兆2574億円、アメリカ政府を通じて兵器を購入する「対外有償軍事援助(FMS)」による調達が過去最高の7013億円、兵器ローンは5兆3600億円にまで膨張しています。
(2)沖縄・辺野古新基地建設をめぐる新たな状況
辺野古新基地建設をめぐり、安倍政権と県民の矛盾は、「土砂の投入」「県民投票の妨害」という政府の蛮行により拡大しています。「美(ちゅ)ら海を守れ」「地方自治と民主主義を守れ」の声が日本中と世界に広がり、安倍政権が追い詰められています。
沖縄の玉城デニー県知事は、圧倒的な県民の民意を力に、国に対して辺野古新基地建設を断念するよう「話し合いによる解決」を求めてきました。しかし、国は、行政不服審査法を乱用したり、土砂の投入を強行するなど埋め立てを既成事実化しようとしています。辺野古新基地建設は、①新基地の運用開始までに埋め立て工事に5年、防衛省調査で判明した海底の軟弱地盤の改良工事に5年、埋め立て完了後の施設整備に3年と最短で13年かかり、普天間基地の危険性を固定化するだけであること、②工事費用は、膨張し最大で2兆5500億円かかる見込み、③軟弱地盤の改良のためには7万本以上もの杭を最大で100mもの海底に打つ必要があり、技術的にも困難であるばかりか、多数の貴重な生物やサンゴへの影響など取り返しのつかない環境破壊となることなど、新基地建設が行き詰っていることは明らかです。「沖縄県民に寄り添う」というなら、政府は、辺野古新基地建設の断念しかありません。
第3章 1年間のとりくみを踏まえた第44回総会へ向かう方針民医連経営の現状と改善した経験
第44回総会までの一年間、すべての県連が総会方針の全面実践を強めていきましょう。
とりわけ、日本のあり方を憲法にもとづく、平和・人権の輝く国に変えていく参議院選挙に、職員、共同組織が当事者、主権者としてとりくむこと、「未来に向かって民医連の医師と医師集団は何を大切にするのか」(案)を各県で討議、具体化し、医師問題を克服していくこと、「2つの柱」のとりくみを強め、経営・人づくり・運動の好循環を全国の経験を学び合い前進させていきましょう。2月に発行するブックレットをもとに民医連綱領の学習運動をすすめましょう。
第1節 7月の参議院選挙で憲法、平和、人権を守り抜こう
格差と貧困が拡大する中で、長時間労働や過労死を是認するような労働法制の改悪、さらに大幅な国民負担の強行、憲法の解釈を勝手に変え、海外で自衛隊が戦争できるよう変える、福島第一原発事故収束のめどもないままの原発再稼働など私たちや患者の願いとこれほど異なる政治が横行するのは、自民党・公明党とその2党を助ける日本維新の会などが、衆議院、参議院で多数の議席を占めていることが要因です。
7月に行われる参議院選挙は、半数の参議院議員が改選される選挙で、今の異常な政治を変えていくチャンスです。
何より、私たちが、43期の最大の運動と位置付けてきた憲法9条を守り抜くためには、この選挙で市民と野党の共同をさらにすすめ、安倍9条改憲反対、消費税10%引き上げの中止、辺野古新基地建設強行中止などを掲げる立憲民主党、国民民主党、日本共産党、自由党、社会民主党などの立憲野党が全体として躍進することです。その結果、参議院で、改憲発議が不可能となる3分の2以下に自民党、公明党、日本維新の会などの議席を減らすことです。
すべての県連で民医連として、要求による全政党との懇談、候補者への申し入れ、野党統一候補擁立選挙区での政策協定作成などにとりくみましょう。この異常な政治を終わらせ、平和、人権を守り、憲法を生かす国へ向けた一歩を踏み出しましょう。また、引き続き3000万署名を改憲断念まで、がんばりましょう。
5月3日の憲法記念日は、各地で史上最大の規模の憲法集会を成功させましょう。関東では、「2019平和といのちと人権を! 5・3憲法集会 許すな!安倍改憲発議」の集会が、10万人を目標にとりくまれます。全日本民医連、関東の県連とともに成功に力を合わせます。
毎月9日、25日の早朝宣伝は14年以上続いている(あおもり健康企画)
第2節 人権としての社会保障の運動と平和の課題にとりくもう
(1)「事実の重さ」をまとめ、現場から「社保」を発信しよう
