けんこう教室 その疲れ目、もしかしてドライアイ?
『元気』を読んでいるあなた、そろそろ目が疲れてきたのでは? 目がショボショボして乾いた感じもする。「そうだ、目薬を差そう…キター!(織田裕二風)」。ちょっと待ったー! それは単なる疲れ目じゃなく、ドライアイかもしれませんよ。
ドライアイとは
2016年にドライアイ研究会が発表した定義は「ドライアイは、さまざまな要因により涙液層の安定性が低下する疾患であり、眼不快感や視機能異常を生じ、眼表面の障害を伴うことがある」とあります。分かりやすく言うと、ドライアイは目が乾くだけでなく、「涙の異常によって色々な困った症状が出る病気」ということです。
最近行われた調査では、40歳以上の成人の17・4%がドライアイであることが分かりました。さらに60歳以上では73・5%だったというデータもあります。また、オフィスワーカー(事務員や会社員)の60%以上が、ドライアイかその疑いがあることも明らかになっています。
原因
加齢や性別(女性は男性の約2倍)、パソコンなどの長時間使用、乾燥した環境、コンタクトレンズの装用など、ドライアイにはさまざまな原因があります(資料1)。また、すでに発症しているドライアイを悪化させるはずみになることもあります。
びっくりするでしょうが、目薬にも気を付けないといけません。目薬の中には涙の安定性を低下させ、角膜(黒目)に障害を与えるおそれのある成分が含まれていることがあります。また、花粉症の方が使っていることも多いカップ式洗眼薬は、自分の涙を洗い流すことで涙液層を乱し、まぶたに付着している異物(化粧品や花粉など)を目の中に入れることにもなります。水道水による洗眼でも同じですので、気をつけましょう。
涙の役割
涙には(1)目の乾燥を防ぐ、(2)ゴミや目の垢を洗い流す、(3)細菌などの侵入や感染を防ぐ、(4)角膜に酸素や栄養を届ける、(5)レンズとしての役目がある角膜表面を滑らかに保つ、など大事な役割があります。まぶたによるまばたきも重要で、涙の分泌を促す刺激になり、目の表面に涙を均等に行き渡らせる役割があります。
涙は外側から「油層」「液層(水+分泌型ムチン)」「膜型ムチン」の3層で形成され、厚さ0・007ミリの薄い膜で目を覆っています(資料2)。油層は水分の蒸発を防ぐ働きがあります。液層の主成分は水分ですが、ムチンという粘液成分を含みます。ムチンは山芋やオクラ、納豆のネバネバ成分にも含まれています。膜型ムチンは角膜や結膜(まぶたの裏側と白目)の細胞表面にあって、涙の乗りを良くする働きがあります。
それぞれの成分がバランスを保つことで、涙が安定して目を守ってくれています。ところが、これらの成分に異常が起こると、正常な3層構造が崩れて涙の安定性が低下します。その結果、目が乾きやすくなったり目の表面に傷が付くことで、ドライアイの症状が出てきます。
症状
それでは、ドライアイにはどんな症状があるのでしょうか。セルフチェックリスト(資料3)を用意しました。さあ、やってみましょう!
どうでしたか? 自覚症状が5つ以上あった方や、10秒間まばたきを我慢できなかった方はドライアイの可能性があります。ぜひ、この記事を最後までしっかり読んでください。
眼科での診察
眼科ではまず自覚症状について問診します。この時、患者さんの顔を見ながら、どのくらいまばたきをしているかも観察しています。その後、細隙灯顕微鏡という器械に顔を乗せて、まぶたや結膜、角膜の状態を診察します。
検査では、フルオレセインという黄色い染色液をまぶたの縁につけます。まばたきをすると染色液は涙で広がり、青い光を当てて観察すると涙が緑色に光ります。この時、下まぶたの縁に溜まる涙の液面を見ることで涙液量が予想できます。結膜や角膜に傷があると、その部分が染まって見えます。
さらに、まばたきを1回してそのまま目を開けていてもらいます。角膜全体を潤している涙液層が時間とともに乾いてはじけていくのが見えます(資料4)。この目を開けてから涙が乾き始めるまでの時間を「涙液層破壊時間」と呼び、これが5秒以下だと異常です。肌がシャワーの水をよくはじくと「あら若いっていいわねー」とうらやましがられますが、目の場合は長くしっとり濡れているのが良い状態です。涙液層破壊時間が5秒以下で何らかの自覚症状があると、ドライアイ確定となります。
この他に「シルマーテスト」といって、5ミリ幅の特殊な紙を両まぶたの縁に引っ掛けて、5分間でどのくらい濡れるかを調べる検査を実施する場合もあります。
治療
目薬による治療が中心です。人工涙液、ヒアルロン酸ナトリウム製剤、ジクアホソルナトリウム製剤、レバミピド製剤などの目薬があり(資料5)、その人のドライアイのタイプや重症度に合わせて選びます。
目薬だけで効果が足りないときは、目頭にある涙点(涙の排出口)に「涙点プラグ」という栓をして、目に溜まる涙の量を確保する手術もあります。その他、保険適用外ではありますが、目の周りの湿度を保つためのドライアイ用メガネ、ドライアイ用に開発されたサプリメントなどもあります。
「3コン」に注意
ドライアイを予防したり、悪化させないためには、その原因となるものを減らすことが大事です。特に「3コン」には注意してください。3コンとは「エアコン」 「パソコン」「コンタクトレンズ」です。
エアコンの風には直接当たらないようにしましょう。エアコンには除湿効果があり室内が乾燥しますので、加湿に心がけてください。最近の加湿器は種類も豊富です。ペットボトルを利用するお手軽なものもあるので、デスク周りに置いてみるのもいいでしょう。
パソコンに集中しすぎると、まばたきが少なくなり目が乾燥しやすくなります。これはスマートフォンやテレビゲームにも当てはまります。目を大きく見開かないように、ディスプレイは目の高さより下に置きましょう。長時間使用するときは休憩を取ってください。
休憩の時は単にいすに座って目を休めるのではなく、立ち上がって軽く身体を動かすことをお勧めします。また、腹式呼吸を3分間してみましょう。身体がリラックスして副交感神経が活性化されることで、ドライアイにも効果があります。
コンタクトレンズは涙液層をレンズの表と裏で2つに分けてしまい、涙液層がより不安定な状態になります。ドライアイの方は装用時間をなるべく短くしましょう。正しいケアを行い、眼科で定期検査を受けることも非常に大切です。
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私も、パソコンとにらめっこで原稿を書いたので、とても目を酷使したようです。そろそろ休憩を取りたいと思います。読者の皆さんもしばらく目を休めてはいかがでしょうか。ドライアイが気になってきたあなたには、眼科の受診をお勧めします。
いつでも元気 2017.6 No.308