民医連事業所のある風景 兵庫/高松診療所 気づきをもった医療を実践できる診療所に
無医村地域に66年前に開設
高松診療所は、66年前の1951年11月に、兵庫県宝塚市の武庫川沿いに建設した歴史ある診療所です。かつてこの地域は無医村地域で、病気になっても受診することができない地域でした。そんな苦しい環境のなか、医療機関を自分たちの力で建設するため、住民運動のなかから「高松健康を守る会」が300世帯で結成され、たくさんの干渉と妨害をはねのけて建設資金を集め、開設にこぎつけました。32年後に1回目の建替えを行い、さらに33年の年月を経て、今回、新たに介護事業所との複合施設「ひだまり会館」が完成しました。
こども無料塾も開始
2016年11月に、1階にデイサービス、2階に高松診療所、3階に訪問看護・ヘルパーステーション・ケアサポート、4階に多目的スペースの構成で、新施設が誕生しました。医療・介護のことはもちろん、経済面や家庭環境のことなど、相談できる体制もスペースも整えました。
施設のある地域は、宝塚市のなかでも貧困層の比率が高く、高齢化も顕著です。在宅医療・介護での支援だけでなく、見守りや地域の人たちがつどう場の提供など、地域に貢献できるしくみを早期に構築していかなければなりません。こどもへの支援も、各地でこども食堂を設置するなど進んできています。
現在、とりくみを始めたのが、こども無料塾です。不登校で学校の勉強をほとんどしていない、学校で勉強が遅れがちで孤立しているなど、教育環境に恵まれていないこどもたちが、気兼ねなくきてもらえる場所づくりを進めています。
市内の数少ない乳がん検診施設
宝塚市内には、乳がん検診を行う医療機関が現在、4カ所しかなく、高松診療所はそのひとつとして実施しています。毎年、約500件の方が受診し、約2%の方から、がんが見つかっています。フォローの必要な受診者も、時系列に名簿を作成し、フォロー時期には、電話かけを行い、漏れなく受診してもらいます。マンモグラフィも新築移転後、新機種を購入し、乳がんの早期発見のとりくみを、いっそう広げていく計画をしています。
なお、宝塚市の乳がん検診は、2017年4月から、問診とマンモグラフィ検査だけとなり、視触診は必須ではなくなりました。
在宅医療と無料低額診療事業を推進
地域の高齢化(独居・老老介護)が進み、在宅医療対象者が年々増加してきています。地域訪問を実施することで高齢者の個別実態や要求をつかみ、法人内の介護事業所と連携をとって、介護サービスの利用や訪問診療へとつなげることを積極的に実施しています。
また、所得が少ないとの理由で、訪問診療を受けたくても受けられないケースも出てきていますが、当診療所が取得している無料低額診療事業での受診を勧め、申請、適用となり、安心して訪問診療を受けている患者も増えています。
一人ひとりのいのちの大切さ・重みを、各職員がしっかりと心に刻み、常に気づきをもった医療を実践できる診療所を追い求めていきます。
(高松診療所 事務長 藤崎 正則)