2018年経済的事由による手遅れ死亡事例調査に全県がとりくみ、記者会見を行いましょう。無低診にとりくむ中で救えたいのちの事例、中断調査や未収金調査、地域の独居高齢者訪問などを実践しましょう。私たちの日常診療の中での調査は「事実の重さ」があります。職員でも事例を共有し、民医連への確信と運動の力にしていきましょう。これらの運動をSDHの視点で、全職種参加の事例検討会などにとりくみ育成の課題としても展開しましょう。5月27~29日開催の全日本民医連社保セミナー(熊本・水俣)には、すべての県連から参加しましょう。
(2)負担増を中止させる運動を強めよう
国保制度の改善、後期高齢者医療窓口負担原則2割化反対の運動を当事者とともにとりくみましょう。そのために全職員の国保学習ビラの学習、自治体担当者を招いた「国保出前講座」などを実施し、共同組織や地域の患者などへも参加を呼びかけ、地元自治体の国保の実態、問題点を明らかにしましょう。学習とともに全職員で「国保アンケート調査」にとりくんで、国保当事者の声を集めましょう。誰もが払える国保料(税)、減免制度の改善、国庫負担の引き上げや市町村の一般財源からの繰り入れの継続、人権侵害の不当な滞納差押えに反対するなど運動を強めながら、政策提案をしていきましょう。
後期高齢者医療窓口負担原則2割化反対署名で、内容を知らせ、地域から負担増反対の大きな世論を巻き起こしましょう。
(3)困難な人びとの受療権を守り抜こう
地域には「保険証がない」「窓口負担が払えない」と、患者になれない病人があふれています。医療機関を受診できず我慢し、私たちが手をつなぐことができていない人たちも数多く存在します。日常的なアウトリーチ実践を強めましょう。
無料低額診療を地域に広げていきましょう。保険薬局、訪問看護を事業対象とすることを国に要求していきます。全国いっせいに該当する自治体に対し無料低額診療事業の利用者への薬代の負担金への助成を求める請願を行いましょう。
(4)地域医療構想・医療費適正化・介護保険事業計画への運動の共同を広げよう
それぞれの地域の計画内容や、地域に必要な医療、病床、在宅の医療・介護などを明らかにして地域の医療機関や介護事業所、患者団体などと共同を広げましょう。シンポジウムの開催など多彩な運動を強めましょう。
(5)介護ウエーブを強化しよう
引き続き「制度改善」「報酬改善」「処遇改善」の実現をめざし運動をすすめます。介護サービスを充実させたり、保険料などの費用負担の軽減をはかるためには、介護保険財政における国庫負担の割合を大幅に引き上げることが不可欠です。現行の介護保険制度の抜本的な改革要求として、保険財政の見直しを国に強く要求します。処遇改善は介護報酬ではなく、交付金(公費)で対応することを重ねて求めます。2019年は「ケアプランの有料化」「軽度者の生活援助の総合事業への移行」などの次期見直し案が検討される年であり、さらなる改悪を許さない世論を広げることが重要です。
利用料の引き上げ、生活援助の届け出制など、この間の制度改悪が利用者や介護現場にどのような困難をもたらしているか、事例を通して具体的に明らかにし発信します。
自治体に対する働きかけも引き続きすすめます。地域社保協とも連携しながら、費用減免など自治体の独自施策の実施・拡充を求めます。総合事業、介護をめぐる地域の現状や制度の問題点を自治体の担当者とも共有し、国に対して自治体から意見をあげるよう要請します。
(6)統一地方選挙を重視し、医療・介護の要求を前進させよう
多くの県、自治体で4月に地方選挙がとりくまれます。自治体本来の役割である住民の暮らし、いのちを守る役割を行う議会を作ることが求められています。誰もが払える国保料(税)を、介護難民をつくらない、無料低額診療事業の患者の薬代の助成をなど患者・利用者の声にもとづく要求を届けていきましょう。候補者アンケートなどにもとりくみ、医療・介護・社会保障の充実を選挙の大きな争点に押し上げていきましょう。
(7)辺野古新基地建設反対、核兵器禁止条約締結のとりくみ
「43期平和アクションプラン」を各県連で討議、具体化をすすめましょう。
2月24日投開票の辺野古埋め立ての是非に対する沖縄県民投票の成功へ向けて理事会アピールを発表し、全国からの支援を呼びかけました。民主主義と地方自治を守る上でも圧倒的な「反対」の民意を示しましょう。辺野古支援連帯行動、医療班の継続派遣を行います。日米ガイドラインにもとづく米軍基地、自衛隊基地の強化、オスプレイの全国配備の撤回など各県連でのとりくみを強めていきます。核兵器禁止条約の批准を求める自治体決議を求めていきましょう。核兵器禁止条約を求める署名に引き続きとりくんでいきます。
