Dr.小池の世直し奮戦記 年金運用で7兆円の損失!? 参院選前の情報隠しは許せない
年金の積立金が株で運用され、多額の損失が出ています。国民の間には「年金資金が失くなるのではないか」という大きな不安が広がっています。
株式運用しないアメリカ
公的年金の積立金はおよそ一四六兆円、国民一人当たりに換算すると一一四万円、四人家族で四五六万円です。この大半が株式など市場で運用されています。
アメリカでは、一般国民を対象とする連邦政府の年金基金を、すべて非市場性の国債で運用していますから、損が出ることはありません。国会で私は「なぜアメリカは株で運用しないのか」と質問しました。塩崎恭久厚生労働大臣は「時の政権の政治介入により直接株式市場の効率性を損ねるのではないかとの懸念、株式市場へのインパクトへの懸念があるから」と答えました。
逆に言えば、日本がやっていることは、政府による株式市場への介入の余地を認めるということになってしまいます。
なによりも、国民の貴重な財産である年金積立金を、株式市場でリスクにさらしていいのかが問われます。
運用を拡大した安倍政権
安倍晋三首相は、二年前のダボス会議などで「世界最大の年金基金の“フォワードルッキング(前向き)な改革”をすすめていく」と宣言。その後に株式運用の比率を大幅に引き上げました。
安倍首相はこの時、「年金のため」とは言わず、「成長戦略のためだ」と述べました。年金加入者の利益のためではなく、株価を支え、アベノミクスを推進するために株式市場に投入すると宣言したのです。
当初は株価の上昇で利益が生まれました。しかし昨年後半からの株安で、今年一~三月期には少なくとも四兆円程度の損失が見込まれています。これ以外にも、私の試算では外国債券や株式についても為替の差損が発生しているので、二兆円を超えるマイナスになります。
その結果、年金積立金全体では、最近の三カ月で六・七兆円程度の損失となり、昨年一二月までの〇・五兆円の損失を加えると、二〇一五年度全体では七兆円を超えるマイナスになっている可能性があります。
老後資産を食いつぶす
ところが政府は、二〇一五年度の年金積立金の運用成績を、七月二九日に発表すると言い出しました。例年は遅くとも七月上旬には発表しています。
「なぜ、こんなに遅いのか」と政府に質問すると、「年金資金運用基金(GPIF)が発足して一〇周年だから」と、理由にもならない答え。私は塩崎大臣に「参議院選挙が終わってから出すという話じゃないですか」と追及しました。
年金の積立金は、かつては戦費調達のために、戦後は大型公共事業のために、さんざん食い荒らされてきました。そして今、安倍政権は株式市場に大量に投入して株価を買い支えるために使っているのではないか、という不安・不信が広がっています。
見せかけの「アベノミクス」のために、国民の老後の資産を食いつぶすようなことは、絶対に許されません。
情報の隠ぺいを許さず、国民の審判を。引き続き国会で追及します。
いつでも元気 2016.6 No.296
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