(8)原発ゼロ、 再生可能エネルギーへの転換へ向けて
福島第一原発事故から8年をむかえます。1月現在、いまだ10万人以上の県民がふるさとに戻れない状態となっています。原発事故関連死は2260人(内自殺者101人)となりました。避難指示12市町村の帰還率は昨年2月の段階で15・3%に留まっています。原発ゼロ、再生可能エネルギーへの転換へ向け、原発ゼロ基本法案の実現へ運動を強めましょう。3・11を前後した各地の原発をなくす集会を成功させましょう。
第3節 民医連の医療・介護の活動をまちづくりと結び旺盛にとりくもう
医療・介護活動分野では引き続き「2つの柱」を追求します。第1の柱「貧困と格差、超高齢社会に立ち向かう無差別・平等の医療・介護の実践」は、私たちの活動の地域への働きかけであり、まちづくりにつながる実践です。第2の柱「安全、倫理、共同のいとなみを軸とした総合的な医療・介護の質の向上」は、提供するサービスの質を継続的に向上させていく私たち自身の努力です。この「2つの柱」は同時に追求されてこそその意義があります。私たちは医療・介護に携わるものとして、常にその知識や技術を見直し向上させていく専門家としての義務があります。法令遵守はもとより、エビデンスにもとづく標準的な医療やいっそうの安全管理や臨床倫理を含めた医療・介護活動のプロセスやアウトカムを評価するとりくみなど、質の高い医療や介護を提供するための努力を続けましょう。各種学会活動に加え、民医連の自主研究会、各種専門部会や職種部会、医療・介護安全委員会、医療・介護倫理委員会など、各分野での専門的な検討や交流をすすめましょう。
民医連事業所は「2つの柱」を同時にすすめるための実践の場であり、それを推進するのが各県連に設置された医療活動委員会です。第43回総会方針は、医活委員会の活動を、県連医師集団の中心的課題とし、県連四役を軸に医師幹部や県連・法人理事が中心となってすすめられるよう提起し、県連理事会が責任を持って活動を推進することを呼びかけました。地協で医療活動委員会の設置や県連医活委員長会議の開催がすすめられています。県連医活委員会の活動交流をささえ、発展させていくためにすべての地協でこうした活動を追求しましょう。
「2つの柱」の実践の前提にある私たちの医療のあり方が、「共同のいとなみ」です。「共同のいとなみ」の理念は、医療現場でのパターナリズムの解消をめざして患者の権利を守る共同から出発し、経営を守る共同、平和や社会保障を守るための共同へと発展してきました。さらに専門家と地域住民が健康をともにつくる共同、健康的なまちづくりをすすめるための共同へと進化しています。
そこに必要とされるのは民医連内外の多くの専門家たちとの多職種協働、あるいは医療・介護以外の分野との協働です。民医連がすすめてきた医療・介護の実践は、WHOの提唱するプライマリー・ヘルスケアの実施上の5原則、すなわち、住民のニーズにもとづく方策、地域資源の有効活用、住民参加、他のセクター(農業、教育、通信、建設、水など)との協調、統合、適正技術の使用に合致するものです。また2018年3月には、日本プライマリ・ケア連合学会から「健康格差に対する見解と行動指針」が出され医療界の中で、健康格差をなくしていくための行動も広がっています。
第43回総会では「地域の福祉力」を高めるまちづくり運動を事業所の方針として明確にし共同組織とともにすすめることを提起しました。学術運動交流集会では、職員が専門職としてまちづくりにどのようにかかわるか、全国の経験を共有し深められるようセッションを行います。またまちづくりをすすめるうえで欠かせないSDHの視点を職員、共同組織が学べる教材の作製をまちづくり委員会ですすめていきます。
「2つの柱」の実践を交流し、議論してさらに理解を深めるために、拡大県連医療・介護活動委員長会議(仮称)を今年9月に開催します。
各事業所でHPHの活動を強め、J―HPHネットワークへの加入を促進しましょう。
歯科分野は保険で良い歯科医療を求める請願署名にとりくみ、『歯科酷書第3弾』を活用した運動をすすめていきます。歯科医師臨床研修の質向上のため、指導歯科医の研修交流をはかります。中堅歯科医師交流集会、歯科奨学生、青年歯科医師についても、育成と交流の会議を開催します。
民医連歯科衛生士の現状と今後の課題について討議していきます。2018年歯科医療活動調査を実施し、歯科経営実態調査と合わせて、医療と経営を一体的に捉えていくようまとめ、『民医連歯科読本2006年度版』の改定を準備します。
学校健診で必要とされた小児の歯科矯正の保険適用をめざす運動にとりくみます。全日本民医連として歯科部内にプロジェクトを設置しました。「保険で良い歯科医療を」の運動として署名などにとりくみます。
第22回全国歯科学術運動交流集会を北海道で開催します。
災害対策をすすめていく上で、MMATによる災害対策本部を担うメンバーへの研修、南海トラフ地震(死者予想府県29・災害発生予想府県40)対策の検討を行います。
第4節 民医連が確立してきた経営方針と教訓を生かし、経営困難を乗り越えよう
(1)経営改善の柱は民医連綱領と「2つの柱」の実践
私たち民医連の豊かな実践の中に、改善の展望や具体策があります。民医連綱領と「2つの柱」の実践、経営委員長会議などにおける諸方針と経営を大きく改善した法人の教訓に学び、県連、地協、全日本で困難に立ち向かいましょう。
私たちの使命は、無差別・平等の医療と福祉の実現をめざす民医連綱領の実現です。そのためには、地域の貴重な財産である民医連事業所を守り、安定した経営を確保することが必要です。民医連綱領の実現、「2つの柱」は、医療・介護活動の方針であるとともに、経営改善に向けた方針として一体的に前進をめざしましょう。
民医連経営の強さは、民医連綱領によって団結していること、全職員参加の力を発揮することにあります。経営は一部の役職員によって行われるものではなく、全職員の参加で改善を果たしていることがこの間の全国の教訓です。
(2)民医連の管理会計制度の到達点に学び、課題の点検と共有を
民医連統一会計基準は、山梨勤医協倒産の痛苦の教訓を踏まえて制定され、全職員参加の経営のための管理会計制度である事業所独立会計の確立は経営困難法人の経営改善の基礎となってきました。しかし、到達度の違いはあれ民医連全体として、これらの諸制度や実践の教訓が十分活かされているとはいえません。どんな立派な制度や仕組みも、活用されなければ経営改善に結びつきません。事業所独立会計制度の9つの基本構造を全て実践している法人は、約150の医科法人のうちわずか10法人のみです。2019年度予算作成も含め、自法人、事業所の事業所独立会計制度の到達と課題を点検、共有し、前進させましょう。
事業所独立会計の整備と定着のためには、自法人での努力と合わせて地協、県連での把握と交流が欠かせません。県連、地協経営委員会ミニマムの全面実践とともに県連での法人、事業所の施設拡大計画の検討、議論が重要です。また、経営委員会だけでなく県連理事会、地協運営委員会など県連、地協そのものの経営分野の機能強化も必要です。
(3)トップ幹部集団の役割を発揮し、全職員参加の経営の前進を
全職員が経営実態を認識し、知恵と力を結集するためにはトップ幹部集団が、何よりもリアルで具体的な認識がなければなりません。その上で、自らが確信を持って展望を語り示しながら知恵を集めることです。ボトムアップは、トップ管理集団の果たす役割を発揮してこそ成り立つものです。幹部自らが、内にこもり我流を通すのではなく、民医連統一会計基準、事業所独立会計、部門別損益、中長期経営計画の理解を深め、情勢を広くつかみ、民医連管理会計の優れた到達点を自らの力とすることを重視しましょう。
(4)医師労働課題に対して組織的な位置づけと対応を
医師労働の課題については県連、法人での特別の位置づけと、まず何のための改善かを組織全体の課題として意思統一することが出発点となります。いかに患者、地域に良い医療を持続的に提供できるかという視点と医師の労働実態の改善を統一してすすめることが重要です。
(5)介護事業分野
引き続き2017年度介護・福祉責任者会議で提起した「2つの転換」(発想の転換、とりくみの転換)方針にもとづき、経営改善の強化を追求します。いっそう厳しさを増している経営環境、利用者・家族の介護・生活困難の拡大のもとで、制度改革をめぐる情勢をしっかり見据えること、あらためて「何のため、誰のために介護・福祉事業を展開するのか」、綱領や「民医連の介護・福祉の理念」の原点に立ち返りながら、これまでの到達点を振り返り、課題を明らかにすることが求められます。
介護事業の基盤強化の課題として、①困難を抱える利用者・家族への対応を強めます。人権感覚を高め、利用者・家族の人権を守る実践を通して事業経営も守ることができる視点が重要です。②経営改善と「2つの柱」を一体的に追求します。③報酬改定に対応した法的整備を抜かりなくすすめます。④制度のキーパーソンであるケアマネジャー、居宅介護支援事業所の位置づけを高め、その役割を重視します。⑤各自治体の第7期介護事業計画を踏まえ、定期巡回・随時対応型訪問介護看護、看護小規模多機能型居宅介護の受託など、法人の条件に応じて新たな事業展開を積極的に検討します。⑥職員確保のとりくみをいっそう強化します。職員体制の厳しさが増しており、日常の介護実践、経営改善、事業展開などあらゆる部分に影響をおよぼしています。「2つの柱」の実践で、民医連の介護のすばらしさを可視化し、民医連の内外、また介護職をめざす人たちに広げ、働き続けられる職場づくりと離職の防止、後継者の養成にとりくみましょう。人員確保が困難な中で事業の再編などが必要な場合、県連、法人で十分に議論するとともに、人事政策を確立して対応していきましょう。
事業基盤の強化に向け、これらの課題を事業所任せにせず、法人・法人グループの総力を挙げてとりくむことが必要です。
第5節 「未来に向かって民医連の医師と医師集団は何を大切にするのか」(案)を力に、医師の確保と養成の前進を切り拓こう
(1)「未来に向かって民医連の医師と医師集団は何を大切にするのか」(案)について
医師の確保と養成・研修方針について、1998年「民医連の医師・医師集団は何をめざすのか」が確定されてから、20年が経ちました。12月理事会で、「未来に向かって民医連の医師と医師集団は何を大切にするのか」(案)を確認しました。この文書は、この間の医学・医療そのものとそれをとりまく状況の客観的な変化と主体的な到達点を踏まえて、これからの時代に私たちが何をめざすのかを提起しながら、医師研修必修化、専門医制度など医師養成をめぐる情勢の変化の中で医師の確保と養成をどのようにすすめていくのか、一方で働き方改革や若手医師の意識の変化も受けてどのように医師集団を形成していくのかについて論点を提起しています。
2月に予定されている医師委員長・医局長会議では、この文書に関する論議を軸にしながら、未来に向けた医師集団形成を各事業所・県連、また全日本民医連でどのようにとりくんでいくのかを論議し深めていく予定です。
医師集団づくりの課題は、全職員の課題、共同組織の課題でもあることを受け止めて、この文書をすべての県連、法人、事業所で討議し、深め、実践に結び付けましょう。
(2)医師の働き方改革の動向を注視し整備をすすめよう
「医師の労働時間短縮に向けた緊急的な取組」の整備をすすめるよう、2018年12月、再度、厚生労働省から発信がされています。医師がやりがいと生きがいをもって働き続けられるように、「緊急的な取組」については、法人、事業所で早急にその対応を行うとともに、この春に結論が出されようとしている宿日直や研さんの定義を受けて、さらに抜本的な医師の労働条件と環境の整備へと対応をすすめましょう。全日本民医連として情報の把握と各県連への発信を強めます。医師集団つくりの議論と合わせ、当事者として医師がしっかりと論議することが必要です。
政府は、2020年から看護師の特定行為研修のパッケージ化と研修時間短縮化をはかり、タスクシフトを加速させる方針であることが報道されています。看護本来のあり方を問うと同時に、絶対的な医師不足のもとでの安易な働き方改革の方策であることをおさえて、医師増やせの声を大きく世論にしていきましょう。
(3)受け入れ200―奨学生500の突破を2019新歓で
医学対決起集会やゼミナールでの教訓から学び、あらためて、2019年4月末で国内大学で500人の奨学生づくりの達成を呼びかけます。鍵となる新歓対策は今からが勝負です。高校生対策でのつながりにすべてあたりきるなど、事務幹部を先頭に、医師集団にも呼びかけて、目標達成に見合った活動量を生み出し、やりきりましょう。第44回総会まで、500人から、さらに質・量ともに前進させるための体制と組織づくりも同時並行ですすめましょう。
(4)初期研修・新専門医制度への対応
2020年は初期研修制度の大幅な見直しが行われます。スーパーローテートの復活、一般外来研修の必修化など我われの強みを生かせる見直しも含まれており、この春提出のプログラムを、改定内容に対応したものへとバージョンアップする作業にとりかかりましょう。さらに、これからの時代に私たちが何をするのか、「未来に向かって民医連の医師と医師集団は何を大切にするのか」(案)の議論を深める中で、「2つの柱」の実践を初期研修にも落とし込むことが必要です。多職種協働ですすめるチーム医療や、アウトリーチ、共同組織とすすめるまちづくりへの参画、ヘルスプロモーション活動など、実践に見合ったプログラムづくりと民医連らしい初期研修へと進化がはかれるよう議論を始めることが重要です。また、今後、「民医連の医師研修方針案」を提起し、全国研修委員長会議での議論を行う予定です。また、新専門医制度については、今後プログラム認定が具体化されるサブスペシャリティー領域の専門医についても、県連・法人の医療構想や医師政策の議論と合わせて、その養成の方向性や具体的な課題について検討が求められています。
第6節 『学習ブックレット 民医連の綱領と歴史』を活用した学習運動
民医連綱領は、来年の第44回総会の時点で綱領改定10年を迎えます。この綱領は、1961年に決定した綱領の半世紀の実践による民医連運動の発展を踏まえ、激動する新しい時代にふさわしい団結の基軸となるよう、数年にわたる全国的な論議を経て改定されました。その主な論点は、民医連運動が憲法の理念に立脚すること、あらためて困難を抱える圧倒的多数の人びとの立場に立つこと、すべての活動のパートナーとして共同組織を位置づけること、保健・医療・福祉の複合体としてより多くの人びととの共同を実現することなどでした。
このほど、『学習ブックレット 民医連の綱領と歴史』を作成しました。改定以来の10年近くの豊かな実践とその今日的到達点にもとづいて民医連綱領を解説しています。また綱領学習を深めるために、次世代に語り継ぐべき歴史の教訓と伝統、そしてこれからの時代に立ち向かう民医連運動の新たな発展の展望について記述しています。
私たちの日々の仕事のよりどころであり、力をあわせて活動する旗印としての綱領を大いに学びあい、あらためて、民医連はなんのために誰のために存在するのか、そして医療・介護、経営、社保活動などをどのような考えでどうすすめていくのかを、現場の実践と結びつけて深めることが大事です。それはまた、一人ひとりの職員が民医連で働くことの意味ややりがいについて考え語りあい、ともに民医連運動の新たな発展を担っていく場でもあります。いのち、憲法、民医連綱領の視点で若い力とベテランの経験知が結びついてこそ、民医連の新たな発展期は、切り拓くことができます。第44回総会までの1年間、すべての職員がブックレットを読み、学びましょう。
第7節 全国的課題
県連機能の強化、民医連の組織強化を1つのテーマとして、第1回県連会長研修会(6月1~2日)、43期県連事務局長研修(5月19~20日)を行います。
第14回全日本民医連学術・運動交流集会を10月、長野で開催します。演題募集が始まっています。全国から実践を持ち寄り、成功させましょう。次回は、2021年に、香川で開催します。第15回共同組織活動交流集会は、山梨で開催します。共同組織連絡会に全県連から参加し準備をすすめていきましょう。10月の全国青年ジャンボリーin岐阜へ向けて、青年職員の成長を日常活動の中で強めていきましょう。
おわりに
2019年は、無産者診療所建設のきっかけとなった山本宣治代議士の殺害から90年、また生誕から130年にあたります。娘の治子さんは、「戦死、戦災死300万人にさきがけて、邪魔者の山宣の抹殺ありき」と詠みました。そして1946年、悲惨な戦争と膨大な人びとの犠牲の上に、国民主権、絶対的な平和主義、基本的人権を定めた日本国憲法に山本宣治の思いは結実しました。
私たち民医連が、無差別・平等の医療と福祉をめざしている今の時代はこの憲法により山本宣治の時代と決定的に違い、73年間、一度も戦争といういのちをもっとも粗末にする愚かな行為を行わせることなく過ぎています。
2020年2月に行う第44回総会(熊本)へ向かう1年間、共同組織とともに、3つのスローガンに団結し、総会方針と評議員会方針を実践し、民医連の発展期を創意、 発揮してつくり上げていきましょう。憲法を守り抜くことを43期も引き続き最大の課題として奮闘しましょう。
以 上